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360: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)13:20:17 ID:KEY(主)
さて、時間ができたので続き書いていきます!

361: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)13:23:12 ID:KEY(主)
午後3時、授業が終われば後は基本的に何をしても良いことになっている。
留学生集団は初めの2、3日こそ大人しく図書館で宿題を片付けたり、
カフェテリアでお茶を飲んだりしていた。

しかしタクシーの呼び方を覚えた途端、授業が終わると同時に
数台のタクシーを学校に呼びつけ、ボストンの街へと繰り出すようになっていた。






362: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)13:27:43 ID:KEY(主)
一方僕はと言えば、タクシー代を払う余裕がないうえに、
留学生集団から無視されていたので、まだ1度もボストンへ行ったことがない。
だから真由子さんの提案してくれた週末のボストン観光が楽しみで仕方なかった。

363: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)13:28:49 ID:KEY(主)
といっても週末まではまだ時間がある。
さて今日は寝るまでの時間をどうやって過ごそうか。

364: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)13:33:42 ID:KEY(主)
そんなことを考えながら森の小径を歩いていると、
1匹のリスがこちらに背を向けて地面に座り込んでいる。
いつもなら3m以内に近づけばあっという間に逃げていくのに、
今日はあと1mの所まで近づけている!

365: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)13:41:42 ID:KEY(主)
ちょっとしたチャレンジ精神でどこまで近づけるか試してみた所、
なんとリスの真後ろに座れてしまった。
手を伸ばせば届く距離である。
どうやらリスは頬袋の木の実を地面に埋めるのに脳のメモリを全て使っているようだった。

366: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)13:46:18 ID:KEY(主)
「ヘイ、シュウ。そこで何してるの?」

いつものテンションでニコラが元気に話しかけてきた。
あ、これはさすがに気付かれるかな?と思ったら、
リスはまだ木の実を埋めるのに手こずっている。お前の野生はどこに行った?

367: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)13:47:47 ID:H9v
見てるで

368: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)13:48:45 ID:KEY(主)
>>367
サンクス

369: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)13:52:23 ID:KEY(主)
ちょいちょいと手招きしてニコラを隣りに座らせる。
リスに気付いたニコラは思わず歓声を上げそうになるが、自分で自分の口をバッと塞ぐ。
『どういうこと?』と訊きたげに僕とリスを交互に見るニコラの目は好奇心でキラキラと輝いていた。

370: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)14:00:27 ID:KEY(主)
目の前で揺れるモフモフ尻尾の誘惑に逆らえなくなったニコラが、
おもむろにリスの尻尾を掴んだ!

リスは「ギャ!?」っと悲鳴を上げるとニコラの手をかいくぐり、
あっという間に森の奥へと逃げていく。

「あ~~~!!クッソカワイイ!!何アレ?どうしてリスが逃げなかったの?
 ひょっとしてシュウが何かした!?」

371: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)14:04:35 ID:KEY(主)
ニコラの目には僕が動物使いにでも見えたのだろうか。
もちろん僕は何もしてない。
リスが冬のためにエサを蓄えてたのをそっと見ていただけだ。

「だとしてもすごくいい経験ができたよ、ありがとう!」

372: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)14:13:56 ID:KEY(主)
そう言って微笑むニコラをついまじまじと見てしまう。
トーフルのクラスで知っているはずなのに、
森の中で見るニコラはまるで別人かと思うほど美しかった。
その金髪は木漏れ日を吸収し自ら光っているようにさえ見える。
まるでファンタジーに出てくるエルフのようだ。

373: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)14:24:13 ID:KEY(主)
「ニコラは……このあと何するの?」
「うーん、まだ決めてないよ。シュウは?」
「僕もまだ。きみは普段この時間は?」
「えーっと、ランニングしたりジムで運動したりしてるかな」

おっと、このエルフは案外活動的なんだな。

374: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)14:30:02 ID:KEY(主)
「シュウも一緒にどう?男らしくなれるよ」

あれ?遠回しに男らしくないって言われてる?
……たしかに暇な僕には魅力的な提案だが、
あまりに激しい運動をすると夜中の空腹に耐えられないかもしれない。

僕は丁重にお断りした。

375: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)14:38:25 ID:KEY(主)
「えー、一緒にやろうよ、つまんないよぉ!」

とニコラがだだをこねる。

「お前一体何歳だよ」

と言いかけるが、レディに歳を訊くのは御法度だとケイに教えられていたので、
なんとか質問を飲み込んで別なことを訊くことにした。

「普段は誰とやってるの?」
「一人だよ。いっしょに遊んでくれる人いないし」

なんてこった。ここにも僕と同じぼっちがいた!

