494: 名無しさん@あけおみ 2016/01/01(金)22:07:53 ID:Ied(主)
あけましておめでとうございます!
すっかり回復しましたのでまた明日から少しずつ書き進めていこうと思います。
本年もよろしくお願いします。

495: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)03:54:45 ID:mX0
>>494
おかえりなさい。マイペースでね。あけおめ!

496: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)07:22:04 ID:H4S
おかえりー

楽しみにしてるよ( ´ ▽ ` )ノ






499: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)14:48:43 ID:Iyy(主)
ケイに言われて気付いたが、この語学研修も折り返し地点を過ぎ、もう残り半分になってしまった。
僕はこの1ヶ月半で何ができただろう。そしてこれからの1ヶ月半で何をなせるのだろう。

なんてことを考えだしてしまったのは、プールの最中だと言うのにケイがニコラとのラブラブエピソードを語りだしたからだ。

「ほら、このまえおまえが味見をさせられたパスタあっただろ?あれを俺にも食わせてくれたんだよねぇ」
「へー」
「っていっても、やっぱり俺は特別みたいでさ、おまえの時は冷蔵庫のあまりもので作ったって言ってたけど、
 ちゃんとスーパーで食材を吟味して買ってきてくれたらしいぞ」
「へー」
「これがまたうまくってさぁ、俺あんなにおいしいパスタを食べたの初めてかもしれない」
「へー」
「……3へぇ?」
「おまえもバラエティ番組とか見てたんだな」

こういうおぼっちゃまは僕らとは無縁な世界で生きてるのかと思ってたよ。
実際今僕とは無縁な世界の話を聞かせてくれてるわけですし。

500: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)14:56:18 ID:Iyy(主)
「頼むからもっとしっかり聞いてくれよ!本題はここからなんだから」
「へぇへぇ」

ほらこれで5へぇたまったよ。だからそんな顔で睨むなって。

「それで本題って?」
「ああ、それがだな……俺がニコラの料理を褒めまくってたら、
 どういう経緯か俺がニコラに料理をつくることになってたんだ」
「何を言っているんだ?」
「俺もよくわからないけど聞いてくれよ。
 それでだな、ニコラがものすごく楽しみにしてるから俺としてもおいしい物を作ってあげたいんだけど……」
「ひょっとして料理をつくった事がないとか?」
「バカにするなよ?それくらいあるに決まってるだろうが!……家庭科の授業で」

それって作った事ないのとほぼ同義では?

501: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)15:05:38 ID:Iyy(主)
「他の家事は全部自分でやれるんだ。でも料理だけは作ってくれる人がいたから……」

なるほど。これがスーパー紳士Kの泣き所か。

「こんなこと相談できるのおまえくらいなんだよ。シュウ、俺どうしたらいいと思う?」

そういうことなら僕に訊いて正解だったな。
なぜなら僕の隠れた趣味は料理とお菓子作りなのだから!

「まあケイくん。大船に乗ったつもりで任せなさい。この私が君に最高のレシピを授けてあげようじゃないか」
「ぐ、急に態度がでかくなったな……」
「何か言ったかね?」
「背に腹は代えられないか……。よろしくお願いします、シュウ先生」
「任せたまえ!」

502: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)15:11:34 ID:Iyy(主)
さて、ケイに何を作らせたらニコラは喜ぶかな?

「ニコラは何か食べたいって言ってた?」
「いや、全部任せるってさ。それ聞いて余計にわかんなくなっちゃって」
「わかるよ。『何食べたい?』に対しての『何でもいい』は軽く暴力だよね」

何でもいいはずなのにいざ作ってみれば『もっとさっぱりしたものがよかった』だの
『今こんな気分じゃないんだよね』だの……あの姉貴はいつもネチネチ僕をいじめてたっけ。

「いや、暴力だとは思わないけど……。おまえが真剣に考えてくれてるようでうれしいよ」

503: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)15:22:01 ID:Iyy(主)
「それじゃあ今はニコラの好きな物から考えずに、
 ケイのポテンシャルを余す事無く発揮できるメニューを考えようか」
「おお、なんだかすごそうだなそれ!」
「ちなみにケイが今まで1番うまく作れた料理って?」
「うーん……あ、チャーハン作った時はかなりおいしくできたぞ。
 班員どころか先生も褒めてくれた」
「それっておばちゃんのチャーハンと比べるとどう?」
「あ……」
「チャーハンはよっぽどのレベルじゃない限りやめておいたほうがいいぜ」
「たしかにおばちゃんのチャーハンと比べたら負けるかもしれないけど……」
「白いご飯はどうやって手に入れるの?」
「そ、それは……おばちゃんの店で購入して……」
「それならチャーハンテイクアウトして『俺が作った』ってやった方が早くない?」
「そんなの気持ちがこもってないだろ!」

504: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)15:29:44 ID:Iyy(主)
「じゃあご飯を買ってきて、どうやって調理するの?」
「ああ、それはニコラの調理器具を貸してもらうことになってる」

ニコラの調理器具か。たしかあれは……

「あの電気コンロだけどな、サーモスタットっていう機能がついていて、
 一定温度を超えると自動的に電流が止まるようになってるんだ」
「それがどうしたんだよ?」
「火が途中で消えちゃうコンロでまともなチャーハンが作れると思う?」
「……なんてこった」

そんなに落ち込むなよケイ、僕がこれからおまえにぴったりな料理を教えてあげるから!

505: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)15:30:51 ID:Iyy(主)
続きはまたそのうち~ノシ

506: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)15:38:12 ID:UG0
>>505
あけおめー

507: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)15:42:49 ID:41K
あけましておめでとう!
今年も楽しみやああ

508: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)18:14:16 ID:Iyy(主)
「カレーライス?」
「ああ、ちびっ子人気ナンバーワンの料理だ!」
「ちびっ子言うなって」

そんなこと言われても実年齢も知ってしまったし、ニコラは正真正銘の童女です。

「あとカレーの素はどうすんだよ?あれがないと作れないだろ?」
「ご心配なく。ルウは僕がちゃんと持ってるから」
「何でそんなもん持ってるんだよ……」

何かの時のためと母さんが持たせてくれたカレールウが今役立ちます!

「そもそもカレーならやっぱりご飯を買ってこなきゃいけないだろ?」
「それなら米を買ってくれば大丈夫だよ」
「米なんてどこに売ってるの?」
「どこって、そこのスーパーに……あれ?ケイってそこのスーパー行ったことある?」
「ないけど……」
「よし、それじゃあさっそくスーパーに買物行くぞ!」

509: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)18:23:47 ID:Iyy(主)
「おお、ここがスーパーか!なかなかの大きさだな」

どうしたケイ、そんなに目を輝かせて。ひょっとしておまえ……

「日本でスーパーって入った事ある?」
「バカにするなよ、それくらい入った事あるよ」
「へぇ、何しに?」
「文化祭の買い出しにだ」

真っ先に出てくるのがそれか……
っていうか、たぶんそれくらいしかスーパーに行く必要がなかったんだろうなぁ、うらやましい。

「あの時は押せなかったけど、このカート押してみたかったんだよね!」
「うん、米も買うしカート押してってー」

まったく、スーパー紳士が子供みたいになっちゃって……。
さっそく彼女に影響を受けたのか、それともケイの素がこんなんなのだろうか?

510: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)21:44:38 ID:Iyy(主)
「おい、シュウ!店に入れないぞ!自動ドアじゃないのかこれ!?」
「自動ドアだけどそっちは出口だよ!アメリカのスーパーはたいがい防犯のために
 入り口と出口が別れてるから」
「まじかよ!なかなか考えてあるなぁ……」

うん、僕も初めて来たときそう思ったよ。
だけど他のお客さんの迷惑になるから観察してないで早く店内に入ってくれ!

511: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)22:01:19 ID:Iyy(主)
店内はケイの想像通りだったのか、少しがっかりしていた。

「あんまり日本のと変わらないんだな。もっとアメリカっぽいのかと思ってた」
「アメリカっぽい?」
「売ってる物がやたらでかいとかさ……」
「売り物じゃないけどこっち来てみなよ」
「ん?なんだこのコーナー?」

そこから見える陳列棚は全てに扉がついている。
そしてBGMの裏に流れている巨大なモーター音。

「これって全部冷蔵庫?」
「間違ってるぞケイ。この両側にズラッと並んでいるのは全部冷凍庫!
 そして入っているのは全部冷凍食品だ!」

僕の説明を聞いてケイの口が開いている。僕も初めてこの冷凍庫群を見た時は
あんな顔をしていたのだろうか。

「どんだけものぐさなんだよアメリカ人……」
「料理に時間を作ぐらいなら仕事をしたいって人のためにどんどん市場が拡大してったらしいよ。
 まあ見方を変えればケイみたいな料理できない人でも
 電子レンジさえあれば好きな人に料理をつくってやれるってことだね」
「なるほど、そう考えると冷凍食品も素晴らしい物かもしれないな……」

512: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)22:11:35 ID:Iyy(主)
「そしてここがベーコンコーナーだ!」
「……なにがすごいの?」

そうか……ケイには基準とするべき日本のスーパーがないからこの素晴らしさがわからないのか。

「ケイ、日本にはこんなに大きなベーコンだけを扱うコーナーってまずないんだよ」
「へ~。日本だとどれぐらいの大きさなの?」
「大きさと言うか、日本にはベーコンコーナー自体がない。
 ベーコンは加工肉コーナーでソーセージなんかと一緒にちょろっと並べられてるだけなんだよ」
「……ふーん、すいごいんだな」

くそ、ちっとも僕の感動が伝わってる気がしないぞ!

514: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)23:03:51 ID:Iyy(主)
あ、そうだ。

「ニコラのパスタにベーコン入ってなかった?」
「ああ!入ってた!あれはうまかった!」
「それはこれだけの種類の中からニコラがケイのために選んだからなんだぞ」
「なるほどな!アメリカのベーコンコーナー恐るべし、だな」

ケイにとっての身近な所は日本のスーパーじゃなくて二コラの手料理なんだな。

517: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)23:15:02 ID:Iyy(主)
さて、肉にニンジン、タマネギ、ジャガイモ……
あとは米だな。

「おい、シュウ。俺は米には少しうるさいぞ」
「なんだよいきなり」
「たしかにインドカレーには日本のもちっとした米よりぱさぱさの米がよくあう」

ああ、僕も全く同意見だ。

「でもおまえの持ってきたカレーは日本の家庭用だろ?つまりは日本の米にあった
 とろみのあるカレーってことだ。違うか?」
「いや、そんなドヤ顔で推理披露されても……ひょっとしてルウで作るカレー食べた事なかった?」
「お手伝いさんはスパイスからこだわる人だったからな」
「そうか……。まあ確かにケイの推理した通り、ルウで作るカレーはどろっとしてて、日本の米によく会うよ」
「そのカレーにアメリカの米を合わすのはいかがなものだろうか?」

518: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)23:20:01 ID:Iyy(主)
「ケイ、これをみてもまだそんな事が言えるかい?」
「こ、これは……コシヒカリだと?ササニシキにヒトメボレ……ニシキ?これは聴いたことないな
 全部日本から輸入してるのか?」
「そんなわけないだろ。それ全部、アメリカ産の日本米だよ」
「なんだってー!?」

519: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)23:30:10 ID:Iyy(主)
「まさかアメリカの食文化がここまで日本の文化を受け入れていたなんて……」
「寿司ブームの影響かもね。真由子さんは『おかげでおいしいご飯が食べれて助かる』って言ってたぞ」
「でもおかしくないか?あんなに冷凍食品が発達してるのに、どうして他の食材が売れるんだ?
 レストラン関係者が買っていくのか?」
「アメリカ人っていってもひとくくりで考えるのは危ないかもね
 彼らの中には絶対手作りの物しか食べないっていう主義の人もいるんだよ」

実際そういうこだわり派のためのオーガニック食品コーナーなんかが
店の広い区画をしめていたりするから驚きだ。

「こんな街のスーパーで社会の縮図を見てる気分だよ」
「食なしには人は成り立たないからねぇ」
「って、こんな会話をしたいわけじゃなかった」

そうだね。僕もなんでこんな真面目な事言ってるんだろうと頭の中でモヤモヤしてたよ。

520: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)23:35:29 ID:Iyy(主)
「米を買うのはいいけどどうやってたくんだ?炊飯器なんか無いぞ?」
「土鍋で炊けばいいんだよ」
「土鍋!?そんな物がどこにあるんだよ?」
「今僕は二コラがパスタを茹でるのに使ってるポッドと同じものを使ってるんだけど
 あれはここの卒業生が寮に置いてった物なんだ」
「あ、その置き土産の中に土鍋があったのか!」
「そういうこと。いったいどうやってアメリカまで持ってきたんだか……」

521: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)23:44:19 ID:Iyy(主)
「おい、ケイ、何を買ってるんだ?」
「チョコレート。二コラが喜ぶと思って」
「本当にそれだけ?」
「……カレーの隠し味にチョコを入れるとうまくなるとお手伝いさんが言ってたんだ」

ケイ、それは初心者が踏み込んじゃいけない道だ!

「基本も知らずに隠し味かい?ケイはずいぶんと余裕があるんだね」
「なんだよその言い方は」
「今のケイはね、初めて料理をやる人間が陥る罠に全力で脚をつっこんでるんだよ?
 基本の味も知らずに隠し味だなんて、トーフルを最終問題だけやるようなもんだ」
「たとえがよくわからないんだが……」

うん、言ってて僕もよくわからなくなってきた。

「とにかくそのチョコはそこに置いておきなさい。基本に忠実なカレーのおいしさを教えてあげるから!」

522: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)23:49:52 ID:Iyy(主)
僕たちは食材と倉庫にあった調理道具一式をケイの部屋に運び込んだ。
これからカレーの作り方をケイにマスターさせるのだ。

「いいか、カレーはパッケージに書いてある通りに作れば誰でもおいしく作れるんだ!
 まさにケイのためにあるような料理!」
「おまえには俺がどう見えてるんだ?」
「世間知らずの料理初心者?」
「くそ、間違ってないけど腹立つな」
「さあ、余計な事喋ってないでさっさと作るぞ!まずは炊飯からだ」

523: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)23:52:58 ID:Iyy(主)
こうして僕はケイにカレーの作り方をマスターさせた。

米を研がずに炊こうとしたり、ピーラーの裏表を間違えて腹を立てたり、
切ったニンジンを弾丸のように僕の顔面にヒットさせたりしたけれど、
おおむね問題なくカレーは完成した!

