168:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 17:08:24.62ID:C73jG/nL0
なんやかんやで、
板尾の本はペースを保ち続けて売れていった。
流石である。
俺はといえば
鳴かず飛ばずかと思えば、
案外ぼちぼち売れていった。
昼過ぎ…くらいだったか。

そに子が来た。
本当にきてくれるなんて…
実に半年ぶりの再会であったが、
すぐに気付いた。
ドキッとした。
でも普段の動悸とは違うものだってすぐ分かった。





171:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 17:13:56.43ID:C73jG/nL0
彼女自身、けっこうなオタで
コミケには来ようか迷っていたらしい。
そして俺もいるし、
結局来る決心をしたんだとか。

そに子「新刊一部、ください」
彼女は笑いながら言った。
俺も吹き出して、
「いやいや、お金はいりません」
なんて言ってそに子に本を渡した。
そに子「うわ、すいません…ありがとうございます…」
急に真面目になるそに子。

172:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 17:19:31.82ID:C73jG/nL0
板尾「これはこれは、可愛らしいお客さんだね。知り合いなの?」
「いや、ほら、いつも言ってる…」
板尾はすぐに察してニヤッとした。
そに子は赤いマフラーを巻いていたが、
そのせいか顔も赤くなっているように見えた。

板尾「あなたがそに子さんか…!
話は聞いてるよ。
これ良かったら俺の本、あげるよ」
そに子「あ、とっても上手い…!!」
俺は少し嫉妬したw

175:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 17:25:03.48ID:C73jG/nL0
板尾「そに子さんは、この後ヒマなの?」
そに子「ええ、まあ…w適
当に見て回って、帰ろうかなって。
今まで勉強詰めだったので、
今日くらいは少しだけ遊んじゃいますw」

そういうと板尾がコッチをぎろっと見た。
言いたいことは分かっていた。

176:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 17:29:41.45ID:C73jG/nL0
この日、俺たちはコミケが終わったら
俺と、板尾と、友人の三人で
メシを食おうってことになってた。

それで俺と板尾は地元が一緒。
時分は年末も年末。
なのでそのまま二人で帰郷しよう、
という流れになっていた。

そして、板尾はそ
のコミケ終わりの三人のメシに
そに子も呼べ、と言いたかったのだろう。

178:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 17:35:32.28ID:C73jG/nL0
そに子は元々私大志望だったし、
センター試験があまり関係ない。
なのでまだそれなりに余裕があったんだろう。

「あ、あのさ…そに子ちゃん」
そに子「…はい?」
顔が見れない。色々と辛かった。

「コミケ終わったらさ、
俺たちメシ食いに行くんだけど…
良かったらさ、そに子ちゃんも来ない?
…ほ、ほら勉強とかも教えられるじゃん」
最後の一言は余計だった。
でもこうやって言い訳したのを覚えてる。

179:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 17:43:02.56ID:C73jG/nL0
そに子「いいんですか…是非ご一緒したいです!」
嘘みたいに笑ってくれた。
ビックリして心臓止まるかと思った。

そに子「それに…
一応勉強道具とかもあるんですよね
なんか必要ないけど
普段から持ち歩いちゃう…
この気持ちわかりません?w」
(マジか…そこは冗談だったんだけど…さすが受験生…)
板尾「決まりじゃん。
じゃあ閉会までまだ時間あるし
見たいとこまわっておいでよ」
「そうだね…寒いし、
風邪引かないように暖かくしてね」

そに子「閉会時間頃にまたここに来ますね!」

180:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 17:47:48.00ID:C73jG/nL0
そういえば板尾の友人は
何をしていたかと言うと
彼は新刊を落として
ペーパー頒布だったので、
終始俺らの売り子を手伝ってくれていた。

板尾「すっげえいい子じゃん、顔赤くしちゃって」
「そうだね…」
板尾「お前にはもったいないな。で、トイレ行かないの?」
「いや、全然快調。吐き気とかしないよ」
板尾「成長したな」

183:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 17:52:09.39ID:C73jG/nL0
午後も2時くらいになった頃だったろうか。
板尾の本が完売した。
あいさつ回りにも行ったから、
実質80部くらいだったと思う。