376: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)14:49:45 ID:KEY(主)
「イタリア人は私一人だけだからかな。あんまり友達いないんだよね」

『あんまり』と言っているが、この様子だと『ひとりも』かもしれない。
よし名誉挽回、僕の男らしい所を見せてやろうじゃないか!

「ニコラ!」
「何?」
「……僕と……友達にならないか?」

377: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)14:53:41 ID:KEY(主)
よし言えた!あれ?日本語で言うよりも英語の方が言いやすいかも。
そもそも僕は今まで自分から「友達になろう」なんて言ったことあったっけ?

378: 名無しさん@おーぷん 2015/12/05(土)15:01:29 ID:KEY(主)
「ねえシュウ。私たちもう友達だと思ってたんだけど……」

そうなの!?つまりさっきの『あんまり』の中に僕が入ってたんだ。
せっかく勇気を振り絞って言ったのに。

「でもシュウが言ってくれたんだから、私も言っておこうかな。
 シュウ、友達になろう!」

こうして僕たちは国を越えた友達となった。

379: 見え県民 2015/12/05(土)15:27:18 ID:knP
続き楽しみです(^ω^)

387: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:06:04 ID:i99(主)
続き書いていきます

388: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:06:34 ID:i99(主)
「あれ、シュウじゃん。それにニコラも!こんなところで何やってるの?」

ケイが洗濯物をもって地下の談話室に降りてきた。

389: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:06:56 ID:wXG
ニコラカモーン!

392: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:12:27 ID:i99(主)
「シュウにプールを教えてもらってたんだよ」
「プール?ああ、ビリヤードか」
「そう、そのビリアルド」

393: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:20:16 ID:i99(主)
お腹を空かせられない僕と、体を動かしたいニコラの折衷案として、
ビリヤードを提案してみたらすんなり受け入れてもらえた。
1度もやったことがないそうでぜひ経験しておきたかったらしい。

「シュウとっても強いんだよ!私まだ1回も勝ててないんだ」
「へぇ……」

ケイの視線が突き刺さる。
いいじゃないか、女の子の前で少しカッコつけるくらい。

395: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:24:10 ID:i99(主)
「ねえ、ケイは何しにきたの?」
「見ての通り洗濯だよ。この部屋の奥がランドリーになってるからね」

驚いたことにケイは一人暮らしに必要なスキルを大抵身に付けていた。
本人曰く、高校からすでに寮生活を送っていたため、狭い部屋にも家事にも慣れっこらしい。

「シュウ、これ洗濯機にぶち込んだら俺と1セットやろうぜ!お前の強さを見せてくれよ」

397: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:30:05 ID:i99(主)
イヤだよ。
そもそも初心者だった僕にビリヤードを教えてくれたのはケイじゃないか。
一日の長で今の所ニコラには勝てているが、未だケイには1勝もできていない。
このままではせっかく築き上げたイメージが崩れかねない。

「さあ、ニコラ。もう遅いし寮まで送っていくよ」
「これからケイとやるんでしょ?それ見たら帰るよ」

398: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:35:31 ID:i99(主)
はぁ。どうしたものか。
このままじゃたった1セットでケイに全てをもっていかれる。
実力で勝つ……のは難しいだろうなぁ。
あいつ不思議な技でボールを曲げたり跳ばしたりするし。

「お待たせ。じゃあやろうか」

くそ、こうなったらお前の引き立て役になってやんよ!