524: 名無しさん@おーぷん 2016/01/02(土)23:58:53 ID:Iyy(主)
「さあ、ケイ。味見だ」
「ああ……」

自分の作ったカレーを恐る恐る舐めるケイ。

「う、うまい!どこか懐かしい味がする」
「これが基本に忠実なカレーのおいしさだ。このおいしさを知らずに
 隠し味を入れようとするなんて馬鹿らしいだろ」
「たしかにな。でも、このカレーを二コラは喜んでくれるかな?」
「まあ、それは食べさせてみないとわからないな。
 でも今日は僕たちだけでコイツを楽しもうぜ!」

525: 名無しさん@おーぷん 2016/01/03(日)00:08:33 ID:gVn(主)
「チャオー!ケイあけてー。なんかいい匂いがするよー」

二コラか!しかし早すぎる!君へのカレーはケイがそのうち作ってくれ……る……

「シュウ!お願いだ!このカレーを俺の手作りってことで二コラに食べさせたいんだ!」
「そんなこと言っても俺だってこのカレーを楽しみにしてたのに!」
「すまない!だがこんなうまいカレーを俺一人でまた作れる保証なんてどこにもないじゃないか!
 頼む!ここは二コラに譲ってやってくれ!」

くぅ……まあ、仕方ないか。もともと二コラのためのカレーだったんだし。

「あ、シュウいたんだ。チャオー」
「チャオ。今日はケイが自慢のカレーを味見して欲しいって言うから来てたんだ」
「え?それってひょっとして私に食べさせてくれる奴?」
「ああ、そうだよ。シュウのお墨付きも出たから今から二コラを呼びにいこうと思ってたんだ」

おうおう、思ってもいなかった事をペラペラと。
これは紳士って言うよりむしろ詐欺師じゃないか?

「それじゃあ二コラ、日本のカレーを楽しんでね!」

528: 名無しさん@おーぷん 2016/01/03(日)00:13:13 ID:gVn(主)
ああ……せっかくのカレー。大好きなカレーが……。
しかも土鍋の白ご飯まで逃してしまった。

「ケイ……この貸しは大きいぞ!!

529: 名無しさん@おーぷん 2016/01/03(日)00:21:06 ID:gVn(主)
自室に戻ると突然お腹が大きく鳴った。
まあ、アレだけ期待させられてお預けを食らったんだから当然か。
しょうがないから僕はスーパーで売ってたサッポロのラーメンを食べるとしよう。

洗い物がめんどくさかったのでポッドから直接ラーメンをすすっていると、
蒸気で顔が汗だくになった。
このままじゃスーツにまでにおいがついてしまいかねないので、スーツをクローゼットにしまい
しっかりと換気をする。

そういえば何も考えずケイの部屋でカレーを作ってしまったけど……においは大丈夫だったろうか?
もし明日ケイからカレーのにおいがしたらちゃんと教えてあげよう。

530: 名無しさん@おーぷん 2016/01/03(日)00:27:31 ID:gVn(主)
突如窓から吹き込んだ風がテーブルの上のフォトフレームをパタンと倒した。
ペンギンのデザインがかわいらしいやつである。

僕はその写真立てを持ち上げると、写真に写っているひとりの女の子に目が奪われた。

「リア様は僕の事をどう思ってるんだろう……」

531: 名無しさん@おーぷん 2016/01/03(日)00:28:46 ID:gVn(主)
今日はここまで

See you soon, have a nice dream!

535: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)00:27:34 ID:IrN(主)
7月もいよいよ最終週となり、ひょっとしたらこのまま最後までひとり部屋を
満喫できるんじゃないかと思っていたら、新しいルームメイトがやってきた。

あまり英語が喋れないアジア人で、ちょっと取っ付きにくそうな感じ。
ああ、ジョージがルームメイトだったら良かったのに……。
そういえば彼は今頃どうしているんだろう?
トーフルの日にあっただけで、授業ではまだ1度も一緒になった事がない。
ひょっとしてジョージはここの生徒じゃなかったのかな?

536: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)00:40:21 ID:IrN(主)
せっかっくの休日だし洗濯でもしながらプールの練習でもしようと地下ヘ行くと
ちょうどそこにジョージがいた。クーラーの効いた室内でコーラをぐびぐび飲みながら
ハリウッド映画を鑑賞している。

「やあジョージ!久しぶり!」
「おお、シュウじゃないか!元気だったか?」

そういってジョージと握手を交わす。ものすごくごつごつした手をしている。
格闘技経験者だという僕の推測はそう的外れな物じゃないかもしれない。

洗濯機を動かして戻るとジョージがプールの準備をして出迎えてくれた。

「今日こそはやってくれるよな?」
「僕もおまえとできるのを楽しみにしてたよ」

537: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)00:54:47 ID:IrN(主)
ジョージの腕前はケイより少し劣る程度のものだった。
だからといって僕が毎回勝てるわけでもないんだけど。
ジョージのショットはパワーこそあれど、コントロールがめちゃくちゃだった。

「まったく、すごいパワーだな。何かスポーツやってるの?」
「ああ、マーシャルアーツをちょっとな」

マーシャルアーツ……格闘技って意味だったかな。
やっぱりそういうことをやってる人には独特の風貌があるよね。

「ジョージはなんでマーシャルアーツをやってるの?」
「ハハハ、そんなの女にモテるためだよ」

おお、言い切りやがった。ものすごい自信だなぁ。

「いつの時代も女は強い男を求めてるものさ」
「やっぱり強くなくちゃダメだよなぁ……」
「ん?シュウはUS(アメリカ)に好きな奴でもできたのか?」
「まあね。なあ、聞いてくれよジョージ……」

僕は真由子さんに憧れ、恋し、告白する前に彼氏がいるとわかって諦めた事を話した。
ジョージはただ黙ってその話を聞いていてくれた。年上の男の余裕って奴だな。

「まあ、彼氏がいる女に告白しないのは正しいな。もし俺がその彼氏だったら
 告白した奴に俺のストレートをぶちかます所だ」
「まあ、そっちはもうきれいさっぱり諦める事にして」
「なんだ?そんな簡単に諦められるような女だって言うのか!?」
「そんなわけないだろ!僕がどれだけ悩んでこの結論にいたったか……」
「す、すまんな。ついかっとなってしまった」

まったく、他人事なのにこんなに感情移入して……。
こんな奴だから初対面でも好印象を持てたのかもしれないな。

541: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)01:05:47 ID:IrN(主)
「話の腰を折って悪いな。その女性を諦めて、その先は?」
「……実は今、僕の事を好きかもしれない女の子がいるんだ」
「ほう、どんな子なんだ?」

僕はリア様についてジョージに説明した。
初めは子分を引き連れた女王様の用で怖かった事、でも実は自分の将来をしっかり考えてる子で
とても立派だと言う事、水族館に行ったら僕にお土産をくれた事などなど……。
話し始めたらきりがなかった。

「シュウ。おまえの話し振りを聞いている限り……」
「なんだよ?」
「おまえ、そのリアって子に恋してるぜ!」

542: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)01:20:32 ID:IrN(主)
ああ、たぶんそうなんだろう。
ここのところやる事が無くなると考えるのはリア様の事ばかりだ。
それでも!

「この前まで別に好きな人がいたんだよ?ところがその人に好きな人が別にいると
 わかった途端にこっちの子を好きになるなんて、そんなのダメだろ……」
「たしかリアって子はおまえが真由子って女性を好きな事を知っていたんだったな」
「うん。それどころか応援してくれてたんだよ。」

たまに見せるそんな健気な所も魅力的で……って何考えてるんだ僕は!?

「俺は全く問題ないと思うぞ。要はタイミングの問題だ。
 失恋したらそれを引きずってしばらく恋愛できないなんてよくある話だ。
 1ヶ月、1年、10年、いろんなやつがいるだろう。
 でもそいつらも素敵な女性を見つけて立ち直っていくんだ!
 シュウ、おまえはその女性を見つけるタイミングがたまたま早かっただけなんだよ!
 何もきにやむ必要なんか無い!」

543: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)01:28:28 ID:IrN(主)
そうか、そんな考え方もあるのか!
ジョージの話を聞いていたらここの所感じていた罪悪感が不思議と消えていった。

いや、今までは罪悪感とすら認識できずモヤモヤしていたんだ。
それがジョージと話す事によって『新しい恋をする事に対して抱えていた罪の意識』と自覚し、
さらにはそれを取っ払ってくれた。

「ジョージ……君のおかげで僕は新しい恋に積極的になれそうだよ!」
「それはよかった。じゃあ告白だな!」

……はぁ?

544: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)01:39:38 ID:IrN(主)
「いや、いきなり告白はちょっと気が早すぎるだろ」

これだから自分に自信のあるやつは困る。
世の中には告白したくてもできない奴が五万といるんだよ!

「でもいっしょにいられる時間は限られてるんだろ?
 だったらすぐにでも告白した方がいいに決まってるじゃないか!」
「た、たしかにそうかもしれないけど……」
「よし、じゃあこのセット俺がとったらシュウは好きな子に告白な!」
「何でだよ!」

すでに7番までボールを落とし、残る8・9番を落としきるのも時間の問題だ!
って、言ってるそばから8番落としちゃったし!

「さあ、シュウはどうやってリアに愛の言葉をささやくのかな~?」

ああ、9番が落とされる~!

「ジョージ!!シュウに何を吹き込んでるの!」

真由子さんがものすごい顔をしながら談話室に殴り込んできた!

545: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)01:53:16 ID:IrN(主)
真由子さんに気付いたジョージはとっさに動きを止めたが棒が手玉にわずかにかすった
これはファールなので僕は好きな所に手玉を置いてプレーを始められる。
僕は無事9番を落とし、告白は無事回避された。

「リアさんに愛の言葉をささやく?ジョージが2人の何を知ってるの!?」

真由子さん、あなた頭に血が登りすぎて日本語話してますよ~。
僕は全然気にしてないんで、落ち着いてください。

「そんなこと言うなよまゆまゆ。俺とシュウは初対面ってわけじゃないんだぜ?」
「あれ?ジョージも日本語……」
「悪いなシュウ。実は俺日本人なんだ」

えええええ!?なんだよそれ?
『タイ人の遺伝子を感じる!』だと?思いっきり同族だったよ!

「なんで今まで英語で……」
「まあ……なんというか……気になる後輩の学力チェックだよ」

後輩……だと……?

「ジョージはアーグルトン生で、私の同期なの。つまりはシュウの先輩ね」

546: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)02:13:28 ID:IrN(主)
「えっと、ジョージ……さんも先輩だったんですね」
「なんだよ急に、他人行儀だなぁ。今まで通りジョージ♡って呼んでいいんだぞ?」

今までそんな風に呼んだ事は1度もねーよ!

「あ、これからは先輩のこと真由子さんって呼んでもいいですか?
 先輩が2人だと紛らわしいですし……」
「そっか……ちょっと寂しいけどわたしはそれでかまわないよ。
 ねえ、シュウスケ……」
「あ、真由子さんも良かったら僕の事シュウって呼んでもらえませんか?
 ジョージさんにもそう呼んでもらってるんですよ」
「うん、わかった、シュウね」

これで真由子さんだけの特別な呼び方は終わり。
気持ちに区切りを付けるいい機会になった。
それにしても『まゆまゆ』かぁ……。
いつか僕がそう呼べる日が来たらと心のすみで願ってたのに……。

547: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)02:26:13 ID:IrN(主)
「シュウはもう大学見学って行った?」
「どこの大学です?」

この辺りにはけっこう有名な大学がいくつかある。
観光地になっていて、リア様なんかはとっくに行っているはずだ。

「何言ってんだよシュウ。大学と言えばおまえの行くアーグルトンに決まってるだろうが」

ああ、そりゃそうだ。自分の行く大学にすら行ったことない奴が他の大学見に行ってやる事なんてないわな。

「まだ行ったことありません」
「それじゃあ今度の見学会で私が案内して上げるよ」
「お、それなら俺も付き合うよ。車も出すぜ!」

2人ともどうぞよろしくお願いします。
そして末永くお幸せに……。

548: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)02:26:45 ID:IrN(主)
きょうはここまで

See you soon, have a nice dream.

549: げすたん 2016/01/04(月)06:35:24 ID:t7W
シュウくんおはよう

今日から日本では仕事始めなワケだけど三賀日の無いアメリカって仕事始めっていつからなんでしょ?

クリスマス休暇を1週間とかする民族だから仕事始めに対してルーズなのかな?

550: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)07:01:59 ID:IrN(主)
>>549
ニューイヤーズデイだけは休みですがそれ以後は普通に仕事です。
しかし今年は土日が重なったんで日本と同じ仕事始めですよ。

551: げすたん 2016/01/04(月)07:54:18 ID:t7W
>>550
なるほどねー 世話しないなぁ
まぁ現代の日本のスーパーマーケットなんかも元日から営業だけどね

そーいえば 以前のアメ友で ビの差し入れ牡蠣で死にかけたときに介抱してくれた真由子さん彼氏もジョージでおk?