板尾は泣いていた。
ぐしゃぐしゃになってた。
俺も泣きそうになったが耐えた。

俺の本も実質40部弱、
そろそろ完売しそうだったからだ。

184:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 17:56:32.88ID:C73jG/nL0
板尾は昔から熱い奴だった。
高校で出会って、
バレー部で3年間共にして。
自分の感情には素直な奴だった。

間違いだと思ったら、
例え相手が先輩でも食い下がるし。
試合に負けたりしたら大泣きして、
勝ったらお祭り騒ぎをする。
そんなヤツだった。

完売したら板尾は泣くだろうなあと予想していたけど
やはり俺もつられて泣きそうになる。
でも頑張って耐えた。

189:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 18:07:41.79ID:C73jG/nL0
その直後だったかな…
けっこう時間経ったのかな…
よく覚えていないけど
俺の本もその時を迎えた。

俺の最後の一冊を買ってくれたのは
俺より一回り小さいくらいの女の子だった。
名刺を渡してくれたのを覚えてる。

「あ、ありがとうございます…!最後の一冊です…!」
女の子「本当に?やった、ラッキー。これからも頑張ってくださいね」
か、完売した…!?


191:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 18:13:34.17ID:C73jG/nL0
「か、完売しました…」
パチパチパチ…!
周りのスペースの人たちが
拍手をしてくれた。
隣の方「若いのによくやったねえ。おめでとう」
「あ、ありがとうございます…うえ…」
「い、板尾ぉ…」
板尾「おう、よくやったな…俺たち…うええ…」
二人で大泣きした。
よく覚えてないけど、
けっこうな時間泣いてた気がする。
でも一瞬だった気もする。
もうよく覚えてないなあ…

その間板尾の友人が
笑いながらスペース片付けたり、
「スケブする?」とか聞いてきた気がする。

192:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 18:18:57.68ID:C73jG/nL0
俺はこの時、
コミケ前に絵が上手くいかなくて
板尾に少しイライラしていたのを悔いた。
やっぱり板尾はすごいし、憧れ。
でも俺は俺なりの絵を描けばいいんだと、思えた。
そうなるともう嬉しくて仕方なかった。

それ以上に、こんなにも一緒に
感動を共有できる板尾のことを
一瞬でも「アイツはずるい」とか
「邪魔だ」と感じてしまった
自分が情けなくて仕方なかった。

もう自分でもなんで泣いてんだかよく分からなかった。

193:名も無き被検体774号+2011/12/12(月) 18:22:52.72 ID:blsU0rt30
こういうスレが見たかった
最後まで見てます

194:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 18:26:39.75ID:C73jG/nL0
そのあとは、スペースを片付けて
俺達も少しフラフラした。

スペースでは板尾の友人が
スケブを描いていた。
友人「俺はここにいるから、二人は色々見てきなよ」
いいやつすぎる。
コミケも佳境に差し掛かっていたが、
作家も、買い手も目を輝かせていた。
この時見た景色は今でも忘れらない。

ビッグサイトの、あのバカ広い会場の中で
板尾と二人で歩いた。

195:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 18:28:05.44ID:C73jG/nL0
>>193 ありがとう。
まだ全体の3分の1終わったかどうかくらいだけど
最後まで見てくれると嬉しい。

196:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 18:33:10.96ID:C73jG/nL0
この日に見たもの、感じたものは、
本当に大きかったんだなって
今でも思う。

「以上をもちまして、コミックマーケットを閉会します…」
パチパチパチ…!!
板尾「終わったなあ…」
「いやー気持ちいい」
友人「お疲れさん、二人とも」

197:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 18:39:39.70ID:C73jG/nL0
スペースでマッタリしていると、
そに子がやってきた。
そに子「ごめんなさい…みんな撤収しちゃってて、迷っちゃいました…」
相変わらず顔を真っ赤にしていた。
「いや…全然大丈夫だよ」
板尾「面白い子だなwそれじゃみんな揃ったし、
ここにいるのもアレだから
とりあえずビッグサイトから出るか?」
「腹減ったーメシいこうメシいこう。」