399: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:42:40 ID:i99(主)
「勝負はナインボールでいいよな?」
「オッケー」

そもそも僕はケイからナインボールしか習っていない。
ナインボールとは白い手玉で1~9番までの玉を順に弾いていき、穴に落としていくゲームである。
玉が穴に入ればプレイ続行で、入らなければ選手交代だ。

このゲームの面白い所は、玉を落とした数を競うのではなく、
最終的に9番の玉を穴に落とした方の勝ちであると言うこと。
たとえ1~8番までを順調に落としたとしても、
9番を落とせなければ負けてしまうのである。

401: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:47:51 ID:i99(主)
ブレイクショット(一番最初のショット)はケイが僕に譲ってくれた。
ちなみにこの1回で9番が入ってももちろん勝利である。
だから一見この行為は初心者である僕へのハンデにも思える。

しかしブレイクショットで9番を落とすなんてプロにも難しいことだ(とケイが言ってた)。
つまりこれは僕がどこかでミスを犯す事を前提とした、
ケイの見せかけの優しさなのである!

402: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:52:15 ID:i99(主)
緊張していたせいかブレイクショットでは結局ひとつも落とすことができなかった。
つまりケイの出番である。ケイは優雅なポーズで1番を落とすと次の玉に集中する。
ニコラの方をチラリとも見ていない。
ああ、こんなストイックなところも女子にはカッコ良く映るのかも。

403: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)00:55:06 ID:i99(主)
続く2、3、4番を順調に落とすとニコラが「ケイかっこいい!!」と歓声を上げる。
それでもケイの表情は微動だにしない。はあ、この調子では9番まで落とされそうだ。

諦めかけたその時、ケイが初めてミスをした。5番を落とせなかったのである!

404: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:02:16 ID:i99(主)
よっしゃ、チャンスが巡ってきた!さてどうやって5番を落とそうかな。

「ん?……ケイ、これって」
「おもしろいだろ?」

白い玉と5番を結ぶ直線上に7番がある。
これじゃあ玉を曲げたり跳ばしたりできない僕には5番を狙うことができない!
だからといって7番に当てたりすればファールとなり、
次のケイのターンで好きな場所に白い玉を置かれてしまう。
圧倒的不利!

405: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:05:39 ID:i99(主)
ちくしょう、ここまでして僕の惨めな姿をさらしたいのか?

……こうなったら僕もケイと同じように玉を跳ばすしかない。
確かケイは玉の下の方をついて跳ばしてたはずだ。

狙いをさだめて……そいやっ!

406: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:07:21 ID:i99(主)
玉は勢いよくジャンプした!


そしてそのまま台を越えてケイの手の中にすっぽりおさまった。

「ご苦労様。次はもっとうまくできるよ」

407: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:14:46 ID:i99(主)
そういうとケイは台の上に玉を置き、難なく5番を落とす。
その後6、7、8番を順調に落とし、最後の9番もミス無く落とした。

「ケイすごく強いんだね!」
「まあね。俺はシュウのコーチだから」
「ほんとに!?じゃあ私もケイに教えてもらったらシュウより強くなれる?」
「もちろん。ニコラならあっという間だよ」

くそ、好き放題言ってやがるなぁ。
ケイの紳士め!完璧超人!お前の母ちゃん超美人!!

408: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:17:22 ID:i99(主)
「シュウ、外暗いからちゃんと寮まで送ってあげなよ」

あれ?超絶紳士なケイならきっと自分で送ると思ったのになんか意外だな。
ひょっとして負けた僕に花を持たせようとしてくれてるのかな?

409: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:21:53 ID:i99(主)
僕はニコラを寮まで無事送り届けた。
ニコラは道中ケイの華麗なプレイの話ばかりしていたが、
別れ際に「また遊ぼうね!」と言ってくれた。
よかった、友達関係はこれからもちゃんと続くらしい。

自分の部屋に帰るとケイがトランクスとTシャツのみで音楽を聴いていた。

410: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:24:48 ID:i99(主)
普段はスーツやオシャレ着でびしっと決めてるケイだが、さすがに部屋の中ではこの有様だ。
ファッションリーダーのケイがこの調子なので、寮内の男子フロアは基本的にみんな
トランクスにTシャツ姿で過ごしている。

ケイの影響力恐るべし。

411: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:27:27 ID:i99(主)
「おかえり、シュウ。無事に送り届けられた?」
「もちろん」
「なあ、……ニコラ、俺のこと何か言ってた?」

