360:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 01:16:14.07ID:i8RmR7sP0
板尾が、GWに地元の山道で
バイクで自損事故を起こした。

帰らぬ人になってしまった。
俺は信じられなかった。
高校の連中からメールやら電話が来る中で、
俺は段々と事態を飲み込んでいった。

一体、何が起きているというのか?
まったく分からなくなった。





361:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 01:18:20.17 ID:wTv1K6zv0
おいまじかよ・・・

363:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 01:20:29.44ID:i8RmR7sP0
故郷の板尾の家に行って、式に出て、
なんとなく何が起きているか分かった。
嘘だと思った。嘘なら良かったな、本当に。

俺が信じられないくらい泣きわめくので、
多分周りにいる人ドン引きだっただろう。
どうしていいか分からなくなった。
俺はそれから一週間近く家を出なかった。
何も食えなくなって、
ひげだらけになっていた。

365:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 01:23:29.02ID:i8RmR7sP0
思えば、色々な事が脳裏をよぎった。

一緒に合同誌を出すって約束していたこと。

そに子と一緒に板尾の美大を巡る予定だったこと。

そして、板尾にいつか追いつきたかった……

すまんダメだ今
俺もボロボロ泣いてる。
少し遅くなるかも、すおまん

366:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 01:28:45.40 ID:1EaWOpnn0
無理すんな。待ってっから

367:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 01:29:10.69 ID:Bx0JYEVlO
ゆっくりで良いぞ

368:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 01:29:39.98 ID:H08lBggx0
板尾ーーー!!
俺も悲しい・・・

370:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 01:32:14.14ID:i8RmR7sP0
思えば、俺は板尾がいなけれ
ば本当にダメだった
彼には感謝してもしきれない。
いや、もう感謝とか
そんなんじゃなかったんだと思う。

アイツがいなかったら俺は、
どうなっていたんだろう。
俺は板尾を見返すと同時に
色々恩返しもしたかった。
いつか、いつか…と。

そんな存在が
急に目の前から消えてしまった。
ポッと。突然、なんの前触れもなく。

372:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 01:38:34.67ID:i8RmR7sP0
それからしばらくは
夢を見ているかのようだった。
この歳にして親友を失うとは、
思ってもみなかった。

スカイプを開いて、
つい板尾にチャットを送りそうになってしまう。
そうすると、途方もなく虚しくなる。
これは、今でもたまにやってしまうんだが…

373:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 01:41:47.03 ID:9zmDXbo5O
辛すぎる

374:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 01:47:29.58ID:i8RmR7sP0
ふう、みんなありがとう。
一旦シャワー浴びるから
30分くらい時間空けるね。
眠い人は寝てください。
付き合ってくれる方はよかったらお願いします。

見てくれてる人はどれくらいいるんだろ?
これでやっと全体の半分…
もしかしたらまだ5分の2くらいかもしれない。
まだ続くけど、よろしくです。

375:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 01:48:12.57 ID:W8iFGv99I
キツいな。先読みたいけどねよっ
>>1辛いだろーけど頑張れ!

376:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 01:49:49.69 ID:1EaWOpnn0
ほい、いっといで。
もうしばらくは起きてるし

377:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 01:54:09.56 ID:+4uQiR3DO
追いつきました
が、涙がとまらん…

380:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 02:05:58.36 ID:yWsPPMD60
みてるよー!
自分も音楽だけどがんばってる。
続けるって難しいし大事だよな

381:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 02:11:37.54 ID:4thXgNgDO
ゆっくりでも>>1が書き続ける限り見に来るよ、無理はすんな

389:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 02:34:36.70ID:i8RmR7sP0
戻りました。
うわあ…みんなありがとう。こんな時間なのに…
なんとか完結まで持っていけるように頑張ります。
それじゃ、ぼちぼち再開しますね。

391:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 02:40:16.25ID:i8RmR7sP0
俺はこの時、本当に人生で一番
落ち込んだ時だったかもしれない。
そに子いわく、
俺はほとんど笑わなくなったらしい。