そに子を交えて晩飯タイム。
俺は意気揚々としつつ、
いつも通りでいられるか不安だった。

198:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 18:44:16.32ID:C73jG/nL0
俺は、この晩飯のレストランに着くまでの間に
一つの事を確信してしまう。

ビッグサイトを出る。
りんかい線に乗る。駅に着く。

俺はその間ずっとそに子を見ていたし、
そに子を気にかけていた。
コミケの帰りって、
ビッグサイトから国際展示場駅まで、
怒涛の人の流れなんだ。
俺はその中で絶対はぐれないように
そに子だけを誘導していた。

自分でも確信してしまった。

199:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 18:51:00.95ID:C73jG/nL0
「ああ、俺この子のこと好きなんだな…」
間違いなかった。
動悸がすると言っても
今までの異性.不信からくるものではない。
異性.不信だった俺が、恋である。
俺はそう確信して、
ビッグサイトから
メシの場所に到着するまでの間、
すごく嬉しくなってしまった。

下手したらもう
2度と無理かもしれないと思ってた恋に、
今自分は落ちたんだなあと思うと、
ワクワクして、急に嬉しくなった。

それくらい、
今までの異性.不信にずっと悩んでいた。
そに子にまた直接会って、
色々とはじけた気がした。

200:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 18:56:39.13ID:C73jG/nL0
着いた先はサイゼリヤ…w
まあ大して時間もなかったし、
板尾も疲れてたから
安く、たくさん食べたかったんだろう。

板尾「そに子さんも、絵を描くの?」
そに子「ええ、少し…でもまだまだ下手っぴですよw」
俺「頑張って練習してるもんね。絶対すぐ上手くなる」
板尾「ふーん…なるほど…」

最初のうちはわりと板尾も
穏やかな感じで会話を始めた。

201:名も無き被検体774号+2011/12/12(月) 18:58:51.53 ID:jc7CDBvS0
なんか雲行きが怪しくなってきたな・・・。

202:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:02:08.51ID:C73jG/nL0
板尾「ならさ、そに子ちゃんも
大学受験終わったら
華丸と一緒に一度ウチの美大おいでよ。
色々楽しいよ」
そに子「ありがとうございます…!華丸さん、行こうね…!」

多分この時俺は顔真っ赤だったんじゃなかろうか。
だって、突然好きな子が隣にいて、
自分の方見て話しかけてるって状況になってるんだ。
メシ食べるのもなんか
無理やり行儀よく食べようとしたりしてた。

203:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:08:50.25ID:C73jG/nL0
板尾「そに子ちゃーん、華丸のどこがいいのさー?」
は、始まった。
板尾の悪ふざけタイムである。
昔からこういうお調子者気質な所が彼にはあるのだ。

テンパッてる俺を見て
面白くなったんだろうなw
そに子「い、いえ…別にそんなわたし…」
板尾「そに子ちゃん実際学校とかでモテるんじゃないの?」
そに子「いえわたし女子高だし男子いないんで…w」

板尾は俺に気を使って
場を盛り上げようとしているようにも見えた。
俺も頑張ってそに子に色々話しかけた。

そに子は終始笑ってくれていた。
とても楽しい時間だった。

でも俺たちの一日はまだまだ終わりではなかった。

204:名も無き被検体774号+2011/12/12(月) 19:12:06.91 ID:0sUgdEzMO
てか板尾は現役合格だったんだっけ
東京ってことは芸大多摩武蔵造形のどこかだろ?
科にもよるがすげぇな

205:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:12:58.49ID:C73jG/nL0
俺は、このサイゼリヤで話したことは、
今でもハッキリ覚えてる。

板尾とそに子と
美大に遊びにいく約束をしたことも。
ただ、なんてことないものだと思っていた。

当然いつか実行できる約束だと思っていたし、
何より浮かれていた。
この時交わしたこの何気ない約束が、
のちのち俺の人生をまた微妙に変えてしまう。

206:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:15:46.20ID:C73jG/nL0
>>204 彼は現役だよ。
どこかってのは言えないけど凄いと思う。

207:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:20:19.03ID:C73jG/nL0
そに子と、板尾の友人と別れて、
俺と板尾は
故郷に向かう電車にのりこんだ。
少しだけ、長旅が始まる。

窓の外は真っ暗。
一日の終わりだ。
板尾はなんだか静かだった。
板尾「ふう…今日一日マジで疲れたな!!
本、完売してよかったわあ」
俺「だよね。本当、
なんつーか最高の一日だったよ。
多分一生忘れない。」

208:名も無き被検体774号+2011/12/12(月) 19:23:18.07 ID:BpWp/WeD0
追い付いた!
>>1の絵見てみてぇ!
見届けてやるぜぇ

209:名も無き被検体774号+2011/12/12(月) 19:24:57.53 ID:yUkk6pvd0
俺も>>1の絵見てみたいw

210:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:26:44.20ID:C73jG/nL0
板尾「思えばさ」
俺「ん…?」
板尾「ここまで来るまで長かった」
板尾は泣いていた。
どうしてそうなったのかよく分からなかった。

板尾「お前が初めて
トラウマの事話してくれた時、
俺どうしようかって思った」
板尾「女性.に関われないって悩むお前見て、
本当にどうにかしてやりたかった」

板尾「俺は絵を薦めた。
言葉とか励ましよりも、
とにかく何か夢中になれること
見つけて欲しかった。」

俺「そうだったね。
本当、絵描き始めて良かった」

211:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:29:19.15ID:C73jG/nL0
>>208>>209 期待しないほうがいい、絶対にw
話が完結したら
簡単な絵をうpしてもいいかとは思うんだけど
うpろだとか、ここに絵をあげる方法が
よく分からないのよね…w

212:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:34:12.90ID:C73jG/nL0
板尾「お前に絵を薦めたことも、
本当は良かったのかどうか
ずっと悩んでたんだ…昔言ったろ?
絵を描き始めてから
華丸は人と距離を置くようになったって」
俺「確かに高校の時よく言ってたね」

板尾「絵を薦めたものの、
それが本当に華丸にとって良く働くのか。
俺は無責任なことをしたんじゃないかって
ずっと悩んでた。」
俺「……」

板尾「でも、それが…」

213:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:41:40.92ID:C73jG/nL0
板尾「お前は絵を大好きになってくれて、今じゃ
こんなにコミケ一緒に出るくらいまで上達した。
まぁまだまだ下手だけど…」
俺「泣きながらそれ言うかねw」

板尾「それでそに子ちゃんだよ。
あの子が現れてくれて…
異性.不信だったお前が
また女の子と普通に楽しく接せられるようになって。」
板尾「本当によかったよ…本当に。
お前あの子大切にしろよ…」

板尾はずっと顔を隠して泣いていた。
俺もだんだんつられて、涙目になった。
ずっと板尾に
「ありがとう、ありがとう」
って言ってた気がする。

214:名も無き被検体774号+2011/12/12(月) 19:43:38.55 ID:0sUgdEzMO
【アップローダ】
◎まじまじ( http://mjmj.be/送信先:up@mjmj.be (画像・動画兼用 追加可)
◎Myあっぷ( http://myup.jp/送信先:up@myup.jp (画像・動画兼用 追加可)
◎ピクト( http://pic.to/送信先:up@pic.to (画像・動画兼用 追加可)
◎ピタ( http://pita.st/送信先:up@pita.st (画像・動画兼用 追加可)
◎あぷろー!( http://upro.tv/送信先:up@pita.st (画像・動画兼用 追加可)

※送信先に画像添付でメール送信したらURLが送られてくる

215:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:45:31.47ID:C73jG/nL0
>>214 ありがとう。
とりあえず話完結するまで考えとくね。

216:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:49:01.86ID:C73jG/nL0
このへんでとりあえず
コミケ編は一段落。

俺は実家に帰った。
実家といえば天国、
大晦日は紅白見ながらコタツにいれば
自動的に料理が出てくるw

俺はしばし実家を堪能することにした。
でも俺は肝心なことを、忘れていたんだ…
そう、あのメールを…

217:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:55:59.72ID:C73jG/nL0
意外なことに、美保はあの
「久しぶり」
というメール以来メールをしてこなかった。