556: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)19:39:00 ID:IrN(主)
「ジョージさんって本名がじょうじなんですか?」

ジョージさんの駆るアメリカの中古車にゆられながら質問してみる。

「おう。譲るっていう字に、児童の児だ。アメリカ人におぼえてもらいやすくてラッキーだったよ」

たぶんアメリカ人からしたらケンとかクミ並におぼえやすい名前なんだろうな。
僕も大学に入ったらしっかりシュウを広めていこう。

「ついたぞ!ここが9月からおまえが通うことになる大学だ!」

557: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)19:50:32 ID:IrN(主)
新築されたばかりなのか見た目はそこそこ素敵なキャンパスだった。
きれいなのはいいんだけど、思っていたよりもずいぶんと小さい。
これでは通っていた高校をふた周りほど大きくした程度じゃないか?

「ずいぶんと……かわいらしい学校ですね」
「あ、今アメリカにしては小さい学校だって思った?」

正解です真由子さん。どうしてこんなに小さいんでしょう?

「ここは学校で1番小さいキャンパスだからね。中央キャンパスって言うんだよ」

なんだ、ここ以外にもあるんですね。早合点してしまいました。

「ここではカフェテリアを挟んで右側で音楽の授業をやっていて、
 左側で経済の授業をやってるのよ。あそこに見える体育館みたいなのは音楽ホール。
 学内コンサートなんかも見れるからけっこう楽しい場所なんだ」

ということは、音楽と経済のふたつの部門のためにこれだけの土地を使ってるってこと!?
どんだけ広いんだよアメリカ!

558: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)19:51:06 ID:gFs
シュウさん今晩わ!自分はデンマーク人女性と結婚6年目です!アメリカ程ネタ話ありませんが、家のデンマーク人嫁がここを教えてくれました。
最近スマホばかり見ていて心配してたら、シュウさんのここを見てたみたいです!

559: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)19:58:46 ID:IrN(主)
>>558
デンマークの方にも読んでいただき光栄です。
日本人が外国人と接する時どう感じているかなどが伝えられたらうれしいですが、
今は語学研修所編なのでつまらないかもしれませんね。
もう少ししたら大学編に突入しますのでしばしお待ちください。

560: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)20:02:25 ID:IrN(主)
「後ろを見て」

僕たちの後ろには住宅街とマンションが広がっていた。
マンションと言っても英語で言う所の豪邸ではなく、日本で言う所の豪華なアパートの方である。

「街の中に大学が溶け込んでるんですね」
「アハハ違うよ」

なにがそんなにおかしいんだろう?

「シュウ、おまえが見てるのは全部大学の施設だよ」

え、マジで?

561: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)20:07:20 ID:IrN(主)
「そこのマンションみたいなのが大学の寮。ただし留学生は2年目からしか使えない」
「どうしてですか?」
「うーん……自分で言うのもなんだけど信用がないんだろうな。
 ここに入るなら2年目からだけど、寮費がどんと跳ね上がるから要注意な」

じゃあ在学中僕には縁のない所だな。

562: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)20:12:49 ID:IrN(主)
「その下の家みたいな所は……」
「職員のオフィスだったり、会議室や売店なんかもあるわね。
 教科書は全部あそこで買うことになるのよ」

まさかこんなに広い所だったとは……
ってさっき真由子さんここが1番小さいキャンパスって言わなかったか?

「他はここよりも大きいんですか?」
「うんそうね。じゃあ北キャンパスに行ってみようか。
 シュウの住むことになる寮もそこにあるよ」
「どうせなら歩いていこうぜ。その方が場所もおぼえやすいだろ」

563: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)20:24:15 ID:IrN(主)
ジョージさんの提案で歩く事になったのはいいけど……駐車場広すぎじゃない?

「ここを通り過ぎるのに何分かかるんですか……」
「大丈夫、2分も歩けばすぐ抜けるって」

それって大型スーパーの駐車場レベルなんだけど……。

駐車場を抜けると本物の市街地が見えてきた。
このまちの中で4年間生きていくんだと思うと少し胸があつくなる。
いかにもニューイングランドらしい街並に僕は少しでもなじめるだろうか。

中央キャンパスから歩いて15分、ようやく北キャンパスに到着した。

「ジョージさん……僕、ドライバーズライセンスも車もないんですけど、
 もし音楽の授業をとったら毎回この距離を歩かなくちゃ行けないんですか?」

今この距離を移動するだけでも真上から照りつける太陽に参り気味だっていうのに
1年同じ事を続けるのかと思うと目眩がする。

「ああ大丈夫。今は夏休み中で出てないけど、学校が始まればキャンパス間を走るスクールバスがでてるから」
「学内での移動は基本的にバスがメインになるからおぼえておいてね」

了解です。……座席がプラスチックのバスかな?お尻が痛くならないといいけど。

564: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)20:32:36 ID:IrN(主)
北キャンパスについた瞬間目に飛び込んできたのは何十棟もある4階建てのアパートだった。

「あれがシュウが住むことになるアパート。中央のよりグレードは落ちるけどとてもいい所よ」
「ああ、いい所だぞ。バス・トイレは共用だし、壁は牢屋みたいに真っ白だ」
「ジョージッ!!」

まあ、安い寮費でちゃんと雨風をしのげるなら僕はどんな所でも大丈夫。
小さいころはもっと条件の悪いアパートで家族4人で暮らしてたんだ。
こんなに素敵なアパートに文句を言ったら罰があたるよ。

565: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)20:38:03 ID:IrN(主)
「それじゃあこれから寮長に挨拶をして部屋を見せてもらおっか」

この学校の寮母さんは果たしてどんな人だろう。
チェスナットマナーの寮母さんは暖かいおばあちゃんみたいな人だったけど
やっぱりここでもそんな人がやってるのかなー?

「ヘイジョージ!こんな所で何やってやがるんだ!?
 おまえの使ってた部屋はとっくに消毒済みだぜ!!」

サングラスでスキンヘッドのいかつい黒人のおっさんがそこにいた。

566: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)20:44:00 ID:IrN(主)
「やあビル。久しぶり、元気だった?」
「元気だった?じゃねーよクソが!こちとらおまえらの後始末でこの夏を無駄にしちまったって言うのに!」
「それがあんたの仕事だろ?」

うわぁ、なんかいきなり険悪な雰囲気……?

「ふん!次学期おまえがいないと思うとせいせいするよ」
「こっちだって暑苦しいおっさんにどやされずに済むと思うと超ハッピーだね」

そう言うと2人はお互いの鼻がくっつきあいそうな距離までにじり寄った!

567: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)20:50:20 ID:IrN(主)
と思ったらいきなり固くハグを交わしだした!

「怒られたくなったらいつでも来い」
「独り身のおっさんが寂しくないようにたまにはここにも来てやるよ」

なんだよ、2人ともツンデレなのか?
でもこんなふうに憎まれ口を叩き合える外国人がいるってすごい事だよな。
僕にはこんな濃密なコミュニケーション取れる気がしない。

「真由子も寮を出るんだったな。住む場所は決まったのか?」
「ええ、ジョージといっしょにアパートに住みます」

え?今なんつった?

568: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)21:06:01 ID:IrN(主)
「お?そっちの小さいのはなんだ?」

小さいのって、僕はこれでも170あるんだけど……。
近くに寄ってきたおっさんは2メートル近くあるような気がした。

「今度からお世話になる日本人です。シュウ、挨拶して」
「僕は加納秀介です。皆にはシュウって呼ばれてます。靴のシュウです」
「靴のシュウだな。おまえの部屋は……3号棟の4階だ!
 いつもなら俺か生徒の誰かがついていくんだが」
「俺がいるから大丈夫だよ。ほら、早く鍵くれって!」

569: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)22:39:10 ID:IrN(主)
「まったく……シュウ、おまえはこんな風になるんじゃないぞ」

ビルは親指でジョージさんを指差し吐き出すように言った。

「大丈夫よ。シュウは礼儀正しい子だし……」
「どうだかな?それにジョージだって最初は大人しい日本人に見えたもんだぜ?」

そんな毒を吐きながらビルが僕に鍵をくれた。

「帰る前にまたここにもってこいよ!」

570: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)22:47:19 ID:IrN(主)
寮への道すがら、さっきから気になってた事を訊いてみた。

「真由子さんとジョージさんは同棲するんですか?」
「おう!」
「おうじゃないわよ、バカっ!」

真由子さんの空手チョップが炸裂した。痛そ~。

「たしかに同じアパートに住むんだけどね、単なるルームシェアだよ」

それを同棲って言うんじゃなかろうか?

571: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)22:57:09 ID:IrN(主)
「アパートの1階部分を借りてね、複数人で一緒に住むの。
 私とジョージとあともう一人、タイ人の女の子も一緒に住むわ」

へえ、そんな形態のルームシェアがあるのか。日本でやったら受けそうだな。

「タイ人と言えば、僕ジョージさんの事ずっとタイ人だと思ってました」
「俺のどこがタイ人だよ!ナマステチョップ!」

そういって空手チョップしてきたのをなんと真由子さんが受け止め
そのままローキックをお見舞いした!

「ジョージがずっと英語で喋ってるから悪いんでしょ!
 ごめんねシュウ。こいつバカで」

うん、そういう事にしておこう。見た目がタイ人ぽいなんて全く思っておりません。
ローキック怖い。

572: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)23:12:56 ID:IrN(主)
「ここがシュウの寮ね。ビルの小屋から少し遠いなぁ……」
「遠いと何か問題が?」
「問題ってわけじゃないけど、あの小屋の隣りにランドリーがあるから、ちょっと歩かなくちゃいけないね。
 さあ、入って。夏に続いて次セメも私がメンターやるから何でも訊いていいんだよ!」

寮の中でまず目にしたのはテラテラした白い壁に、薄い緑色の床と急な階段だった。
これを毎日4階まで上り下りするのは少し骨が折れそうだ。

「この寮はまずこの階段を境に男子エリアと女子エリアに別れてるのね。
 おいそれと女子エリアに入ったら通報されかねないから気をつけて」
「……すいません」

すいませんって、ジョージさんあんたいったい何したんだ?

「1階と2階、3階と4階はそれぞれひとつの区画になってて、中にも階段があるの」
「中にも階段?」
「まあ見せた方が早いぞまゆまゆ」

そういってジョージさんは4階の男子フロアのドアを大きく開け放った。

573: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)23:18:29 ID:IrN(主)
中に入ると小さいリビングとキッチンがあった。

「この区画の共同キッチンとリビングね。冷蔵庫は使ってもいいんだけど
 入ってくる人によっては勝手に食べられる事もあるから注意して」
「そんなことがあるんですか!?」
「あるぞー。嫌だったら小型の冷蔵庫を部屋に置いた方がいいかもな」

僕にそんな余裕はありません。神様仏様、どうか素敵な人たちと同じ寮にしてください」

574: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)23:29:27 ID:IrN(主)
「ここがシュウの部屋ね」

そういって真由子さんが導いてくれた部屋には気持ちのいい光がいっぱい差し込んでいた!

「まっぶしい……」
「南向きのいい部屋じゃないか。景色も最高だぞ!」

ジョージさんにつられて窓から景色を見ると、そこには広大なキャンパスと
その背後に広がる広大な森があった。

「へー!この学校にも森があるんですね」
「ここにはあんまり動物いないけどね」
「あんまり奥に行くと出て来れなくなるから気をつけろよ」

ハハ、まさか。冗談だよね?
なんで2人ともそんな深刻な表情で森を見つめてるの?

575: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)23:35:16 ID:IrN(主)
「あ、ベッドがふたつあるってことはふたり部屋なんですねここ」

部屋には左右対称にベッドと勉強机、そしてクローゼットが置かれていた。

「どんな人がルームメイトになるんだろう」
「私の初めてのルームメイトがミラだったのよ」
「え?ミラってあのビッ……」
「お、シュウはミラ知ってるのか!そうだよ、あのビだ!」

人がせっかく言いよどんだのにそんなはっきり言わなくても!

576: 名無しさん@おーぷん 2016/01/04(月)23:42:55 ID:IrN(主)
「ミラは9月からどこで生活するんだ?」
「あの子はこれからもこの寮に住むみたいだよ」
「ああ、また新入生が食べられるのかぁ」
「食べられるとか言わないの!ごめんねシュウ、気にしなくていいからね~」

ええ、気にしていません。全部想像の範囲内です。

577: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)00:06:55 ID:XZk(主)
「あれ?ジョージと真由子か?おまえらも新入生の案内?」

そう話しかけてきたのはヒップホップが大好きそうな黒人さんだった。
ぶかぶかの帽子と金のアクセサリーがよく似合っている。
その後ろにはやけにひょろっとした黒人さんが付き従っている。

「こいつはマオ。スーダン出身だ。9月からここの語学研修生だ」

おお、コイツが僕のルームメイトか!

「こんにちはマオ。僕はシュウ。よろしくね」
「ハロー……シュ?」
「シュウ。靴といっしょ」
「おお~シュー!ハロー、モウだよ」

あれ?モウ?僕が聞き間違えたかな?

578: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)00:15:36 ID:XZk(主)
その後「マオ?」「モウ?」と訊いてみたが、彼には同じ言葉に聞こえるらしい。
ためしに「マウ?」って訊いたらそれでもいいと言っていたので僕は彼をマウと呼ぶ事にした。

マウとのファーストコンタクトもそこそこに、僕たちは中階段を使って3階部分に降りた。

「ここは共用の風呂がある。といっても湯を貯めて使う奴なんかまずいないがな」
「みんなシャワーで済ませちゃうし掃除しないから、とてもお湯を貼るきになれないの」
「こんなにきれいなのは最初だけだからな、覚悟しとけよ」

ってことはちゃんと風呂掃除さえすれば湯船につかり放題な訳だ。
いいこときいたぞ!

579: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)00:35:56 ID:XZk(主)
「寮の説明はざっとこんな感じかな。質問あるか?」

細かく訊きたい事はいろいろあるけども、訊いておかなくちゃ行けない事がひとつある!