辛くて辛くて、
もちろんそに子に弱音も吐いた。
そに子は全部受け止めてくれた。
この時も、そに子の存在は大きかった。

でも、それ以上に俺を助けてくれた奴がいる。
それが、市原だった。

393:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 02:45:09.41ID:i8RmR7sP0
恋人であるそに子が
俺をケアしてくれたのは大きい。
それは俺にとって本当に生きる支えだった。

でもこういう時は得てして、
男友達の支えというのも非常に重要だった。

メシとかを食べる気力を無くしていた俺を、
市原は率先して自分の家に呼んだ。
そして市原鍋を振舞った。
(白菜と豚肉をごった煮しただけ)
市原は高校時代3年間クラスを共にした男だった。

一緒にいると本当に落ち着いたし、楽だった。
市原の家に行くのは、
自分の実家に帰るような感覚だった。

394:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 02:56:16.01ID:i8RmR7sP0
市原の家に行くと、
市原はよくオレに夢を語った。
市原「俺は獣医学を専攻して、動物の研究をするのさ…」
俺「へー…それって面白いのか…?」
市原「面白いとか面白くないとかではないんだよ。それが夢なんだから。」

夢。よくよく考えたら俺の夢ってなんなんだろうか。

395:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:05:18.13ID:i8RmR7sP0
板尾と夢の話をしたことは一度しかなかった。
まだまだ19の少年だったから、
目先の事に頭が一杯で、
将来の話をする機会はあまりなかった。
その時板尾はポロッと言った。
板尾「俺は美術教師になる、絵の楽しさをダイレクトに伝えられるから」

俺は夢なんてまったくなかったし、
「すげえなあ」
くらいで流してしまった気がする。
夢。美術教師。

この頃からそんなワードが俺の頭をかすめるようになる。

396:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:11:02.47ID:i8RmR7sP0
6月になると、
冬に板尾と一緒に申し込んでいた
コミケの当落発表があった。
結果は落選。
なんということか。
俺はそに子と一緒に何か本を出すつもりでいた。

目的を失った気がした。
そこに、去年の冬のコミケで
一緒にサークル参加した板尾の友人から連絡があった。

397:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 03:15:37.13 ID:gk095lTZ0
うおお追いついた…!
俺も漫画家目指して漫画アシしてる。
読んでてすごく元気になったし楽しみにしてるよ!

398:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:15:57.05ID:i8RmR7sP0
友人「コミケ、どうだった?」
俺「いや、落ちちゃったよ…ダメだった。」
友人「そっか…それなら前回と同じように僕のとこで本を出しなよ」

なんと、またしても板尾の友人が俺を助けてくれた。
これには俺とそに子は二人して大喜びした。
本が出せる。コミケで。

399:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:18:46.00ID:i8RmR7sP0
>>397ありがとう、最後まで付き合ってくれたら嬉しいです。

402:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 03:23:52.30 ID:+4uQiR3DO
板尾の友人いいひとだね
いいひとたちに囲まれてる

403:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:27:38.12 ID:i8RmR7sP0
こんな感じで、6,7月は
ぼちぼち大学に通いながら
コミケに向けた絵を描いていく日々だった。

そに子は一緒に合同で
イラスト本を出すと言っていたが、
まだデジタルで彩色が上手くできないという事で
駄々をこねられた。

なので、結局はそに子はコピーの折り本を、
俺は個人誌を出すことにした。
彩色以外は、綺麗な線を描くし、
正直俺と対して変わらなかったんじゃないだろうか…

あと、書き忘れてたけど
そに子は俺と同じ美術部に入部しています。
でも、特に部活で書くようなイベントがなかったので
割愛してしまいましたw

404:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:29:22.35ID:i8RmR7sP0
>>402 そうなんだよね。
振り返ってみて改めて思うけど
俺は本当いい人達に囲まれて生きてきたなって思うよ。

407:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:36:59.65ID:i8RmR7sP0
俺は、今まで漫然とただ絵を描いていた。
ずっと描き続けて、
いつかイラストレーターみたいになれたら…
そんな甘美な夢を見ていた。

