27: 恋人は名無しさん 2013/09/25(水) 22:20:17.93 ID:jmEqzUjk0
彼がちょっとずれていた。

「久しぶりに会いたい。タイミング逃してあげられなかった誕生日プレゼント用意して待ってる。」
と言われ、新幹線の距離の彼のところへ。
駅で彼が渡してくれたのは、双頭の鷲の紋章の入った、黒い紙袋。
甘いもの好きな自分のためにわざわざ……と感激して中を開けたら、
中身はスーパーオリジナルブランド(トップバリュとかセブンアンドワイのような)の菓子類の詰め合わせ。
確かに彼の仕事はそのスーパーに些か関係があるが、ホワイトデーもこれだったな…と微妙な気持ちに。
(ちなみに、私が住んでいるところにもそのスーパーはある。)

それでも久々に会えたのはすごく嬉しかったし、彼は元々イベントごとに関心が薄くて、
いわゆる小洒落た店などには興味が無い人だったから、これも彼らしくて可愛いとすら思えた。
でも、会話の流れで『これ(袋)どうしたの? チョコでもいただいたの?』と聞いたら、
お世話になった総務の子が異動するので、感謝の気持ちにプレゼントしたんだ…と。
「ザッハなんとかいう黒いケーキ」
『ザッハトルテ! 買ったんだ。あのチョコ、甘くておいしいんだよね』
「あ、でも俺は甘いもの苦手だから、ほとんどその子が食べたんだけどさ。
おいしいおいしいって口の周りにチョコ付けて子供みたいでおかしくてさー。
妹みたいでなんか可愛いんだ」(ちなみに私は年上)
テイクアウトで買ったケーキを一緒に食べたんだ、で、紙袋は置いて行ったんだ…と思ったら、すごく苦しくなった。
彼が平気な顔して話しているのを横で聞くのが辛かったが、気持ちを盛り上げようと、
「○○にカフェもあるんだよ。せっかくだから食べに行きたいな」と明るい感じで振ってみたら、
「えー、うちから遠いじゃん。俺、甘いの駄目だし。それよりうちの近所のスーパーで焼き鳥とビールとゴム買って帰ろう♪」
と、さわやかな満面の笑みで言われた。

たぶん、彼は私が傷ついたことすら気が付いていなかったと思う。
素直に泣いたり怒ったりするのが下手で、ひきつった笑顔で我慢して、でもどうしても無理で、
彼がトイレに行っている間に改札くぐって新幹線で帰ってきた。
理不尽だとは思うけど、彼が「誰にでも」に雑菓子をプレゼントする人だったら、こんなに悲しくなかったと思う。