ん?ケイがこんなこと訊くなんて少し意外だな。
他人の評価など気にしない、絶対の自信をもった男だと思ってたのに。

412: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:29:09 ID:i99(主)
「ケイのスーパープレイに驚いてたよ。あんな風にできたらいいなってさ」
「他には?」
「他?」
「ほら、その、カッコいい……とか」

あれ?ひょっとしてこれ……

413: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:31:20 ID:i99(主)
「ケイ、ニコラに惚れてるの?」
「そそそそんなんじゃねえよ!」

そうだったのか。それにしてもスゴい焦り様だな。

「ケイならすぐに落とせるんじゃない?
 今日のスーパープレイも計算のうちなんでしょ?」
「は、スーパープレイ?な、何の話だよ」

414: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:33:46 ID:i99(主)
「ケイほどのイケメン紳士なら何の苦労もないんだろうな」
「だから何の話だよ!?」

おっといじりすぎたかな。ケイの反応があまりにもおもしろかったから。

「俺、今まで彼女ができたことなんて一度もねえよ……」

え、マジで!?

415: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:36:50 ID:i99(主)
「え、だっておまえ、あんなに女性の扱いうまいじゃん?」
「あれは小さいころから紳士とはそうあるべきだってしつけられた結果だよ」
「じゃあその結果に伴って普通はモテるもんなんじゃない?」
「俺の高校……男子校だったんだ」

あちゃー。そりゃ彼女作れないわ。

416: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:41:21 ID:i99(主)
「紳士であろうとすればスイッチが入って女の子の前でも平気で振る舞えるんだけど
 恋愛対象としてみてしまうと途端にどうしたらいいかわからなくなるんだ……」
「でも、今日のゲームはちゃんと紳士っぽかったぜ?」
「ニコラの声がかかるまではな」
「あ、5番をはずしたとき?」
「そう。あのときはたまたまシュウに不利なとこいったからよかったけど」
「このラッキーマンめ……」

417: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:44:33 ID:i99(主)
「あのあとはひたすらゲームにだけ集中してたよ」
「ぼろを出さないために?」
「ああ……。」

そうか、こんな完璧超人でも僕と同じ童貞なのか。
なんか一気に親近感が湧いてきたよ!

418: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:48:03 ID:i99(主)
「なあ、シュウ。俺どうしたら良いと思う?」
「そうだなぁ……。じゃあ僕がデートのセッティングしてあげようか?」
「え、マジで!?シュウにそんなことできるの?」

何気に失礼だなこいつ。まあ、今の僕に人のこと言えないけど。

「まあ、上手くいくよう祈ってなよ」

419: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:50:48 ID:i99(主)
今日はここまで

See you soon, have a nice dream!

420: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:51:40 ID:sNV
ごくろうさん。久々に楽しかったよ。

421: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)01:58:24 ID:dMw
おつかれさま。また次もよろしく

422: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)03:36:24 ID:ssB
おつかれさま

431: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)17:27:55 ID:i99(主)
続き書いていきます

432: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)17:30:05 ID:i99(主)
僕はさっそく真由子さんに、ボストン観光に外国人の友達を誘ってもいいか訊いてみた。
少し考えるそぶりを見せた真由子さんだったが、すぐにオッケーをだしてくれた。
まあ元の目的が『日本人同士の結束を高める』なんだから考えもするよね。

433: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)17:34:44 ID:i99(主)
ニコラには「週末みんなでボストン観光行くけど一緒に来ない?」
と訊いてみたら、噛み付くような勢いで「行く!」と返事をもらった。
話を聞くと、どうやらアメリカに来てまだまともな観光をしたことがなかったらしい。
おそろいだね。

435: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)17:36:44 ID:i99(主)
このことをケイに話すと「おお、シュウ!おまえすごいな!」
と感極まって抱きついてきた。離せ、僕は男とハグする趣味はない!