でもこの頃から
明らかに意識は変わっていたと思う。
よく分からないけど、
コミケのイラスト集の絵はただひたすら
集中して描いていた。

それでもたまにそに子から絵の相談を受けたりするので、
そんな時は楽しく絵チャとかやったりして、
マッタリ絵を描くこともあった。

408:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:43:19.93ID:i8RmR7sP0
板尾のタヒは、
よくも悪くも俺を変えた。
もう自信作を描いても、
「いいじゃんそれ!」
と言って笑う板尾はいないんだから。

コミケの原稿も一段落した8月の初旬
、俺は美術部の合宿に行った。
もちろんそに子も一緒に。
夏合宿。まあ、楽しいレクリエーションだ。

みんな夜通し語り明かしたりもする。
俺はこの合宿で相談したい相手が居た。

409:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 03:43:54.09 ID:TsjlM4fB0
お前の絵が早く見たい。
お前の優しさとか人格がこの文章からよく伝わってくる。きっといい絵を描くんだろうなって思った

410:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:47:08.47ID:i8RmR7sP0
>>409 ありがとう。
この話を最後までみんなにできたら、
うpもいいかもしれない。
ただ、本当に期待しないほうがいいよw
俺まったく上手くはないから。

411:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:58:59.57ID:i8RmR7sP0
一個上の部長。
部長は、芸大受験の経験もある、
かなりアーティストな人だった。

そう、俺はこの時決心していた。
東京学芸大の中等美術科に行って、
美術教師になってやる…
そのためには大学を辞めることや
仮面浪人もいとわなかった。
夢が、見えた気がした。

芸大や美大受験とはさすがに勝手が違うが、
それでも部長の意見を聞いてみたかった。

412:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 04:00:57.91ID:i8RmR7sP0
とりあえず、もう4時になってしまったので
一旦今日はここで休憩にします。
見てくれた人、本当にありがとう。
また明日の夕方〜夜あたりに続き書きます。
落ちたりしないよね?

414:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 04:06:49.21 ID:1EaWOpnn0
おつかれ。
+だからそうそう落ちたりしないんじゃないかな。
もし落ちてたら同名で立ててくれれば探すよー

416:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 04:11:29.59 ID:+4uQiR3DO
>>1
おつですー
今日一日深く考えさせられましたわ
自分も昔漫画家目指してたからなぁ。。
ゆっくり休んでください

417:名も無き被験体774号+2011/12/13(火) 04:16:01.90 ID:tchx8SFt0
そうか……板尾が亡くなったか…
本当に大事なものって
なくなった後からじゃないと気付かないんだよな。
それでもうダメだ、生きれないよと感じるけど
やっぱり前を向いて
その人がいない日々を
一生懸命生きていかなくちゃいけないんだよな。

425:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 05:38:34.45 ID:DN+0k0Ch0
最後まで読んだら俺も一歩踏み出せる気がする

442:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:02:42.36ID:P1VUjXiJ0
みんなこんにちは。
こんな時にアクセス規制くらって、
どうしようかめっちゃあわてた。
なんとか2ちゃんビューアを導入して戻ってきた。

ここまで読んでくれてありがとう。
これを読んで何か感じてくれたなら嬉しい。
時間があったら是非最後まで付き合ってください。


443:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:10:18.61ID:P1VUjXiJ0
今日も、ぼちぼち続きを書いて行きたいと思います。
話は折り返し地点くらいまできました。

445:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 17:12:27.79 ID:Wl6eAC7i0
待ってたよ!

448:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:17:03.74ID:P1VUjXiJ0
夏合宿。
みんな浮かれ気味である。
俺たち美術部一行は、
とある片田舎の避暑地に行った。

バスでは、俺とそに子は隣に座らなかったが、
それをひたすらにブーイングされた。
なんだかんだで遠藤と仲よかった俺は、
何故か遠藤の隣だった。

遠藤「今年の一年女子をこの合宿で見極める…」
俺「がんばれよ」

でも遠藤は途中からバス酔いしたので
静かで楽だった。

451:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:23:52.54ID:P1VUjXiJ0
夏合宿では海に行くか
高原に行くか半々くらいだった。
女子が多い部活。
俺は正直海に行きたくて仕方なかった。