でもその音沙汰の無さっぷりが、
逆に不気味に感じられた。
一体何が目的だったのか…
大晦日の実家のコタツで、
俺は自分のケータイを見ながら悶々としていた。

218:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 19:59:10.75ID:C73jG/nL0
そして年越しの瞬間。
おれはそに子や板尾たちに
あけおめメールを送ろうと必タヒだった。
5,4,3,2…
俺「よっしゃ年越し!ジャンプ!!」
兄「うるせえな」

俺は毎年年越しの瞬間にジャンプをする。

220:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 20:03:58.19ID:C73jG/nL0
「あけましておめでとうございます!!」
ウチは毎年年越しの瞬間は
ジャニーズのライブのテレビと決まっていた。
新年を迎えた。
去年は色々進歩の年だった。
今年はいい年になるだろうか…

これから良い事なんて
何一つ無いとは知らずに、
当時の俺はのんびりそんなことを思っていた。

年を越した瞬間、
携帯にたくさんメールがきた。

222:名も無き被検体774号+2011/12/12(月) 20:08:51.56 ID:3y9vRRh/0
何かいやな予感が。

223:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 20:11:06.81ID:C73jG/nL0
たくさんの新年メール。
メールはそに子に、板尾に、高校のクラスメイトに…

美保もいた。
なんとなく予想はしていたが…

もっと体調が悪くなると思ったが、
実際そうでもなかった。
なんでだろう、今でも分からない。
年明けテンションなのか、なんなのか。
俺はそのメールに返信してしまった。

ただ、スルーしておけばよかったのだ。

225:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 20:16:32.95ID:C73jG/nL0
俺はそに子のおかげで
異性.不信もすっかり良くなっていた。
だから思わず気を許しちゃったんだろう。

送ってくるメールの内容も
ひたすら普通だったし、当時のことも
本当に悪いと思っているようだったから。
ただ、相手は
自分を異性.不信におとしめた根源だってことを、忘れてた。

正月ってヒマでしょ?
割とみんな、社会人も。
だからメールとかすごいしちゃうんだ、無駄に。

美保とのメールで、
けっこうな事を話したと思う。
今行ってる大学、美術部にいること…

227:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 20:22:53.18ID:C73jG/nL0
俺だってこの時は美保のこと
基本普通な子だと思ってた。
だからきっとあの時は何かの間違いで、
彼女もおかしかったんだ…
そう思ってた。
というか、そうであって欲しかったんだと思う。

このメールしてた時は、
美保は普通な子だったんだ、
だからあのトラウマももういいんだ、
っていう証明みたいなものが
欲しかったんだと思う。

う〜ん、わかりづらくてゴメン。
この時の心境は、
自分でもよく分からないんだ。

228:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 20:31:20.54ID:C73jG/nL0
それから、
またすっかり美保からの連絡は止んだ。
俺はほっとしていた。色んな意味で。

その頃だったか。
3月にまた美術部で割と小規模だけど
また展示会があることを聞いた。
さらに、板尾と二人で次の夏のコミケに
サークル参加の申し込みもした。

よし、またお絵描き頑張ろう。
色々動き始めている気がした。
なんていうか希望や展望に満ちてた。

230:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 20:33:58.85ID:C73jG/nL0
キリがいいかな?
ちょいと晩メシ食べるので
30分ほど時間あきます。
すいません、30分後にまた再開します〜

231:名も無き被検体774号+2011/12/12(月) 20:38:31.60 ID:dXnXFJs0O
追いついた!
私も大学生で絵を書くので、
すごく興味深いです。
続き楽しみにしてます!