「ごみの処理はどうすればいいですか?」
「ゴミ?……ずいぶん家庭的な事を訊くんだな」

人間が生きていく限りどうしてもゴミが出るからね。
語学研修所では袋を所定の物置に置いておけば翌日には無くなっているがここもそうとは限らないからな。

「ここではゴミを自分で回収コンテナまで捨てに行くの。
 ちょっと見に行ってみる?」
「はい」

僕の家庭的な面を見せたら話題が掃除や洗濯、料理などの家事全般に向いた。
ジョージさんは見た目通りそういう事が苦手なようですっかり無口になっている。

「それでね、新居のために2人で新しい炊飯器を買ってみたの。これがとってもおいしく炊けてね」
「それはうらやましいなぁ。僕は炊飯器がなかったから土鍋で炊いたんですよ」
「土鍋なんてどこにあったの?」
「寮の倉庫に置いてありましたよ」
「ああ、それたぶん俺の土鍋だわ」
「ええ!?ジョージさん料理しないんじゃないんですか?」
「ああ、全くしないんだけどな。ボストンの日本人向けストアーでアレを見つけて
 どうしても欲しくなっちまったんだよ」
「それで新品のまま倉庫においていったんですか?」
「いや、たしか1回だけ……」
「あ、みんなで闇鍋やったよね!その土鍋か~」

闇鍋?あれ?あの土鍋使うときちゃんと洗ったよな……?
結局僕はあのご飯食べられなかったけど、ケイたち大丈夫だったかな?

580: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)00:52:39 ID:XZk(主)
階段を下りてくとエントランスにビルがやってきた。

「お、もういいのか?」
「とても素敵な寮ですね。こちらに来るのが今から楽しみです」
「ほう、こいつはホントに礼儀正しいな。日本人って奴は本来おまえや真由子みたいな奴の事を言うんだろうな」
「ヘイヘイ、ビル!じゃあ俺は何人だって言うんだ?」
「あん?おまえなんかはエイリアン(外国人)で十分だよ」
「だれが地球外生命体だこらーっ!」

この人たちは出会ってからこんな掛け合いを何度もやってきたんだろう。
じゃなきゃこんなに息が合うはずがない。

「おっと、今はおまえの相手をしてる場合じゃないんだ。
 こちらのレディに寮を紹介しなくちゃならんのでな」

そういってビルの巨大な体が横に動くとその後ろにきれいな女の子が立っていた。
金髪碧眼のナイスバディ……おっと、嫌らしい視線は御法度だ。
これからいっしょに寮生活をしていく子なんだ。仲良くとは言わないけど、せめて悪いイメージは持たれたくない。

そんなことを思っていたらビルと女の子はあっという間に上の階へあがっていってしまった。

「なんだ、シュウはああいう女がタイプなのか?」
「違いますよ!たしかにきれいな子だとは思いましたけどね」
「シュウが料理得意なら日本食パーティーとか開くといいかもね。
 そういうことすると寮の空気が一気に明るくなるから。」

日本食パーティーか。いいかもしれない。
手巻き寿司なんか作ったらあの子とも仲良くできたりするのかな?

「お、なんかエロい事考えてるな?」
「考えてませんよ!」

僕そんなににやけていたかな?これからはちょっと気をつけよう。

581: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)00:54:09 ID:XZk(主)
See you soon,have a nice dream!

582: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)00:56:41 ID:3va
オツカリー
ついにアレックス登場か!?

583: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)01:00:23 ID:3tM
アレさんかなー♪

584: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)02:27:39 ID:XyU
アレックスなら、意外と出逢いは早かったんだなぁー

これが世間一般で言う、運命の出会いってヤツか

589: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)19:33:30 ID:XZk(主)
ゴミの回収コンテナは中に人が何人も入って遊べそうな大きさだった。
これに分別も何もしていないゴミを入れておけば回収日に持っていってくれるらしい。
地球環境にずいぶん厳しいシステムだなぁ。

ビルの部屋に鍵を返しにいくと誰もいなかった。
あの女の子を案内してるんだから当然だろう。

「シュウ、どうする?ここで待つか?」
「そうですね。何か時間がつぶせる物があればいいんですけど」

ここで待っていればもう1度あの子に会えるかもしれない。
僕の気のせいかもしれないけど、あの子も僕たちと話したそうにしてた気がするんだよなぁ。

「じゃあそこのランドリーと談話室でも見る?」
「はい、お願いします」

洗濯もゴミ捨て同様生活に欠かせない家事だからね!

590: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)19:45:43 ID:XZk(主)
ランドリーにはものすごい数の洗濯機と乾燥機が置いてあった。
まあ、これだけの規模の寮を支えているのだから当然なんだろうけど。

ランドリーの隣りにはかなり大きな談話室があった。

「研修所みたいに一棟ずつ談話室があるんじゃなくて、この大きい談話室で全部の寮をまかなってるのよ」

なるほど、どうりでこんな体育館のようなサイズになるわけだ。
テレビにいたってはシングルベッドよりも大きいんじゃないか?
まったく、このスペースにどれだけ金かけてるんだよ。

「奥のスペースにキッチンもあるし、ここでいくらでもパーティーできるから
 やるときは私たちも誘ってね」

もちろんですが、まずは僕がパーティーに誘われるかどうかが問題です。

591: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)19:57:39 ID:XZk(主)
談話室で時間をつぶすためにアニメを見ていたら、ビルが自分の小屋に戻っていくのが見えた。
残念ながらあの子はいっしょじゃないようだ。
まあ、9月になればそのうち話すチャンスもあるだろう。

「それじゃあビル、たしかに鍵は返したぞ」
「今回は鍵の複製作ったりしてないだろうな?」

今回は?ジョージさん、あなた一体何したんだ?

「そんな時間あるわけねえだろ?こっちはシュウにまだいろいろ見せなきゃ行けないんだ
 じゃあな、ビル!」
「おい待てよ。おまえのオンボロどこにあるんだ?」
「オンボロって言うなよなぁ。中央キャンパスだよ」
「じゃあこれからバス来るからのっていけよ」
「おお、夏休みなのに気前がいいな!」
「別におまえのために言ってるんじゃないぞ。そっちの……
 あーシュウみたいな見学者のためのバスだ」

なるほど、たしかにそういうのがないと辛いと思っていた所だ。

「まあ、今は1時間に1本くらいしか出してないからせいぜい気をつけろよ」

592: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)20:23:38 ID:XZk(主)
ビルの小屋のすぐ目の前にスクールバス用のバス停があった。
そして金髪のあの子もバスを待っていた。

「おおシュウ、よかったな。話しかけてこいよ!」
「ええっ!?何を話せって言うんですか?」
「そんなもん、きれいな髪ですねとか、見た目を褒めればいいんだよ!」
「何変なこと教えてんのよ!」

この人は1日に何発チョップを食らってるんだ。

「こんにちは。私は真由子。去年までここの寮に住んでたの」

おお、真由子さんが先陣を切ってくれた!

「こんにちは……。皆さんは日本人ですか?」
「そうよ。よくわかったわね?」
「私日本の文化が大好きですから」

おお!これは話しやすくなった。でも、日本の何が好きなのかな?

「へえ、そうなんだ?よかったらいっしょに校内見学しない?
 私たちはこの子に学校を案内してる所なんだ」
「ハロー!」

僕は気さくな日本人。僕は気さくな日本人。僕は気さくな……

「すいません。叔父がそろそろ迎えにくるので……」
「ああ、そんなんだ。気にしないで」
「9月になったら日本のこといろいろ教えてくださいね」
「オッケー。そのかわりアメリカの事いろいろ教えてよ」
「もちろん。あ、叔父の車が来たので……素敵な夏休みを!」
「そちらこそ素敵な夏休みを!」


「おいおい、なんかいい感じだったんじゃねえの?」
「べ、べつにそんな事ありませんよ……」
「だよなー。日本男児はアメリカ人には持てないからな」
「え、そうなんです!?」
「おう。とくにおまえなんかは胸の厚さが足りないのが致命的だな」

ガーン。って、アメリカ人の彼女を作る予定なんか無いので別にかまわないんですがね!
……ジムのマシーンで胸筋つけるのなにかあったっけ?

593: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)20:33:29 ID:XZk(主)
バスのに乗り込むとかなり豪華なバスで驚いた。

「席ちゃんとふかふかなんですね」
「そうなのよねー。気持ちよくて何度授業に遅刻しそうになった事か」
「だから俺が車で送ってやってるんだぜ」
「もう、そういう事後輩の前で言わないでよ!」

真由子さんのことしっかりものだと思ってたけどこういう面もあるんだな。
きっと今までメンターとして気を張りつめていたんだろう。

594: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)20:44:23 ID:XZk(主)
「シュウはシアターメジャーだったよね?」
「はい、そうです」
「だったらいずれメインになるのは南キャンパスね」
「じゃあこのまま南キャンパスまで行くか」
「……そんな正反対のキャンパスで大丈夫ですかね?」
「平気平気。最初の1~2年は一般教養がメインになるから」
「ぱんきょーの中に数コマ専攻を入れてくと空気が掴みやすいかもな」

なるほど。それだとしばらく演劇の勉強はお預けかな。

「確か真由子さんはアートメジャーでしたよね」
「よくおぼえてたわね。ちなみにアートのクラスも南キャンパスがメインだから
 きっとよく会うわよ」
「おいまゆまゆ、シュウが3年になるまでずっとここにいるつもりか?」
「あ、そうだった。ごめん、さっきの訂正!」

あー相変わらずかわいい生き物だな。あなたがいるなら南キャンパスに来るのも悪くない。

595: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)20:51:43 ID:XZk(主)
「ジョージさんは何を専攻してるんです?」
「俺?俺はスポーツ医学だよ」

おお、なんだかかっこよさげな学問だな。

「俺は子供のころスポーツ少年団の4番でピッチャーをやってたんだけどな」

でた!運動神経のかたまりのようなやつ!
絶対ドッヂボールで大活躍してた人だ!

「だけど無理な投げ方がたたって肘を壊しちまったんだ」
「あ、それで同じような立場の子を助けるために?」
「ちょっと違うな。もちろん俺みたいな奴を出さないのは大切な事だけど」

596: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)20:57:36 ID:uB5
>>594
ぱんきょーって何?

597: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)20:58:34 ID:XZk(主)
>>596
一般教養の略です

598: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)20:58:58 ID:uB5
なるほど

599: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)21:01:57 ID:XZk(主)
「野球ができなくなって周囲にあたってた俺に空手を教えてくれた師範がいたんだ。
 その人のおかげで自暴自棄から立ち直ることができてさ」
「あ、ジョージさんのいうマーシャルアーツって空手だったんですね」
「ああ。それで俺にも将来どうするかって時が来てさ、その時なりたかったのが
 師範のように人だったんだよね。なんていうか……どんな子供にでも夢を与えられる人間になってみたいのさ」

うおお!なんだこの人かっこいいな!
あー、真由子さんの目がとろんとしてる。これは惚れても仕方ないわ。
何気に子供好きをアピールしてるのもレベル高いよね。

「そういうシュウはなんでシアターメジャーなんだ?」
やめてくれよ、ここで「ハリウッド映画に憧れて」なんていったらいい面の皮じゃないか。

600: 名無しさん@おーぷん 2016/01/05(火)21:12:17 ID:XZk(主)
「お、シュウお帰り。大学見学ツアーはどうだった?」

寮母さんと何か話していたケイが僕を出迎えてくれた。

「とにかく規模がでかかった。さすがアメリカって感じ」
「だよな。俺が前までいこうとしてた学校なんて空港完備だぜ。どうなってんだろうなこの国は」
「設備で言えば劇場がとにかくすごかった!規模といい機能といい、あれはプロが
 使う物となんら遜色無いよ!あんなところでショウができると思うとわくわくするね」
「収穫はたっぷりって感じだな」
「ああ、なんとしても奨学金を勝ち取ろうって思ったね」

7月末、そろそろトーフルの結果発表だ。
あんなに頑張ったんだからどうか奨学金ゲットできますように!
まあダメだったとしても8月のトーフルで絶対ゲットしてやるけどね!!

603: 名無しさん@おーぷん 2016/01/06(水)08:51:02 ID:7QE
アニメタイム長いな・・・

613: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)18:56:21 ID:69e(主)
こんばんは~

今日もゆっくり始めていきます

614: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)19:03:06 ID:69e(主)
7月最終日、今日はトーフルの成績発表が授業の後に控えている。
そのため大学進学を控えているグループは完全に上の空で授業を受けていた。
もちろん僕も例外ではない。そんな僕の意識をつなぎ止めるように
パメラの張りのある声が舞台に響いた。

「それでは卒業発表の演目はロミオとジュリエットってことでいいね!」
「はい!」

あ、リア様元気いいなぁ。何かいい事でもあったのかな?
成績発表後、僕もあんな風に笑っていたいものだ。

615: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)19:08:48 ID:69e(主)
「今週末までに各自台本を読み込んで、月曜日にはオーディションをするよ!
 どうしたら自分の魅力を最大限に発揮できるかしっかり考えてくる事!いいね!?」
「はい!」

そうだ、もし奨学金をゲットできたらリア様をデートに誘ってみようかな。
もしケイの妄言通りリア様が僕に興味があるって言うなら来てくれるかもしれない。

616: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)19:14:50 ID:69e(主)
「ヘイシュウ!ちゃんと聞いてるのかい!?」
「え?はい」

何も聞いてませんでした。

「まったく、ロミオになるのは劇中だけにしておくれよ」

ん、ロミオになる?どういうことだろう?英語独特の言い回しかな?
それともただ単に僕にロミオ役をやって欲しいってことだろうか。

「オ~、冗談の意味が通じないのはむなしいねぇ。
 シュウ、アンタに宿題だ!ロミオの意味をちゃんと調べておいで!」

役作りのためにしっかり勉強してこいってことかな?
でもケイとニコラの仲を取り持った僕としてはロレンス修道士をやってみたいんだけど……。

617: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)19:22:48 ID:69e(主)
放課後、講堂にトーフルを受講した留学生全員が集められ成績表が配られた。

勉強をやってもやっても伸びない時期があった。
しかしそれも次へのステップを上がるために足下を固めていただけのこと!
実際にトーフル直前にはステップをひとつ登ったと言う実感があった。
だからどうか奨学金カモン!!