436: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)17:39:25 ID:i99(主)
「ケイ、当日は英語オンリーでいくぞ」
「どうしてさ?ニコラの他にも日本人女子いっぱいくるんだろ?」
「だからだよ。ニコラの気持ちを考えてみなよ」
「ニコラの?」

438: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)18:20:19 ID:i99(主)
私ニコラ。イタリア人。初めてのボストン観光で母国語が通じる人は誰もいない。
日本人が一緒に来てくれたんだけど、ずっと日本語ばかり話している。
たまに英語で話しかけてくれるけど、すぐに他の女の子と日本語で喋りだしてしまう。

「どうよ?」
「最悪だな」
「だろ」
「お前の演技が」
「おい!」

439: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)18:25:53 ID:i99(主)
「まあ、僕の演技はおいといて。これが英語オンリーだったとすると」

私ニコラ。イタリア人。初めてのボストン観光で母国語が通じる人は誰もいない。
でも日本人が一緒に来てくれて、ずっと私にあわせて英語で話してくれている。
なんて素敵な人だろう。
たまに日本語で話しかけてくる女の子がいても、私との会話を優先してくれる。
何でこの人はこんなに優しくしてくれるのかな……ドキン

「おお!いいな、それ」
「だろ?」

440: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)18:27:40 ID:i99(主)
「あ、でもシュウが同じように英語で喋ってたら意味ないんじゃないか?」
「そんな野暮なことはしないよ。僕はできるだけ日本人と話すようにするから、ニコラの相手は頼んだぞ」
「ああ、任せてくれ!」

よし、これで当日は気兼ねなく真由子さんとお話しできるぞ!

443: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:25:28 ID:i99(主)
ボストン観光当日、待ち合わせ場所である寮の前には、すでにケイとニコラがいた。
英語で何か話しているようだがケイの方が少し固い。
紳士モードなら無敵なやつも恋愛モードになると僕より奥手になるようだ。
これが男子校で寮生活を送った者の定めか。

「シュウ、おはよー!」

ニコラが元気に話しかけてくる。
まあ、挨拶くらいはしといたほうがいいだろう。

「おはようニコラ。調子どう?」
「調子良過ぎて朝5時に起きちゃった」

そんなに楽しみにしてくれてたのか。
誘ったかいがあるというものだ。
おっとケイ、そんな恨みがましい目で見るなよ。わかってるからさ。

444: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:25:51 ID:i99(主)
「ニコラが嬉しいと僕まで嬉しくなるよ」
「それは光栄だわ」
「そういえば、ニコラが観光に参加するって言ったらケイも嬉しそうにしてたよ」
「ケイが?」
「なんかイタリアに興味があるみたい。よかったらいろいろ教えてあげてよ」
「オッケー。ケイとも友達になれたらいいな!」

よし、チャンスは作ってやった。あとはお前次第だぞケイ!

さて、真由子さんはどこかな~?

445: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:31:35 ID:i99(主)
「ちょっと」

あれ、真由子さんまだ来てないのかな。
今日はどんな格好してくるんだろう?私服姿楽しみだな~!

「ちょっとそこの!」

だれかさん、呼ばれてますよ?

446: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:33:43 ID:i99(主)
「ちょっと、加納くん!?」

あ、僕ですか?
何の用でしょう、女子グループ最大派閥のリーダー、中院凛愛(なかのいんりあ)さん。
僕は皆さんから無視されてるんじゃありませんでしたっけ?

447: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:36:49 ID:i99(主)
「なんで外国人がこの旅行に紛れ込んでるのかしら?
 あれ、あなたの友達でしょ」

無視してた割によく知ってますね。

「そうだよ。ボストン観光したことないって言うから誘ったんだ」

448: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:40:42 ID:i99(主)
「この旅行は日本人同士が仲良くするためのものじゃなかったかしら?
 そこに外国人を連れてくるなんて、あなたもっと空気を読んではいかが?」

言ってろ。真由子さんには悪いけど、僕にとって日本人同士の親睦なんて正直どうでもいい。
僕が望むのはケイとニコラが仲良くなること、そして僕と真由子さんが仲良くなることだ。

450: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:44:07 ID:i99(主)
「ねえ、あなたからあの子に来ないように言ってきてくださらない?」
「は?なんで誘った本人がそんなこと言わなきゃいけないのさ?」
「あなたが言えば一番穏便にすむでしょう?」

うーん、この思考回路どうなってるんだろ?
世間のお嬢様ってみんなこんな感じなんだろうか。

451: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:47:28 ID:i99(主)
「とにかく僕から言うことは何もないよ。
 そんなに嫌なら中院さんから直接言えば?
 『日本人の親睦会なんだからあなたは出てってくれるかしら?』って」
「くっ……」

まあ、無理だよね。素敵なケイくんの前でそんな嫌な女を演じるのは。
ケイがニコラと一緒にいる限りこいつらは文句を言うことすらできない。
我ながら完璧な計画!