でも行き先は高原だった。
俺「着いた〜バスって楽しいねえ修学旅行みたい」
遠藤「水…水…」

コテージ?ログハウス?
なんて言うんだろうそんなとこに皆で泊まる。
でも管理人の老夫婦がいたし
民宿にも近いのかな。

453:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:30:06.93ID:P1VUjXiJ0
俺「すごいなここ、バドミントンとかバスケ、テニスで自由に遊べるのな」
遠藤「バスケしようぜ〜」

近くには牧場もあったり、
自由にスポーツできたり。
緑が綺麗でとてもいいところだった。

そに子「華丸さんバドミントンしようよ〜」
俺「遠藤、そういうことだから。」
遠藤「いやいや混ぜてくれよ」

454:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:34:43.77ID:P1VUjXiJ0
この時ばかりは
青春ってやつだったかもしれない。
今思い出すとむずがゆい、でも楽しかった。

明るいうちはみんなでバドミントンとかして、
近くの小川に行ってネ果足で入って足怪我したり。
食べれる野草を見つけてみんなで騒いだり。

夜には肝試しでお化け役になって
樹の枝に腕ひっかけてすりむいたり。

けっこう怪我したwでも楽しかった。


456:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:44:21.59ID:P1VUjXiJ0
夜。自由時間。

夕飯も終わってみんなマターリタイムである。
俺は建物の外で
まだ吸い始めたばかりの煙草を吸っていた。

そうすると、部長がきた。
部長「くさいよ、それ」
俺「あ、すいませ…部長相談があるんです。」

部長「何よw 改まっちゃってw」
俺「俺大学多分やめます」

457:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:48:47.53ID:P1VUjXiJ0
部長「何トンチンカンな事言ってんの?」
俺「いや、だから…俺は美術教師になりたいんですよ、はい…」

部長「初めて聞いたな」
俺「そのためには、今の大学じゃ絶対無理じゃないですか。
やめて、今から美大は厳しいですから、学芸の中等美術科に…」

部長「うんうん、分かった分かったちょっと待って。」
俺「はい…」
部長「華丸は中高で美術部の経験があった?」
俺「いえ、まったく…高校では一度も美術の授業すらなかったです…」

459:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:56:43.53ID:P1VUjXiJ0
部長「じゃあ、美術の先生がどんなことするか、どんな人かも分からないんだね」
俺「まあ…そうなります…」

部長はいつになく真剣だった。
部長はスタイルがよくて、
ハキハキしていて、出来る女性.って感じだった。
だから尚更気迫があった。

部長「華丸がなんで急にそんなこと言い出したのかは分からない。
まあ、なんとなく察しもつくんだけど…
よく考えた方がいいよ。
そんなに甘いもんじゃないよ。」
俺「で、でも…」

部長「こんな言い方してごめんね。
でももしそれで大学やめて
美術の先生になれなかったら?
なれたとして、一生続けられるかな。」

部長は芸大受験に何回か失敗してからうちの大学に来ていたから、
学年一個上とは言え、歳は離れていた。

460:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:06:26.23ID:P1VUjXiJ0
俺はもしかしたら、
「頑張れ」とか「応援してる」とか
そういう言葉を期待していたのかもしれない。

学芸の受験自体は、
実技がそこまでできなくても
勉強をめっちゃ頑張ってセンターでいい点をとれば
可能性.はあるかもしれない
ということも分かっていた。

だから部長みたいな人に
背中を押して欲しかったんだろう。
俺は落ち込んだ。
一歩踏み出す、きっかけを与えて欲しかった。

461:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:13:38.06ID:P1VUjXiJ0
そんなこんなで、
期待していた夏合宿は終わりを迎える。
俺はここで心機一転するはずだったのに…と
落ち込んでいた。
完全に他人に頼っていたと思う。

でも俺は挫けなかった。
夢を追えなかった板尾のことを思うと、
美術教師は諦められなかった。

この時の俺は本当に取り憑かれたように
美術教師になる、って言ってたんだけど
それが本当の自分の気持ちだったのか、
板尾に対する自分の想いだったのかは、
未だによく分からない。

462:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:20:28.64ID:P1VUjXiJ0
合宿が終わると、
助けを呼ぶ声があった。
コミケで本を置かせてもらうことになっている板尾の友人だった。

友人「華丸君、今ヒマかな?原稿がやばいんだよ、手伝ってくれないかな…」
俺「おお、いいよいいよ。そんなにやばいんか。」

夏のコミケの締め切りギリギリ。
まさに友人は修羅場状態であった。
そして、この一本の電話が俺にとって
大事な分かれ道だった。

463:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:26:23.55ID:P1VUjXiJ0
俺は美大近くの友人の家に行った。

友人「ごめんねー手伝わせて」
俺「いいよいいよーそれより聞いて欲しいんだけど」
俺たちは作業しながら会話をした。

友人「どうしたの?」
俺「今から、学芸行って美術教師になりたい、それって難しいのかな」
友人「そんなことないんじゃないー?」

軽い。予想外の反応だった。

友人「俺の友達で学芸とか教育系の美術科?受けてここに来た子とかいるよー」
俺「え、本当に?」

464:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:32:19.08ID:P1VUjXiJ0
友人「その子、板尾とも仲良かったよ?もしかしたら会ったことあるんじゃない?」

俺は記憶の糸をたぐりよせた。
確かに去年はよく板尾の美大に潜り込んで、
色んな人と関わった。

俺「なんて子?」
友人「石田だよ、石田。」
俺「あ、俺その子知ってるよ……」

その子は石田ゆり子にちょっぴり似ているので石田と呼ぶ。

465:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:42:41.74ID:P1VUjXiJ0
そもそも、石田さんとは
そに子と初めて会う前から面識があった。

大学1年の5月くらいに
もう会っていた気がする。
板尾が美大の連中を色々紹介してくれた時に、
その中にいたって感じだった。

まだまだ異性.に距離を置いていた時だったし、
もちろん連絡先も知らなかった。
会ったことも4,5回あるくらいだった。

美大に遊びに行った時に、
構内で出くわせば、
「あ、ども…」くらいの感じだった。
それでもだんだん慣れて話すこともあったが、
とにかく「板尾ありき」の存在だった。

板尾が亡くなってからは会ったことはなかった。

466:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:46:41.49ID:P1VUjXiJ0
ただ俺は板尾が紹介してくれた
美大の連中のことはほとんど忘れていた。
この友人を除いて。

顔くらいは覚えていたが、
名前までハッキリ覚えている人なんて
ほとんどいなかった。
ただ、俺は石田さんのことは覚えていた。

俺は石田さんを初めて見た時から、
なんとなく「可愛い」とは思っていた。
好きとかそんなんじゃなく、
外から傍観する感じで。

だから記憶にも割と残っていたのだ。

467:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:51:17.51ID:P1VUjXiJ0
友人「じゃあ原稿一段落したら、美大に来なよ。
石田も呼んで、話聞く?
そのついでにさ、ほら、美大の中色々見たりする?」

俺「それはいい考えだね。じゃあそに子も連れてくるよ。」

友人「きっと彼女も色々話聞きたいかもねwできるだけ友達呼ぶよw」

そう、板尾の友人は、
俺とそに子と板尾が美大巡りの約束をしたことを
知っている唯一の人間だった。
あの時の計画が、こんな形で実行されるとは。

でも俺は楽しみだった。
そに子もきっと喜ぶだろう。

469:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:13:35.18ID:P1VUjXiJ0
書くの遅くてゴメン…

お盆にあるコミケの後にするか、前にするかで、悩んだ。
でも善は急げだって言って、
コミケの前に行くことにした。

そに子にも話すと、
そに子「え、今なのww でも嬉しい、すごく」
と言ってくれた。そに子も、
板尾のタヒにはショックを受けていたから。

そに子「どうしよう。スケブ持ってくよね?あとは…」
そこまでワクワクしてくれると、こっちも嬉しい。
良かった。

そして美大に行った。
俺はそに子と二人で向かった。
正門の前に友人が立っていて手を振った。
友人「こっちこっちー」


470:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:18:46.94ID:P1VUjXiJ0
友人「みんな来てくれるかと思ったけどねーw
さすがに夏休みだし予定がw
でも石田は来てくれたよー良かったね」
石田「久しぶり!」
二人はニコニコしてなんだか楽しそうだった。