618: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)19:24:48 ID:69e(主)
「シュウ、おめでとう!あんたの目標クリアだね!」

よっしゃあああ!幻聴じゃないよね?うん、たしかに手渡された紙にも
基準点より遥かに上のスコアが記されている。
講堂の後ろの方でホワイト教授が静かに拍手を贈ってくれている。
教授!僕やりましたよ!今までありがとうございました!

619: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)19:37:47 ID:69e(主)
「ケイ……8月のトーフルまでまだ時間がある!絶対に諦めるんじゃないよ!」

僕の次に成績表を受け取りに来たケイをパメラが激励している。
やはりケイはだめだったか。どれ、少しは慰めてやろう。

「残念だったなケイ。まあ次があるさ」
「ったく、自分が受かったからって気軽に言ってくれるよな……」
「それでスコアはどうだったんだ?ちょっと見せてくれよ」
「ああ……これだ」

げっ!?なんだこれ、僕とほぼ同じスコアだと?というかわずかに数点ケイの方が上をいっている!
僕ががんばって砂の足場を固めてるうちに、ケイは鉄のはしごでも使ったというのか!?
愛の力のなんと堅固なことよ。

620: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)19:41:25 ID:69e(主)
二コラはさすが飛び級と言うべきか、満点を叩きだし余裕の合格を勝ち取った。

「おめでとう二コラ。満点なんてかっこいいね」
「ありがとうシュウ。これも皆がいてくれたおかげだよ」
「わずかでも君の力になれたならそれが僕の喜びさ」

日本語ではこんな歯の浮きそうなセリフ絶対言えないなぁ。
演技の授業が日常生活にまで影響を及ぼしているのを感じる。
まったく、良いんだか悪いんだか。

621: ■忍法帖【Lv=1,ミイラおとこ,noj】 2016/01/07(木)19:42:29 ID:z9n
目標クリア=奨学金ゲット…で良いの?

622: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)19:43:34 ID:69e(主)
>>621
語学研修所での目標はそれでオッケーです

623: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)19:50:20 ID:69e(主)
「よし、二コラの合格を祝してまた4人で遊びにいこう!」

と言い出したのはケイである。
おまえたった今不合格言い渡されたばかりなのに何を言ってるんだ?

「ケイはこれから勉強しなきゃダメでしょ!」

うん、そのとおり!良かったなケイ、ちゃんと叱ってくれる彼女で。

「お祝いしたらちゃんとやるから!むしろお祝いしないと勉強が手につかない!」
「そ、そういうことなら……仕方ない、かな?」

折れるの早っ!まあ中身は13歳の女の子なんだから仕方ないか。
自分の合格を祝ってくれる彼氏の申し出を断りきれるはずもない。

624: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)20:25:46 ID:69e(主)
「ケイ、おまえここで落ちたら二コラとお別れだってわかってる?
 おまえの志望大学には語学研修所なんてないから、下手したら9月からも
 この女子大に通うことになるんだぞ?」
「く、そうだった……。仕方ない、ボストン行きは諦めるか……」

ん?待てよ。こいつに諦められたら僕もダブルデートができなくなるのか。
デートしつつもケイの成績を上げるいい方法がどこかにないものか……

「そうだ!私がケイに勉強教えてあげる!そうすればきっと合格できるよ!」

おお、それはいいアイディアかも。しかしプライドの高いケイがそれを受諾するかどうか……

「なんて素敵な提案なんだ!次のトーフルまでよろしく頼むよ二コラ!」

プライドよりも一緒にいられる喜びが勝ったか。うん、ケイはそういう男だ。普段の見た目や振る舞いは僕と全然違うけど、根っこの所は同じ男なんだと実感する。

「それで?今回はボストンに遊びに行くの?行かないの?」

僕が訊くとケイも二コラも満面の笑みで「行く!」と答えた。

625: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)20:35:42 ID:69e(主)
「あ、でもシュウは大丈夫なの?」
「ん?大丈夫って何が?」
「何がって……真由子にあんな振られ方したから……」

ああ、二コラが電話で聞いてとどめを刺してくれた件ね。

「それならもう気にしなくていいよ。僕は真由子さんの事すっぱり諦めたから」

あれだけジョージさんと息ぴったりな所を見せられたら、誰だって諦められるというものだ。
むしろ2人を祝福したいくらいの気持ちになっているのは彼らの人徳のなせるわざだろうか。

626: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)20:40:11 ID:69e(主)
「ごめんね。私がとどめを刺しちゃったような物だから、ものすごく気にしてたんだ」

その割にはトーフルでしっかり満点とってるけどね。
まあ僕は少しも気にしてないから安心しなよ。

「それでさ、真由子さんの代わりといっては何だけど……リアさん誘っちゃダメかな?」
「中院さん?」
「うん。ほら、この前だって水族館行ったときなかなか楽しかっただろ?だから……」
「シュウ、おまえ……」
「真由子からリアに乗り換えたの?」
「そそそ、そんなんじゃないよ!ただいっしょに遊んだら面白いかなーって……」
「ふ~ん」

なんだよ2人とも、そのニヤニヤ顔は!?
またもや僕の気持ちだだ漏れか?

627: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)20:44:30 ID:69e(主)
「あ、講堂の外にリアがいる!チャンスだよ、誘ってきたら?」
「いいよ、あとでメールしとく」

バドミントンや演劇のクラスを通して個人的に仲良くなってきたとはいえ、
取り巻きの前でこちらから話しかける勇気はまだない。

「お、アドレス手に入れてたんだ?」
「独立記念日の時はアドレスがなかったせいで酷い目にあったからね。
 この前の水族館のときに交換したんだよ」
「ふ~ん」

だから2人ともそのニヤニヤするのをやめなさい!

628: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)20:51:43 ID:69e(主)
「あ、そうだ!今回のプランは私が立ててもいいかな?」

二コラが目をみひらきながらケイに伺いを立てる。
何かいい事を思いついたな。

「二コラのためのお祝いなんだから俺が計画しようと思ってたんだけど……」

もしも~し、ここにもう一人目標達成した男がいるのをお忘れじゃありませんかね?
お祝いしてくれてもいいんですよ?

629: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)21:12:47 ID:69e(主)
「私のためのデートなら私の好きなようにしてもいいよね」
「まあ、二コラがそこまで言うなら……」

ケイよ、僕にはおまえが尻に敷かれてる未来が見えるぞよ?
しかし二コラの計画か……

「ねえ二コラ、リアさんボストンはいろんなとこ行き尽くしてるらしいんだよ。
 下手なとこ誘ったら来てくれるかどうか……」
「御心配なく。私が考えてる所は何度行ってもいいところだし、たぶんリアは行ったことないと思うよ!
 だからちゃんと彼女をデートに誘うのよ!」

はぁ、この光り輝くような自信はいったいどこから来るのだろう?
二コラだって僕と同じでボストンにはほとんど出向いていないのだから
素敵なデートスポットなど確かめようが無いだろうに。

630: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)21:14:22 ID:69e(主)
まあ疑っていても何も始まらない。
僕は二コラの言う事を信じてリア様にお誘いメールを送る事にした。
なんだかんだ文面を打ち直してるうちに夜になってしまったが、下心を感じさせない素敵なメールが出来上がったと思う。
この思いよリア様に届け!送信!

631: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)21:15:25 ID:69e(主)
数分後、リア様からの返事が届いた。

「パメラの宿題はもうやった?」

宿題?ああ、ちゃんと役作りをしてこいって奴だっけ?
リア様は演劇にも真面目に取り組んでいるからな、
役の読み込みもせず遊ぶことに抵抗があるのかもしれない。
よしここは……

「ボストンから帰ったら一緒に宿題をしませんか?」

少し大胆だったかな?でもこれくらいなら誠実なお誘いに見えないこともないだろう。

632: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)21:18:22 ID:69e(主)
先ほどよりだいぶ間が開いて、リア様からこんな返信があった。

「おおロミオ。ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」

これは劇中有名なセリフの引用だけど、一体どういう意味だろう。
僕にロミオ役をやれってことかな?
それとも……

『名前を捨てて一緒になってくれない?』というリア様なりのシャレた愛の告白だったりするのだろうか?

633: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)21:20:39 ID:69e(主)
僕が返事を打ちあぐねているとリア様からさらにメールが一通届いた。

「二コラの計画楽しみにしています。週末が待ちきれません。おやすみなさい」

これでダブルデートは確定だけど……さっきのメールはホントに何だったんだろう?
ひょっとしてあれは『窓の下に来て』という遠回しなメッセージだったのだろうか?
今から行っても遅いかな?遅いよな。おやすみなさいって言われてるし……。

そんな事をもんもんと考えているうちに、いつのまにかひばりが朝を告げていた。
ナイチンゲールならよかったのに……。

636: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)23:31:48 ID:69e(主)
8月1日、なんとか仮眠をとって授業に向かうと、ホワイト教授に

「おまえも上の大学を目指すのか?」

と聞かれてしまった。そうだ、僕はもうトーフルの授業に出なくていいんだっけ。
ケイが教室の奥で口を押さえて笑うのを我慢している。くそぅ。

637: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)23:36:54 ID:69e(主)
寮に帰ってまた寝ようかとも思ったが、クラスまで全力疾走してしまったため
眠気はすっかりどこかに消えていた。さあ、どうやって時間をつぶそう?

そうだ、ジムに行って胸筋でも鍛えてみようかな。
ジョージさんもここの器具をお勧めしてくれたし。
この時間なら誰もいないだろう。

と言う僕の目論みは見事にはずれた。

「あらシュウ、おはよう」
「おはようございます、加納くん」

真由子さんとリア様が2人仲良くランニングマシンで走っていた。

638: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)23:40:11 ID:69e(主)
そういえばリア様がトーフルの時間に仲良くしてるって言ってたけど、こういうことだったのね。

「シュウもこっちにきていっしょにどう?」

う、正直長距離は大の苦手なんですが……。
それにリア様とは昨日の謎メールで変な仲に……

「ランニングマシンの使い方を教えて差し上げましょうか?」

なってなかった。いつも通りのリア様だ。

640: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)23:47:25 ID:69e(主)
リア様にランニングマシンの使い方を教えてもらうと、僕たちは3人並んで走り出した。

「ところで……リアさま……」
「リア様!?」
「噛んじゃっただけだよ、走ってるからね。
 リアさん、昨日のメールなんだけど」
「ああ、ボストン観光楽しみにしていますね。
 二コラはどこに連れて行ってくれるのかしら?」

僕が言ってるのはロミオがどうのというメールの方なんだけど。

641: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)23:54:45 ID:69e(主)
「またみんなでどこか行くの?仲良しだね~。ヒューヒュー」

そんな、口でヒューヒュー言われても。
真由子さんってそんなキャラでしたっけ?
ジョージさんの存在を知らなければそのままあなたを誘っていたかもしれないのに、のんきだなぁ。
そんな事を思っていたらリア様が爆弾発言を投下した。

「よかったら真由子さんも私たちと一緒に来ませんか?今週末なんですけど……」

ええっ!?さすがにそれは僕のキャパシティがオーバーしますよ!?

642: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)23:57:33 ID:69e(主)
「ごめんね。週末は日本から友達が帰ってくるから行けないわ。
 リアちゃんはシュウと楽しんで来てね」

はぁ、なんとか事が大きくならずに済んだ。
さすがに好きだった人の前で今好きな子とデートするとかありえない。

さて、昨日のメールの真意をそれとなく聞き出さねば!

643: 名無しさん@おーぷん 2016/01/07(木)23:59:34 ID:69e(主)
「昨日のさ、おーロミオって、あれどういうこと?」
「え、せっかく思い出させてあげようとしましたのに、気付かなかったんですか?」

思い出す?気付く?何の事です?

「昨日パメラが加納くんへの宿題に『ロミオ』の意味を調べるように言ったじゃないですか!」

あ、そういえばそんなこと言われてたっけ。

644: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)00:02:31 ID:WLX(主)
「それで私気になって、辞書でロミオと言う言葉を調べてみたんです。
 そしたらロミオには『色男』だとか、『恋に溺れる男』だなんて
 意味もあるらしいですよ」

ふむ、英語って奥が深いなぁ。こういう事がわかってないとジョークも楽しめやしないなんて。
……ん?パメラはあのときたしか……

『ロミオになるのは劇中だけにしてくれよ?』

って言ってたっけ。


……それってつまり『恋に溺れるのは劇中だけにしておけ』ってこと?
僕がリア様に気がある事すっかりパメラにバレてない?なぜだ!?

645: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)00:07:33 ID:WLX(主)
「それにしても加納くんをロミオ呼ばわりするなんて、
 パメラによっぽど気に入られてるのね」

いや、そういう意味じゃないと思うよ?でもこの勘違いは正さないでおこう。

「2人はロミオとジュリエットをやるの?」
「はい、演劇の卒業発表でやるんです」
「といっても役はまだ決まってないんですけどね」
「そうなの?でも2人のロミオとジュリエットならきっとお似合いね!」

……あれ?真由子さん?さっきから違和感を感じてたんですけど……
もしかして僕とリア様くっつけようとしてくれてます?

646: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)00:11:07 ID:WLX(主)
「いっけなーい!やらなくちゃいけない仕事があったんだ!
 私はもういくけど2人はゆっくりしていってね!シーユー!」

なんてわざとらしいんだ真由子さん。
これはジョージさん経由で僕がリア様に気がある事を聞き出したな。
くそっ!ジョージさんはなんて口が軽いんだ!でもグッジョブ!!