452: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:50:23 ID:i99(主)
「はあ?あんたちょっと調子乗ってない?」「自分の立場わかってるの?」

おっとこれは計画外。中院の取り巻きがあらわれた!

きっとケイがこの現場を見ていたら助けてくれるんだろうが、
あいつニコラにメロメロでやんの。お幸せに!ここは自分で切り抜けねば。

453: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:51:51 ID:i99(主)
「僕の立場?そんなものがあったんだ。ねえ、よかったら教えてくれない?」
「は?なにいきってんの?そんなもん自分で考えな!」

『いきってる』って何?日本語?
ああ、こいつらと話すくらいなら外人さんと話す方が100倍いい!

454: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:54:09 ID:i99(主)
「自分で?僕が考えるに僕たちの立場になんら違いはないはずだよ。
 だってここは自由の国アメリカなんだし」
「はぁ!?」「ふざけんなよ?」

おーおー、顔真っ赤。こいつらに恨まれて失うもんなんか僕には何もない。
どうせ3ヶ月だけの同級生だ。そっちがやる気ならこっちも徹底抗戦してやるよ!

455: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:56:31 ID:i99(主)
「あなたたち、やめなさい。加納くん、この子たちが失礼なこと言ってごめんなさい」
「リアさん!?」「悪いのはコイツじゃないですか!」

うわ、こいつら小物臭が漂ってるよ!反対にリアからは妙な余裕を感じる。

456: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)20:58:04 ID:i99(主)
「私はただ、日本人同士の親睦と聞いていたから趣旨に合わないと思って忠告しただけなのよ。
 他意はないわ」

さっきまでケイに話しかけられなくて未練タラタラって顔してたのに、
今はもうお嬢様の顔に戻ってる。すごい。

457: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)21:00:29 ID:i99(主)
「だから加納くんもこれ以上この子たちを挑発するようなことは言わないでくださいね」
「は?何を言って……」
「あら高岡先輩、いらっしゃったんですか。おはようございます」

え、真由子さん!?ひょっとして今のいざこざ見られてた?


僕の慌てる姿を見てリアたちがニヤっと笑ったような気がした。

458: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)22:23:34 ID:jQx
今までの登場人物の名前の由来とかあるのかな?
音が似ているとか適当とか

459: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)22:24:18 ID:i99(主)
>>458
イメージのしやすさとか、元をもじったりとかいろいろです

460: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)22:26:13 ID:jQx
>>459
おお、即レスありがとう
そうなのか、結構覚えやすい名前が多かった気がするから、気になってしまった
イメージしやすい名前が多くて助かります

461: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)22:35:45 ID:814
リアさんは縦巻きで脳内再生されたwww

462: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)22:39:32 ID:i99(主)
>>461
なるほどwww
そのイメージでかまいませんよ

463: 名無しさん@おーぷん 2015/12/06(日)22:48:47 ID:HX0
続きはまだかしら?

467: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)00:31:43 ID:Esi
アニメタイムかな?

469: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)07:15:43 ID:aoH
うーん、朝には続き読めるかと思ってたが...
楽しみに待ってるよ

477: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)19:38:44 ID:40x(主)
「おはようございます、真由子さん。今日はよろしくおねがいします」

できるだけ何もなかったかのように振る舞いながら挨拶をしてみる。
しかし真由子さんのいぶかしげな表情を見ればそんな努力は無駄だとすぐにわかった。

「ねえ、大丈夫?何かあったの?」

僕とリアたちを見比べながら訊いてくれるが、僕が大声を出した分向こうに気持ちが傾いているようだ。

「いえ、ご心配なく。ちょっとしたすれ違いがあっただけですから」

478: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)19:48:27 ID:40x(主)
リアがすまして答える。
「こんな庶民の戯れ言には付き合ってられない」とでもいいたげな顔に見えるのは自虐がすぎるだろうか?