俺「久しぶりだね。今日はありがとう。」
自分でも分かるくらい
もう女性.に対しての苦手意識はなくなっていた。
俺はとにかく早く学芸受験の相談も聞いて欲しかった。

471:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 19:22:52.08 ID:eslB9zldO
続ききてた
最後まで付き合うぞ

472:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 19:24:32.48 ID:5lCem2w9O
しえん

474:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 19:26:55.44ID:P1VUjXiJ0
友人「長期休暇中だからねー、
ほとんど建物の中入れないけど
色々見てまわろうかー」

美大の中を歩いていると、
色々思い出した。
よく板尾に案内してもらった。
一緒に歩いた、
去年のコミケのことも思い出された。
この計画も本当は…なんて思った。

なんだかとっても辛くなった。
そに子がずっと笑っていたのが救いだったかもしれない。

板尾のおかげでこの子にも会えたし…
そんな感傷モードに浸っているうちに
美大探訪は過ぎていった。

475:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:33:07.89ID:P1VUjXiJ0
支援ありがとう。
ごめんなんだか書くの辛くて少し遅くなるかも。
許してくれ。


友人「ほんじゃ、そろそろゆっくり話とかもしたいし、
俺の家に行ってゲームでもやろうよ」
友人はゲーム好きだった。
確かにゆっくり話もしたいとこだったし、
家に行くってのはみんな賛成だった。

石田「あたしなんか作るねー」
そに子「わ、わたしも…手伝います…」

そに子は実家暮らしなので
そこまで料理はできなかった。
俺は、女性.陣は可愛いなあ、なんて
心のなかで思っていた。

477:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:39:47.02ID:P1VUjXiJ0
友人の家につくと、石田さんが料理を作った。
そに子も少しは頑張ったらしいw
美味しかった、なんか感動した。
同級生の女の子が作った料理…

その後そに子は友人とゲームを始めた。
俺は色々と石田さんに話を聞くことにした。

478:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:52:06.23ID:P1VUjXiJ0
俺「実は自分、学芸に行って美術の先生になりたくて…」
石田「らしいね。聞いたよ。あたしも受けたよ〜学芸」

石田「現実的に考えるなら
母校の高校の美術の先生とかにも相談したら…?
あたしも高校の時は受験のために
美術の先生と仲良くなったよw」
石田「田舎だから予備校も長期休暇とかしか行けなかったし」

俺「なるほどなあ。」

この日話していて分かったんだが、石田さんと俺は
地元が一緒だということも分かった。
これには本当に驚いた。

479:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:56:30.34ID:P1VUjXiJ0
石田「華丸君はきっと頭いいんだから、
まず勉強頑張ればセンターで差がつくし
受験は大丈夫。あたしは応援しちゃうな〜」

これが美大生の思考なのだろうか。
迷わず応援してくれた。
俺は自分の補って欲しいところを補ってくれるような、
そんな存在が現れた気がした。

石田「華丸君絵を描くの好きなんだね。板尾も上手かったもんね」
話は板尾の話にもなった。

同じ地元に受験、板尾の話…共通の話題が尽きることはなく、
石田さんとは本当に長い時間話している気がした。

481:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:02:22.31ID:P1VUjXiJ0
その日はそんな感じで過ぎた。
そに子に帰り道でちょっとすねられた。ずっと話していたせいだ。
そに子「でも学芸受験のこと相談できる相手できてよかったね。
わたしはそういうの全然分からないし…」

あんたはエライ子だよ。

そして、このすぐ後にコミケが来る。
楽しみ半分、不安半分。
去年のことが懐かしく感じられた。

482:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:05:26.39ID:P1VUjXiJ0
この時までは、本当に失うものが何もなかったんだと思う。
夢を追おうが、捨てようが、自分の選択次第だし、自由だった。

この時までの自分はある種幸せだったなあと思う。
悩んで、苦悩して。

色んな人に迷惑かけてみて。

引用元:http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1323617346/

      






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