232:名も無き被検体774号+2011/12/12(月) 20:54:58.18 ID:jQoDNafF0
続きが待ちきれぬい

233:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 21:02:21.18ID:C73jG/nL0
もどった!みんなありがとう。
ではまた続きをマッタリ書いていきます。

234:忍法帖【Lv=19,xxxPT】2011/12/12(月) 21:05:13.76 ID:CQVrVQo30
wktkして待っちょります

236:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 21:12:33.21ID:C73jG/nL0
年が明けて、
俺は生まれ変わったようだった。

色々やりたいことが見えてきて、
ワクワクしてた。
まず、心配だったのはそに子の受験だった。
私立なので2月に受験だと言う。

なので連絡もあまりとれなかったが、
定期的に、本格的に勉強のことを
質問してくる電話がかかってきた。
一生懸命だし、頼ってくれるのは
とても嬉しいことだった。

237:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 21:16:14.55ID:C73jG/nL0
そに子も頑張ってるし、
俺も展示会に向けてまた絵を頑張ろう。
それからはそに子の心配をしつつ
自分もひたすら絵を描く日々だった。

そに子が大学に受かっていれば、
そに子も展示会を見にこれる。

前回は板尾に頼ってばかりだったけど、
今回は自分一人で
描ききって、板尾をビックリさせてやる。

238:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 21:19:29.82ID:C73jG/nL0
2月某日。
俺の大学の入試の日だった。

俺は力になってやろうと思って、
キットカットを買って
スケッチブックを持って大学へ走った。
走ったと言っても電車に乗って行ったのだが。


239:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 21:24:19.51ID:C73jG/nL0
先回りしようと俺は急いだ。
生活リズムのおかしかった俺は、
久々の早起きで
息上がりまくり、
貧血気味でフラフラだった。
そに子に電話した。
俺「はあはあ…今…どこにいる感じ?」
そに子「さっき駅出て…もうすぐ大学に着くよ」
俺「そっか…頑張ってね…」
(よし、このまま正門で待ち伏せだ…)

240:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 21:31:27.32ID:C73jG/nL0
俺は前日までにたくさん絵を描いた。
スケッチブック一冊くらい。
しかし、合格祈願とか、
そういったイラストではなかった。
最初はむしろ渡すつもりも毛頭なくて、
好きに落書きしていた。

でも、この絵を
そに子に渡したらどうかな…と脳裏によぎった。
合格祈願とかそんなんじゃなくて、
試験前とか休憩中に、
俺の絵見たら少しはリラックスできるんじゃないかな
と思ったのである。

なので俺はスケッチブック一冊
好きに落書きしたものを、
当日そに子に渡そうと決心したのである。

241:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 21:37:42.44ID:C73jG/nL0
俺「あ、そに子…」
そに子「うわ!華丸さん…どうしたの?」
俺「これ…あげるよ…頑張ってね」
そう言ってキットカットと
スケッチブックを差出す。
そに子は怪訝そうな顔をして
スケブをまじまじと眺めた。

でもすぐに笑顔になって、
そに子「何これ、バカみたいw」と言って笑った。
俺「いいから、頑張れよ」
俺は少し恥ずかしかった。
そに子「ありがとう、頑張るね…」
そに子はそういって校門をくぐっていった。
緊張が解けたようで嬉しかった。

242:名も無き被検体774号+2011/12/12(月) 21:37:44.13 ID:WJvXFUND0
俺も板尾みたいなボロク/ソに批評してくれる絵描き友達がほしいな…
続きwktk

244:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 21:39:53.91ID:C73jG/nL0
少々気付いてる人もいるかもしれないが、
俺は恋に落ちると
好きになった相手しか見えなくなるフシがある。
そして少々やりすぎてしまうことがある。
この件もそうだった。

でもそに子は俺にひくどころか喜んでくれた。
本当に良かったと思う。

245:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/12(月) 21:43:47.99ID:C73jG/nL0
この日はなんだか本当に楽しかった。
受験っていう緊張感もあったからか、
なんだか非日常の世界にいる気がした。

たくさん絵を描いたのも、
駅から大学まで走ったのも、
そに子を待ちぶせたのも
全てが楽しかった。
バカなことしてるなあと思った。

でも、そんな自分が
なんだかかっこよく思えて、
そに子と自分だけの世界があるような気がした。
本当に恋してたんだと思う。

引用元:http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1323617346/
      






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