真由子さんが背中にやたら大きなバッグを背負っているので、
ポイント回復のためにも紳士的な行動を試みる。

「ずいぶん大きな荷物ですね、もちましょうか?」
「大丈夫よ、ありがとう」

紳士失敗。
ケイならうまくやるのかなとふと目を向けてみるとすでにニコラのカバンをもっていた。
いったいどうすればそんな自然に荷物が持てるんだろう。
大学にあげるまでになんとしてでも聞き出さねば!

479: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)19:55:27 ID:40x(主)
「そんな大きな荷物を持ってどこに案内していただけるのでしょう?」

言ってることはまともなのに、どうしてリアが言うとこんなにも嫌みに聞こえるのだろう。
ええい、こんなことでいちいち動揺してたら真由子さんとの楽しい観光なんてできないぞ、
切り替え、切り替え!

「この荷物?きっとみんな気に入るから。さあ、バスに乗り込んで!」

480: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)20:03:16 ID:40x(主)
日本人集団がどんどんバスに乗っていく。
真由子さんの近くに座りたいので最後に一緒に乗り込もうと思ったら、同じことを考えているやつがいた。

「これまでなかなか高岡先輩と話す機会がありませんでしたし、お隣よろしいでしょうか?」

リアたちのグループだ。
やつらはバスに乗り込むと真由子さんを窓際に追い込み、その周囲に取り巻きが、隣りにリアが堂々と座った。
僕が唖然としてみていると、「どうだ!」とばかりに取り巻きがニヤニヤしている。
僕は仕方なく通路を挟んでリアと同じ列に座った。

481: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)20:09:55 ID:40x(主)
一行を乗せバスは校外へと走り出す。

「学校のバスでボストンまで連れて行ってくださるなんて気が利いてますね」

いつもタクシーでボストンまでいく彼女たちでもそんなことを思うのか。
それともこれも嫌みなのか。

「あ、このバスはすぐそこの駅までしか行かないわよ」

そう、このバスは毎日定期的に駅まで学生を迎えにいくシャトルバスだ。
断じておまえらのために雇ったものじゃない。

「ではどうやってボストンまで?」
「もちろん電車でよ?」
「電車……ですか……」

おや?リアの顔色が少し悪くなった気がする。

482: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)20:15:57 ID:40x(主)
「ひょっとして……中院さんは電車乗ったことないとか?」

リアの背筋がピクンと伸びる。どうやら図星をついたらしい。

「そ、そんなことありませんよ……。
 そうだ!修学旅行の際、新幹線に乗ったことがあります!」

え、そこドヤ顔するとこ?

483: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)20:24:41 ID:40x(主)
「高岡先輩はよくこういった物をお使いになるんですか?」
「お使いになるも何も、ボストンに行く時は大抵電車を使うかな」

ボストンは公共交通機関が結構充実しているらしい。
真由子さんは車の運転が苦手なため、バスや電車の乗り継ぎに詳しくなったそうだ。

「ずいぶん使い慣れていらっしゃるんですね。本日はよろしくお願いしますね」

あ、今完全に見下しただろ!

484: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)20:31:30 ID:40x(主)
「たしか、ボストンでは切符じゃなくてトークンって言うコインを改札にいれて駅に入るんですよね」

僕は通路越しに勉強してきたボストンの電車事情を語ってみた。
邪魔するのなら無理矢理会話してやる。

「よく知ってるわねシュウスケ。たしかに去年まではそうだったよ」

え?去年まで?

485: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)20:35:29 ID:40x(主)
「トークンって言うカワイイコインを買ってね、それを遊園地のゲートみたいな機械に入れると
 一人だけ通ることができたんだ。私アレ好きだったのに、無くなっちゃって残念」

先輩との2人きりの会話だったらこんな失敗もありだろう。
しかし周りの連中が「知ったかぶり」「クスクス」など言ってる状況では
とても楽しめそうにない。

486: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)20:43:37 ID:40x(主)
駅に着くと緑色の看板が僕たちを出迎えてくれた。

「これはグリーンラインの看板。ラインっていうのは日本の路線みたいなものね。
 中央線とか、京王線とか」

なるほど、路線図を見るとボストンを中心に様々な色の線が放射状に延びてる。

「もしボストンで迷子になっても、このグリーンラインに乗れば帰って来ることはできるから
 心配しなくていいからね。駅の色が目印だよ」

ほう、それはわかりやすい。しかし真由子さん、ここにいる連中のほとんどは
もう二度と電車に乗らないかもしれません。

487: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)20:51:29 ID:40x(主)
トークンの代わりの磁気カードを購入し、僕たちは電車に乗り込んだ。