647: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)00:19:00 ID:WLX(主)
真由子さんが風のように消え去ると、とたんに僕とリア様の足音と息づかいだけの世界になってしまった。
ここは紳士としてなにかこじゃれたジョークでも……

「そういえば、まだ言ってませんでしたね」

ん?なんのことだろう?やっぱりあのメールには別の意味が?

「奨学金獲得おめでとうございます」
「あ、ハァ、ありがとう、ハァ、ございます」

やばい、だいぶ息が上がって来た。
リア様は涼しい表情してるって言うのに!

「私が合格した時も、たしかこうして後日におめでとうと言ってくださいましたね」

ああ、そういえばそうだった。そんな小さな事までおぼえてくれてるなんてなんか嬉しいな!

648: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)00:25:51 ID:WLX(主)
「すごいですわね、自分の夢に向かって着実に歩いてる感じがして」
「それは……ハァ……リアさんも……ふぅ……変わらないでしょ。
 実際こうして……ハァ……理想の自分に向かって走ってるわけだしッ」

くっそ、脇腹痛くなって来た。
よくこんなダイエットが続くもんだよなぁ。意味ないのに。

「今こうして走ってる事と未来に向かっている事をかけるなんて、うまい事言いますわね。でも!」

リア様はにやっと笑うと、僕のランニングマシンのスピードを一気に早めていく!

「多少のデリカシーはついたのかもしれませんが、表情から失礼な事考えてるのはお見通しですよ!」

なぜばれたし!

649: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)00:30:55 ID:WLX(主)
僕は高速ランニングマシンに足を取られ転倒し、マシンの後ろへ吹っ飛ばされた。

「大丈夫ですか!?すいません、やりすぎました」

マシンを降りてリア様が僕に手を差し伸べてくる。

「いいって、気にしないで。実際失礼な事考えたのは僕の方だし」
「あら、ほんとに考えてたんですか?」

当てずっぽうだったんかい!

650: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)00:34:16 ID:WLX(主)
「いったいどんなこと考えてたんです?」
「ダイエットの必要もないくらい痩せてるのに、よくこんなこと続けるよなーって思ったんだよ」
「え、今なんて?」
「ごめんなさい、もう言いません!」

ほんとに女性の怒りのツボってどこにあるかわからない。
そんなに顔を真っ赤にして睨まなくてもいいじゃないか……。

651: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)00:35:13 ID:WLX(主)
See you soon, have a nice dream.

652: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)04:35:55 ID:vw4
イッチお疲れ
今日もありがとう

658: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)21:39:10 ID:WLX(主)
その日から僕はみんながトーフルの授業をやっている間にジムでリア様とお喋りするようになった。
他の人が授業を受けている間にこっそりあっているという背徳感を共有する事で
また少し仲良くなれたような気がする。真由子さんと急に仲良くなったのもそれが原因かも。

そんなことを考えながら胸筋を鍛えていたら急にリア様の姿が見えなくなった。
と同時に筋肉への負荷が一気に強くなる。なんだこれ!?

「どうですか?これくらい重い方がトレーニングになるんじゃないかしら?」

リア様が僕の背後で器具のおもりを上から押さえつけていた。
僕がダイエットがどうのこうの言った事に対する当てつけか!?

「ぐぬぬ……リアさんは軽いからちっとも問題ないよ!」

というセリフを余裕の表情で言えたらかっこいいんだろうけど。
結局全力を出し切ってもリア様の体重には勝てなかった。

659: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)21:46:26 ID:WLX(主)
「これでは私が重いみたいじゃないですか」

自分でやっておいて何を拗ねてるんだこの人は。

「リア様くらいだったら軽く持ち上げられるってば」
「あら、肩で息をしてますよ。無理はしない方がよろしいんじゃない?」
「無理じゃないってば」

こうなりゃ実際に持ち上げて……もちあげ……るとなると、お姫様だっこ?

660: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)21:52:29 ID:WLX(主)
「あれ?やっぱりできないんですか?」
「やってもいいの?」

そういって僕がお姫様だっこの手つきをしたところで、
リア様もこの会話の恥ずかしさに気付いたようだ。

「いわゆるお姫様だっこには少し憧れますが……
 初めてがジャージでは絵になりませんね。やめておきましょう」

うん、そうしましょう。……って、それってジャージじゃなければお姫様だっこオッケーってこと?

661: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)22:07:54 ID:WLX(主)
そんなドタバタを繰り返すうち、あっというまに週末デートの日が訪れた。
バスでボストンに出るのかと思ったらケイがすでにタクシーを呼んでくれていた。

一番体格の大きいケイが助手席に座り、残る3人で後部座席に乗り込むことになったのだが
一番小さいニコラが真っ先にのってしまい、真ん中の席のリア様を僕とニコラで挟む形になった。

僕の脳裏をよぎったのはリアパパのパーティーで真由子さんと腕を組んだシーン。
そんなシーンを思い出すくらい近くにリア様の肩がある。なんかいい匂いがする!
ああ、こんなに華奢な体からどうやったらあんなに巧みなバドミントンのプレイが生まれるんだろう?

662: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)22:16:25 ID:WLX(主)
僕がどぎまぎしているとケイとニコラが一瞬にやっと笑った気がした。
そうか、これはおまえらが計った事か!でかしたぞ!!


30分もかからないドライブだったけど、なんだかすごく消耗した。
幸せなのに、その気持ちがバレたらと思うと緊張で体がこわばってしまった。

一方リア様は何もなかったかのようにタクシーを降りようとしている。
その様子を僕が見ていると、リア様はてのひらを下に向け僕に手を差し出して来た。

663: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)22:28:27 ID:WLX(主)
あまりにも自然な流れに僕はリア様の手を取り車外へとエスコートしていた。
すぐに離れてしまったけど、その手は女の子らしい柔らかさと、スポーツ選手らしい
マメの固さが混在していた。ひょっとしたらトーフルの勉強でできたペンだこもあったかもしれない。

手を握る、たったそれだけの事なのに、リア様のがんばりが伝わってくるようで
僕は「この子を守ってあげたい」と心の底から思っていた。
これは真由子さんのときには感じなかった思いである。

664: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)22:34:21 ID:WLX(主)
到着したのはイタリア人街と呼ばれる、主にイタリアからの移民たちが経営する
レストランが建ち並ぶ場所だった。

「シュウには以前このお店の事はなしたよね!」
「ひょっとして真っ黒なパスタが出てくるって所?」
「そう、それ!私すっごく楽しみにしてたんだ!さあ、早く入りましょう!」

665: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)22:42:42 ID:WLX(主)
店内はかなり混んでいたが、タイミングよく空いた席に滑り込むことができた。

「とても流行ってるんですね!」
「この街で1番おいしいパスタを出してくれるんだって!」
「なんだか陽気な所だな!」
「これがイタリア人の気質なんだよ!」

同じテーブルなのに少し声を張らないと何を言っているのかわからないくらい
店内はにぎやかだった。誰かが鼻歌でオーソレミオを歌っている。

僕は何を注文していいのかわからなかったのですべてをニコラに任せる事にした。

666: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)22:57:57 ID:WLX(主)
店のおばさんにニコラがイタリア語ですらすら注文していく。
なんだか英語を話す時よりもさらに子供っぽく見えるのはなんでだろう。

「ニコラってイタリア語話すときなんだか子供っぽくなるね」
「ああ、やっぱりそう思う?おかしいよね」

そういうとニコラは少しシュンとしてしまった。
それを見たケイが即座にフォローを開始する。

「外国語を話す人って、その言葉を話すときの人格があるんだってさ。
 例えばシュウなんてそれが顕著でさ」
「え、僕?」
「日本語で話す時はどこか自信なさげなのに、
 英語になると途端に自信に溢れたような話し方をするんだ」

ええ!?ケイの耳にはそんな風に響いてたの?
これからは日本語封印しようかな……

「そうなるのはその言葉を学んだ環境が強く影響してくるらしくてさ、
 シュウの場合は他の日本人よりもよく喋れたからそれが自信につながって
 こんな風になったんだろうね」
「それじゃあ私の英語は……」
「ニコラはアメリカに来て必至に独り立ちしようと頑張って来ただろう?
 そういうところが大人っぽさになって現れたんじゃないかな」

なるほど、さすがはケイだな。よく見てらっしゃる。

「でも俺は子供っぽいニコラのイタリア語も好きだよ」
「あ、ありがとうケイ」

うおおお!こいつあの流れからニコラを口説き落としやがった!
って、もう付き合ってるんだからこの言い方は変か。

あの奥手だったケイはどこに行っちまったのさ!?

667: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)23:06:55 ID:WLX(主)
料理を待っていたら先にパンがやって来た。
しかしそれに塗るバターもジャムもどこにもない。

「ねえニコラ、このパンどうやって食べるの?」
「それはねこのオリーブオイルをつけて食べるのよ」

え、オリーブオイル!?

668: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)23:12:49 ID:WLX(主)
ニコラはテーブルの上のどんとおかれたオリーブオイルを取り皿にそそぎ、
塩を多少混ぜて「めしあがれ」と言って来た。

果たしてこれがうまいんだろうか?

「たしかここにバルサミコ酢をたらしてもおいしいんだよな」

そういってケイが真っ先にトライする。

「お、うまい!オリーブオイルがとってもフルーティで」
「そうでしょ、おいしいでしょ~」

僕もさっそく食べてみると、オイルと塩だけなのにたしかにおいしかった。
リア様もパンを小さく小さくちぎりながらおいしそうに食べている。かわいい。

669: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)23:16:40 ID:WLX(主)
「塩じゃなくて醤油にしてもおいしいかもな~」
「おお、シュウ!日本人はなんで何にでも醤油を使うの?パンはスシじゃないのよ」

あれ?ちょっとで怒らせてしまった?
別にイタリアの食文化をけなしたわけじゃないんだよ~

670: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)23:21:12 ID:WLX(主)
「ごめんね、ニコラ。ただ醤油を使ったらどんな風になるかな?って思っただけなんだよ。
 知的好奇心ってやつさ」
「ああ、それならわかる!私もこの前のカレーにオリーブオイルかけたらどうだろうって思ったし!」

どんだけオリーブオイル大好きなんだよ。これってニコラだけ?
それともイタリア人がみんなそうなの!?

671: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)23:28:02 ID:WLX(主)
「カレー?インド料理のレストランにでも行ったんですか?」
「ううん。ケイが私のために日本のカレーを作ってくれたんだよ!」

ケイ、真相をバラしたりしないからそんな不安そうな顔するな。

「それは素敵ですねぇ。ここしばらく手料理を食べてないわ」

おお、これはチャンス!じゃあ僕がリア様のために——

「じゃあ私がリアのために晩ご飯作ってあげるよ!」

あれ?あれー?

672: 名無しさん@おーぷん 2016/01/08(金)23:32:25 ID:WLX(主)
今日はここまで、おやすみなさい
See you soon, have a nice dream.

679: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)18:19:29 ID:VKy(主)
最新話:アーグルトン州立大学 バスツアー
http://ncode.syosetu.com/n6833cz/50/

眠くて省略してしまった箇所を書き足してありますのでよかったら読んでみてください。

681: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)19:27:40 ID:h4h
アーグルトンってGoogleマップに存在した架空の町だよね

684: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)21:09:33 ID:VKy(主)
>>681
そうです。本当の地名を出すのは少し気が引けたのでちょっと遊んでみましたww

685: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)21:10:51 ID:VKy(主)
>>671の続き

「まあ、ニコラが料理を?それはうれしいですわ!」

ニコラは僕とリア様をくっつけようとしてくれてるんじゃなかったのかよ、くそぉ。
そんな僕の様子を見てケイがニコラに何か耳打ちをした。
それを聞くニコラはしまったとばかりに自分のひたいを手で被っている。

「その……よかったらシュウも一緒に作らない?シュウも料理得意なんだよね」

2人ともナイス軌道修正!

686: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)21:14:45 ID:VKy(主)
「ニコラほどおいしいもの作れるかはわからないけど、僕も料理が趣味だからね」
「まあ、それは頼もしいですね!」

やった、けっこう好印象っぽいぞ!

「私はお菓子作りは好きなんですが、料理は全部お手伝いさんに任せっきりで」

ケイも言ってたけど、お金持ちの家にはお手伝いさんがつきものなんだな。やっぱりメイド服や執事服を着て働いているんだろうか。

「それじゃあ今日の晩ご飯は私とシュウで作るから楽しみにしててね!」

え、今日の晩ご飯の話だったの?

687: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)21:21:42 ID:VKy(主)
「せっかく昼にイタリアン食べに来て晩ご飯もイタリアン?」
「あれ?ケイはイタリア料理嫌いだった?」
「もちろん大好きだよ。こんなに嬉しい事はないね!お、なんか出て来たな」

うまく話をそらしたな。

「これは生の貝でチェリーストーンって言うの。日本人て生の魚介類が好きなんだよね」

はい、大好物です!……おや、ケイの顔色が少し悪くなった気がする。
ひょっとしてこいつ生の貝がだめなのかな?

688: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)21:25:06 ID:VKy(主)
まあ、そんなの気にせず食べてみよう。きれいな桜色が実に食欲を誘う。

「おお、この貝おいしいな!貝自体に甘味がある。それにでかい!」
「ボストンに来ていろんなレストランに行きましたがこんなにおいしい貝は初めてです」
「ホントだ、すっごくおいしいね!」

あれ?ニコラ知ってて頼んだんじゃないの?

690: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)21:29:32 ID:VKy(主)
「これはイタリア料理じゃなくてボストン名物らしいよ。
 だから私も興味があって注文してみたんだ」
「へぇ。イタリア料理じゃないんだ。じゃあ遠慮なく言うよ。
 醤油かけて食いたい!」

それを聞いてニコラが大笑いしだした。
学校の講堂で聞くとかなり場違いに思えたけど、
陽気なレストランの空気にニコラの笑い声はとてもよく合っている。

691: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)21:33:59 ID:VKy(主)
「なあ、このチェリーストーンかなり気に入ったんだけどケイの分ももらっていいか?」
「ああ、もちろんだとも。みんなで食べてくれ」

やっぱりこいつ生の貝ダメなんだな。牡蠣に中ると生の貝が食えなくなるって言うけど、
ケイもそんな感じだろうか。結局6個あった貝を3人でふたつずつ食べてしまった。

「お、これはイカのフライか?」

お腹を空かせたケイが次の皿を嬉しそうに迎えていた。

692: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)21:38:36 ID:VKy(主)
「これはフライドカラマリだよ。アメリカではイカが出てこないから
 ついつい頼んじゃった。ケイ、イカは食べられる?」

あ、貝が食べれない事ばれてやんの。

「ああ、イカは俺もずっと食べたいと思ってたんだよ!」

調子のいい奴だなー。でも僕もちょうどイカが恋しかった所だ。

693: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)21:43:04 ID:VKy(主)
フライドカラマリはチェリーストーンに負けず劣らずおいしかった。
トマトソースの爽やかな味わいがフライの旨味を何倍にも高めてくれている。

そして最後に出て来たのがふたつのフライパンだった!

「ここのパスタはフライパンで出てくるので有名なんだよ」

なんて横着な……いや、豪快な食べ方なんだろう。
ひとつは魚介類のたっぷり入ったトマトソースのパスタで、
もうひとつがニコラの言っていた真っ黒なイカスミパスタだった。

694: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)21:51:08 ID:VKy(主)
「ソースじゃなくて麺自体が真っ黒なんだね」
「だから服についても大丈夫よ」

たしかに日本でイカスミパスタを食べた時は舌も唇も真っ黒になっていたっけ。
これならその心配も無さそうだ。



フライパンから自分の皿にブラックパスタをよそい、フォークに巻き付けて食べてみる。

うまい、うまいぞー!小麦の味とイカスミの旨味がひとつになっている!
それをアーリオオーリオで食べる事により、ニンニクとオリーブオイルの香ばしい風味が
旨味を何倍にも引き立てているんだ!

695: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)22:03:51 ID:VKy(主)
「こんなにおいしいパスタを食べるのは2度目だよ!」
「へー、前はどこで食べたの?」
「何を言ってるの?この前ニコラが食べさせてくれたじゃないか」

僕の言葉にニコラがとても嬉しそうな顔をする。
やっぱりこの子は料理を褒められるのがとても嬉しいようだ。

「ふん、俺はニコラのパスタの方がうまかったけどな」
「ケイ、そんなこと言ったらお店の人に失礼でしょ!」
「あ、すまん……」

やーい、むきになって怒られてやんの。
でもやっぱりニコラは嬉しそうな顔してるなぁ。よかったよかった。

696: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)22:12:28 ID:VKy(主)
「そのおいしいパスタを私もいただけるのかしら」

話にいまいちついてこれなかったリア様ががんばっている。

「もちろんだよ!あ、でも具材がちゃんとあったかな~?」
「それなら帰りにスーパーにでもよっていきましょうか。私素敵なスーパーを知ってますのよ」

へえ、リア様もスーパーに行く事があるんだ。超意外。
スーパーには最後に寄るとして、このあとどうするのかニコラに訊いておかなくちゃ。

697: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)22:16:46 ID:VKy(主)
「ところでニコラ、この後の予定は?」
「ふふーん。今日のテーマはね、私たちになぞらえてイタリアと日本なの。
 だからこれから日本人の好きそうな所にいこうと思ってるんだ」
「日本人の好きそうな所?」
「どこだと思う?つくまでにあててみて」

うーん、どこだろう。ボストンに日本人街なんてあったかな?
お昼食べたばかりで日本食レストランってこともないだろうし……。

698: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)22:22:04 ID:VKy(主)
ふたつのフライパンの中身をきれいに食べ尽くし会計をすることになった。
このお店はキャッシュオンリーとの事で、リア様はどうするだろうと思っていたら
今回はちゃんと現金を用意していた。

「水族館の件でちゃんと学習しましたからね。ニコラ、これで足りるかしら?」

そういってリア様が差し出したのは新品同然の100ドル札だった。

699: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)22:27:45 ID:VKy(主)
「リア……これでも良いんだけどね、あんまり良い顔はされないかも」
「あらなぜです?」
「アメリカ国内で100ドル札ってあんまり流通してないから、
 こんなところで払ったら偽札だと思われちゃうかも。実際私も初めて見るし」

そういえば僕も母さんに同じような事言われたっけ。

700: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)22:31:32 ID:VKy(主)
「どうしましょう……。またみんなに迷惑をかけてしまいました」
「そんなことないよ!大丈夫、任せて」

こんなことでリア様に負い目を感じさせたくない。僕は100ドル札を受け取り
お店の人を呼んだ。仕様を拒否されないよう最高の笑顔を用意する。

100ドル札を出すと店員は一瞬驚いていたが、ちゃんと清算してくれた。
もちろん透かしなどをちゃんと確認した上で。

701: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)22:36:56 ID:VKy(主)
「ああ、よかった。加納くん、本当にありがとうございます」
「どういたしまして」

その笑顔のためならこれくらいなんでもない。

「これでまたひとつ賢くなれましたわ」
「日本だと1万円札が使えないなんてありえないもんね」
「あら、そうなんですか?私日本でも現金を使う機会ってなかなか無くて……」

僕もお金持ちの生態についてひとつ賢くなれました。

702: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)22:41:47 ID:VKy(主)
See you soon, have a nicedream!

703: 名無しさん@おーぷん 2016/01/09(土)22:48:37 ID:6JT
>>702
楽しく読ませてもらってます♪
寒い日が続きますが体に気をつけて下さいw
質問w
今でも、出張で米行ったりするの?

709: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)18:46:21 ID:KU5(主)
店を出るとニコラがリア様にこんな事を言い出した。

「ねえリア、目的地まで4キロくらいあるんだけど、電車ならあっという間、
 歩くと1時間くらいかかると思うけどどうする?」

おいおい、相手はあのリア様だぞ。そんなのタクシー一択……

「腹ごなしにさんぽもいいかもしれませんね」

あれ?今日は歩けるんだ。
そういえば今日はヒールのない靴を履いている。

「言ったでしょ?私だって学んでるんです」

僕が足下を見てるのに気付いたリア様が自信満々に言い放った。

710: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)18:55:10 ID:KU5(主)
4人で道を歩いていたら道に赤い線が描いてあった。
それも数メートルどころではなく、ストリートが折れ曲がっても続いているようだ。

「この線なんだろうね?ボストンに来るとたまに見るけど」

僕が尋ねるとリア様がこれまた自信満々に説明してくれた。

「これはボストンフリーダムトレイルと言って、この線を辿って歩いていくと
 様々な観光地を楽しむことができるという物です」
「へー、それは便利だね。リアさんはもうやってみたの?」
「当然です。……ただし途中で他の子たちがバテてしまい最後まで行けませんでしたが」

リア様何気に体育会系だもんな。靴さえちゃんとしてればどこまででも歩いていけるんだろう。

711: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)19:07:25 ID:KU5(主)
「ここを左に曲がってちょっと歩けばこの前皆で一緒に行った水族館。
 右に曲がると、リアさんにとっては悪い思い出かもしれないけど、ボストンコモンに出るよ」

これまでけっこう広い範囲へでかけたような気になっていたが、
こうして聞くと案外狭い範囲にとどまっているんだな。
それだけ観光すべき場所が密集してるってことかもしれないけど。

「悪い思い出だなんて。私あれから何度もボストンコモンに来てますよ」
「へえ、意外だな。中院さんはこういうとこ興味ないと思ってた」

うん、僕もそう。まあ、第一印象が悪すぎたってのもあるか。

「日本でこれほど素敵な公園となるとなかなかありませんからね。
 都心となるとそれこそ皇居くらいしかありませんもの。
 こんな贅沢な場所に訪れない理由がありません」

なるほど、お金持ちは逆にこういう所を好むのかもしれないな。
僕のばあちゃんちに行けば自然なんてそれこそ360°腐るほどあるんだけども。

712: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)19:17:28 ID:KU5(主)
「じゃあこれからボストンコモンの中を抜けて目的地に行こう!」

ニコラが嬉しそうに歩き出した。そのあとを追ってリア様も楽しそうに景色を眺めている。
なんだか素敵な光景だな。だけど……

「なあ、ケイ」
「どうした?」
「何でおまえスーツなのに汗ひとつかいてないの?」

今は8月の真っ昼間。いくら青森と同じ緯度だからって、暑くないわけがない。
僕もさっきまでスーツを着ていたが、耐えられなくなりとっくに脱いでいる。

「そんなもん気合いで止めるんだよ。役者ならこういう事できるって聞いてるけど?」

そんなことができるのは子供のころからしっかり訓練してる奴だけだよ!
高校演劇を学んだ程度で身に付くスキルじゃない。

「おまえはどうやってそのスキル身につけたんだよ?」
「まあ、紳士たるものこれくらいはね」

ザコ紳士からノーマル紳士へとステップアップするためには、
ものすごく高い壁を越えなければならないようだ。

713: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)19:28:23 ID:KU5(主)
「あー!リス!!」

公園内の木にたくさんのリスを発見したニコラが猛ダッシュでリスに近づいた。
その気配に驚いたリスたちは一斉に人間の手の届かない所へ逃げていく。

「あ~逃げちゃった……」

こんな所を見るとまだまだ子供なんだなって安心する。
ケイが落ち込んでるニコラを励まし、樹上にリスが何匹いるかいっしょに数えだした。

「微笑ましい光景ですね」
「だねー」

714: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)19:37:27 ID:KU5(主)
僕としてはこの光景を微笑ましいと思っているリア様を含めて微笑ましいわけだけども。

「リア様はこれからどこいくかわかった?」
「ええ、もう見当はついてます」
「すごいな!さすがいろいろ観光してるだけの事はある。ちなみに答えは?」
「たぶんチェリマだと思うんですが……ついてのお楽しみですよ」

ちぇりま?なんだか英語っぽくない響きだな。

715: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)19:50:36 ID:KU5(主)
ボストンコモンを抜けるとなんだかきれいな通りに出た。

「ここはニューベリーストリートです。とてもオシャレなお店や建物が並んでるんですよ」

ニコラに先んじてリア様が説明してくれる。

「きっとリアはこういう所好きなんじゃないかと思ってコースに入れておいたんだ~」

おお、そんなことまで考えてくれていたのか。
なんかリア様、今の言葉聞いて感動してるし。

「ああ、ニコラ。私の友人があんなに冷たくあたっていたのに……」
「そんなの昔の事でしょ。気にしないでよ」

そういって太陽のように笑うニコラを、感極まったリア様が抱きしめた!

「ああ、ニコラ。なんていい子なのかしら。日本につれて帰ってしまいたい」
「じゃあいつか遊びにいったらよろしくね」

あれ?リア様別に同性が好きってわけじゃないよね?
マサチューセッツはたしかに同性婚が認められてるけど、
それを狙って来たわけじゃないよね!?

716: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)19:56:33 ID:KU5(主)
なぜだか急速に仲良くなった2人は手をつないで歩き出した。

「おいシュウ、どうなってんだよこれ」

不穏に思ったケイが僕に耳打ちしてくる。

「そんなのこっちが聞きたいくらいだよ。
 そもそもリア様が僕に気があるとかいい出したのおまえじゃなかった?」
「たしかに今でもそう思うんだけど、この光景を見てると自信無くす」

おいおい、頼むよ。おまえの言葉に後押しされて積極的になれたのに
このままでは自信が枯れ果てる。

719: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)20:10:39 ID:KU5(主)
少し歩くとリア様がニコラを連れてオシャレなお店の中に入っていってしまった。
あわてて僕たちも中にはいるが、入った瞬間強烈な匂いに襲われて軽く目眩がした。

「リアさん、ここなんなの?」
「化粧品のお店よ。ニコラってかわいいけど少しも化粧っ気がないでしょ?
 だから似合うのをプレゼントしてあげたくて」

めろめろになって、即プレゼント?リア様あんたちょろいなぁ。

「ニコラに化粧なんて要らない!こんなに若いうちから化粧なんてしたら肌が荒れるだろうが!」

ケイが猛然と講義の意思を示す。紳士にあるまじき態度からするとよっぽど気に食わないらしい。

「たしかにきれいな肌をしてるんだからファンデーションなんて要りませんわね。
 でも女の子なんだからかわいいリップのひとつやふたつ持っててもいいでしょう?」

ここまでは英語。

「それにキスするなら柔らかい唇の方があなたも嬉しいんじゃありません?」

突然の日本語にケイがたじろぐ。
さっきまでかいてなかった汗がドバッと溢れたかのようだ。

720: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)20:22:48 ID:KU5(主)
僕とケイをおいて、女性陣2人は店員さんに勧められるがまま化粧を試しだした。
買う物もない僕たちはただ突っ立ている事しかできない。

店内の冷房で汗がすっかり引いた頃、女性陣が買物を終えてやってきた。
2人の唇は同じ色のリップクリームで薄紅色に染まっている。

「素敵な唇だねニコラ。とてもきれいになったよ!」

あれだけ化粧に反対していたケイが手放しでニコラを褒める。
待ち時間ですっかり紳士ゲージは回復したらしい。

さて、ここは僕もケイを見習って

「……」

やばい、言葉が出てこない。
リア様がキスがどうのというから嫌でも意識してしまうじゃないか!

「あら、同じリップなのにニコラだけを褒めますのね」
「もちろん中院さんも素敵だよ。どうやら美しいバラの園に迷い込んでしまったようだ」

おお、そんな褒め方初めて聞いたぞ。僕の紳士語録に登録しておかなくちゃ!

721: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)20:35:07 ID:KU5(主)
4人で店を出るとケイがこっそり文句を言って来た。

「おい、中院さんを褒めるのはおまえの役割だろうが。何してんだよ」
「すまん、あの唇見てたら言葉に詰まっちゃって……」
「ちっ、ほんとに純情な奴だなぁ……。そのままじゃ何も進展しないぞ?」

え、今舌打ちした?この前までニコラの前では純情そのものだったケイが?

「ケイだってついこの間まではニコラの前でうじうじしてたじゃないか。
 どうやったらそんなに変わるんだよ?」
「シュウが教えてくれたんだぞ?自分の得意分野と結びつければ良いって」

ん?それは英語の身につけかたの話では?

「あれから俺の得意分野は何かって考えた時、それは紳士である事だって気付いたんだ!」
「はぁ?」
「子供のころから紳士たれといろいろ教えられて来たんだけど、その中でも特に大事なことに
 自分を客観視する技術があるんだ」
「それって幽霊になったような視線で、斜め上の方から物事を見られるってこと?」
「俺の場合そこまではできないけど、ちゃんと紳士モードに入ってる時は
 15センチくらい高い所から全体を見渡すような気分になるね」

そんな事できる人がいるとは聞いたことがあったけど、まさかこんな身近にいようとは。

722: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)20:55:14 ID:MKX
>>719

講義×
抗議○
だね

732: 名無しさん@おーぷん 2016/01/10(日)23:53:24 ID:KU5(主)
「それで、シュウの言葉を借りるなら『脳の歯車を動かす』ために、
 英語で喋る時は常に紳士モードでいることから始めたんだ。
 そしたらそれがぴたっとハマってさ。
 今までだったら緊張してたようなことも冷静に対処できるようになったんだよ」

なるほど。僕の役者モードが理想の人格を演じることで難局を乗り切るものだとしたら、
ケイの紳士モードは客観視する事でこれまで積み上げて来た物を冷静に発揮する物なのかもしれない。
こんな歯車の動かし方があるんだなぁ。

733: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)00:03:11 ID:FUv(主)
「それでその紳士モードのままニコラとつきあってたらどんどん上手くいった、ってこと?」
「まあ、そんな感じだな」

なるほど。英語の発展がそのままニコラとの発展につながったわけだ。
ん、待てよ?

「それでケイはいつニコラとキスしたんだ?」
「どうしてそれを知ってる!?」

ああ、やっぱりもう済ませてたのか。
さっきリア様にキスの事を言われて動揺したのは、キスした事がバレてるとでも思ったんだろう。

734: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)00:07:17 ID:FUv(主)
「ニコラに教えてもらったのか?」
「紳士モードになって考えてみれば?」
「おまえと話してる時はなりにくいんだよ」
「へー、それって心を許してくれてるってことかな?」

ケイを挑発するつもりでこんな事を言ってみたら

「ああ、そういう事だな」

とすんなり認められてしまった。

735: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)00:12:17 ID:FUv(主)
「シュウと話してる時は高校のときの友達と話してるような気分になるんだよ。
 いくら女の子と話すのに慣れたって言っても、やっぱり安心できるのは男同士なんだよな」

ケイ……うれしいけどそんなこと人前で言うの絶対やめてね。
うちの腐った姉ちゃんが聞いたらどんな反応を起こすかわからない。

736: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)00:18:34 ID:FUv(主)
「さっきから2人で何をぶつぶつ言ってるんですか?」
「シュウが中院さんがかわいすぎて直視できないってさ」

ちょ、おまえ何言ってんの!?

「あら、それじゃあリップを落とした方が良いかしら?」

くっそ……リア様も悪ノリしてらっしゃる。

「そのままでいいよ、かわいいんだから!」

僕が困ったようにそういうと3人とも笑ってくれた。
この笑顔のためなら道化にでもなんでもなりますよ。

739: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)00:25:24 ID:FUv(主)
化粧品のお店を出てからも前に女子2人、後ろに男子2人の並びがなかなか崩れない。
ケイが果敢に女同士の会話に割り込もうとするが、買ったばかりの化粧品の話題には
さすがのスーパー紳士も対応しきれないようだ。

しかし漏れ聞こえる会話を聞いてると『シュウ』という単語が所々に出てくる。

「ひょっとして僕の事話してる?」
「え?話してませんわよ」
「話してないよねー」

なんだこの予定調和?

740: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)00:29:53 ID:FUv(主)
もう1度耳をすましてみると、今度は「シュウ」の部分をことさら大きく話すようになった。

「ねえ、それやめてくれない?ものすごく気になるんだけど」
「あら、自意識過剰ですわね」
「シュウ、この買物袋よく見て」

ん?買物袋?

shu uemura……?

「アノお店の名前がシュウウエムラなんだよ。ハハハ」

なるほど、そういうことだったのか。
そういえばビのミラもシュウウエムラがどうのと言っていたっけ。
化粧品ブランドの事だったのか。

741: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)00:36:12 ID:FUv(主)
「さあ皆さん、もう少しでつきますわよ」
「ああ、リアにはもうバレちゃってるのか~。
 あのサクランボの看板が今日の最終目的地だよ」

チェリーマート?あ、それを略してチェリマか。
女子はなんでも略したがるよな。カフェテリアのこともカフェテリとか言ってるし。

「それでそのチェリーマートには何が売ってるの?サクランボ?」
「サクランボがおいてあるかどうかは知らないけど、きっとシュウが喜ぶ物だよ」

742: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)00:56:42 ID:FUv(主)
半地下のお店にはいるとそこには日本で見慣れた商品がたくさんおいてあった!

「ここは……」
「日本人向けのお店だよ。皆が喜んでくれると嬉しいんだけど……」
「喜ぶなんて言葉じゃすまないよ!ああ、ニコラ君はなんていい子なんだ!」

ああ、どれもこれも懐かしい!お菓子にインスタント食品、週刊少年ジャンプまでおいてある!

「こんなに喜んでもらえるなんて思ってもいなかったよ。よかった~」

おお、ビデオやDVDのレンタルまでしてる!ガキ使にドラえもん、
わからないタイトルもあるけど、ひょっとしてこれ日本で今放送されてる番組じゃないか!?

743: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)01:02:41 ID:FUv(主)
「心置きなく買物してね」

もちろんそうさせてもらいます!しかし使える金額は極わずか。
今日のデートのために何度もご飯を抜いて来たとはいえ、湯水のごとく使えるわけじゃない。

その点ケイはと言うと目についたものを片っ端からかごに入れていっている!

「ケイ、おまえそんな風に買物する奴だったっけ?」
「せっかくニコラが連れて来てくれたんだから買わなきゃ失礼だろ」

だからっておまえ、そのメイク落としはいつ使う予定なんだよ。

744: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)01:07:37 ID:FUv(主)
リア様はと見てみると、日本から持ってこられたのであろう最新の雑誌に釘付けだった。

「やっぱりリアさんも懐かしい?」
「いえ、私日本ではなかなかこういうお店に入る機会がなかったので」
「え?ここって日本で言えばコンビニのようなものでしょ?」
「はい。ですからコンビニに行く機会がなかなかなかったんです。
 ですから目につく物がどれも面白くって!」

なんてこった。どうやったら日本でコンビニを使わず生活できると言うんだろう。
僕とはとことん生活スタイルが違うんだなぁ。

745: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)01:11:09 ID:FUv(主)
「加納くんはコンビニはよく利用されていたんですか?」
「うん。高校帰り毎日のように寄ってたよ」
「へー、どんな物を買っていたんですか?」
「例えばそこにある飲み物とか……」
「コーラならアメリカでも買えるじゃありませんか」
「そうだね。あとはおにぎりやサンドイッチ……」
「おにぎり!?」

リアさんがおにぎりに食い付いた。

746: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)01:14:26 ID:FUv(主)
「おにぎりがそんなに珍しい?」
「はい。高校の頃男の子たちが食べているのを見ておいしそうだなーって思ってたんです」
「ここにもいくつかあるみたいだから買っていったら?」
「え?でもそれではせっかくの晩ご飯が食べれなくなってしまいます」
「1個くらい平気だよ。食べれなければ……その、僕が食べてあげるし」
「そ、それでは1個だけ……」

そういうとリア様はツナマヨ味を自らのかごに入れた。

747: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)01:25:39 ID:FUv(主)
「ほかには、他にはどんなものを買っていたんです!?」

おお、リア様の目が輝いている。あれ?リア様ここ前に来た事あるんじゃないの?

「前来た時はとてもおにぎりが欲しいだなんて言える雰囲気じゃなくて……」

なるほど。女の子同士でコンビニに来ておにぎりもないか。

「日本のコンビニで買ってた物か~。あ、この季節ならアイスをよく買ってたよ。
 部活帰り、ほてった体にアイスがひんやりおいしくてさ~」

あ、リア様がつばを飲み込んでる。

「あ、ひょっとしてこれがアイスのコーナーですか?」
「おお、懐かしい物がいっぱいだ!」
「どれもおいしそうですね……。加納くんのオススメはどれです?」

おすすめか……、あ、雪見だいふく発見!

「なんですかそれ?」
「雪見だいふくって言って、アイスクリームが柔らかいお餅でくるまれてるんだよ」
「それはおいしそうですね~」
「2個入ってるからリア様もいっしょに食べてみない?」
「よろしいんですか!?」

なにをそんなに驚いてるんだろう。
僕だって人におごる事ぐらいあるっってーの!

748: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)01:31:03 ID:FUv(主)
アイスクリームは最後にかごに入れる事にして、僕たちは買物を思う存分楽しんだ。
大好きな酒フレークやいくら、イカの塩辛なんて物も売っていたが、値段も高いし
なにより米とご飯を炊く環境がないので、泣く泣く棚に戻した。

ご飯と言えば土鍋もこのお店においてあった。もしかしたらジョージさんもここで買ったのかもしれないな。

749: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)01:31:32 ID:FUv(主)
酒……鮭でした

750: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)01:36:54 ID:FUv(主)
結局僕は食材を数点、ジャンプ、そして雪見だいふくとペットボトルのお茶を買った。
カフェテリアには様々なドリンクのディスペンサーがおいてありとても嬉しいのだが
緑茶がないのが少し寂しかった所だ。

リア様は女性向けの雑誌と細々したメイク道具、そしてツナマヨおにぎりを。

ケイはかご一杯のお菓子や食品を買っていた。そのかごの中に僕が日本から持って来たのと
同じカレールーを見つけた時は思いっきり吹き出してしまった。

751: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)01:49:19 ID:FUv(主)
「さて、アイスが溶けないうちに食べたいけど、どこか良い場所あるかな?」
「それならすぐ近くにボストン公共図書館があります」
「え、さすがに図書館で食べるのはまずくない?」
「図書館の中じゃありません。エントランスの前にベンチ状の長い階段があるんです。
 以前地元の人たちがそこで軽食をとっているのを見て少しうらやましかったんです」

そういうわけで僕たちは図書館前の階段で食事をする事にした。

入り口前の階段は僕が想像していた物よりよっぽど長く、これなら食事をしても
人に迷惑をかける事はないだろう。目の前には素敵な公園が広がっているし
軽食をとるにはうってつけの場所に思えた。

「それではさっそくアイスから食べようか、溶けないうちに」
「おお~。確かに見た目はだいふくですね」
「リアさんはこのようじを使って」
「パッケージの中に同梱されているんですね!画期的!でも加納くんはどうするんです?」
「だいふくのいいところは手づかみでも食べれる所だよね」

そういって僕は雪見だいふくを口に含んだ。

ああ、この味だよ。ちょうどいい甘さが口の中にじわ~っと広がっていく。
カフェテリアのアイスクリームも悪くはないんだけど、僕には少し甘すぎる。

「すごい!ほんとにおもちなんですね。なのに中はアイスクリーム。面白いですわ!」

リア様も気に入ってくれたようでなにより!
やはり日本のお菓子やアイスクリームは最強だ。

752: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)01:55:32 ID:FUv(主)
僕たちの横ではケイとニコラがアイスクリームをおいしそうに食べている。
イタリア人の口にも合えば良いんだけど喜んでもらえるだろうか?

「なんだかチープな味わいだね」

ガーン。たしかにイタリアのジェラートと比べたら安っぽい味かもしれないけど。
これはこれでおいしいだろう?

「さっぱりしていて間食にはいいかもしれないね」

うーん、ちゃんとフォローしてくれているが、どうも歯切れが悪い。
やはり人間食べ慣れた物が1番と言う事だろうか。

753: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)02:07:54 ID:FUv(主)
ケイたちがアイスを食べている間に僕たちはおにぎりを食べることになった。

「これは……どうやって開けるんです?」

やはり初めての人にはわかりにくいか。
僕も小さい頃無理矢理開けようとして、ビニールに海苔の大半を持っていかれたことがあったっけ。

僕が開け方を教えてあげるとリア様はキレイに海苔を巻き付ける事に成功した。

「なんて画期的なんでしょう。これでいつでもぱりっとした海苔を楽しめるんですね」

日本人のおにぎりにかける情熱がこんな素晴らしい物を生んだんだね。

「よかったら半分食べていただけませんか?」

僕が同意を示すと、リア様が手ずからおにぎりを半分に割ってくれた。
ぱりっと言う音が耳に心地いい。

どうぞと手渡されるが、リア様の手に触れる事を一瞬躊躇したのがまずかった。
互いの手が触れ合った瞬間におにぎりは重力に身を任せそのまま階段へとダイブしてしまった。
それもツナマヨの面を下にして。

「ご、ごめん……」
「いえ、こちらこそすいません……」

残ったおにぎりを気まずそうに食べるリア様。
ああ、初めてのコンビニおにぎりの思い出は誰しも悲しい運命をたどる物なのか!?

754: 名無しさん@おーぷん 2016/01/11(月)02:09:08 ID:FUv(主)
See you soon, have a nice dream!

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