「リアさん、椅子がプラスチックです!」「これではお尻を痛めてしまいます」

あ、言われてみればたしかに。しかし学校の椅子だってプラスチック製なんだから
ここで文句を言うのはお門違いだろ。

「学校の椅子だってプラスチックですわ。皆さん、これがカルチャーギャップというものです
 公共の場ですから、もう少し静かにしましょうね」

まさかリアからこんなセリフがきけるとは!あれ?案外こいついい奴なの?
なんかわからなくなってきた。

488: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)20:58:35 ID:40x(主)
目的地で降りると、すぐそこに広大な芝の公園が広がっていた。
こんな規模の公園、日本ではなかなかお目にかかれない。
いったいどれぐらい広いんだろう!

「みんなー、ここが有名なボストンコモンです。今日はここでみんなで遊びましょう!」

「遊ぶってなにするんですかー」とチャチャが入る。
たしかに素敵な場所だが、ここでできる遊びと言えば鬼ごっこや泥警なんかだろうか。

493: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)22:51:07 ID:40x(主)
「よっこいっしょっと」と言いながら真由子さんは背負っていた荷物をおろした。
どこかで「庶民」がどうとかつぶやく声が聞こえるが気にしない。気にしない!

「さあ、バドミントンのラケットに、サッカーボール、バレーボル、
 いろいろもってきたよ!みんな何がやりたい?」

どうりで大きな荷物になるわけだ。帰りは絶対もってあげなくちゃ。
さて、真由子さんとやるならなにがいいだろう?やっぱり2人でできるバドミントンかな?

494: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)22:54:41 ID:40x(主)
「ラケットふたつ貸してください」

真っ先に言い放ったのはケイだった。
どうやらニコラと2人きりの世界に引きこもるつもりらしい。
うん順調順調。あ、そうだ!

「先輩、僕たちでチームつくってケイたちとダブルスやりませんか?」
「いいわね!ケイたちもそれでいい?」
「オフコース!」

495: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)22:59:09 ID:40x(主)
これは重畳!チームで闘えば連帯感が生まれて、いずれはそれが……、フフフ。
よし、バドミントン県大会ベスト4……の姉ちゃんに鍛えられたバドミントンの腕前、
いっちょみせてやろうじゃないの!


「すいませーん、高岡先輩。私たちこんな事するなんて聞いてなかったんですけどー」

496: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)23:05:22 ID:40x(主)
う、さっそくリアの軍団からいちゃもんがつく。
まあ、奴らからしたら当然の反応か。
スポーツをやらされそうになっている上、ケイとも遊べそうにないんだから。

「私たち、観光名所に行けると思ってついてきたんです。
 このヒールでどうやってスポーツをすればいいんでしょうか?」
「せっかくオシャレしてきたのに汚れるのはちょっと」
「日焼け止めも塗ってないのにこんな所に長くいられませーん」

497: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)23:11:09 ID:40x(主)
「ご、ごめんなさい……」ああ、真由子さんが謝っている。
確かに事前にちゃんと説明しなかったのはまずかったと思う。
しかしだからといってそろって責め立てるのは間違ってないか?間違ってるよね。

「おまえら、そんな言い方ないだろ!」

口論するなら1度も2度も変わらない。さあかかってこい、第2ラウンドだ!

498: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)23:12:46 ID:40x(主)
「加納くんは本当に高岡先輩が大切でいらっしゃるのね」

グハァッ!?

突然リアのカウンターがぼくを襲う!まさかそんな切り返しをしてくるとは。

499: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)23:19:27 ID:40x(主)
「そ、そりゃあ同じ大学の先輩だからな」
「ええ、もちろんそうなんでしょう。
 それにしてもラケットを握りしめる姿がお姫様を守るナイトのようですね」
「な……」

何でぼくが恥ずかしがっているんだ?
恥ずかしがるべきはあんなセリフを言い放つリアの方じゃないか?
どうなんだ?よくわからなくなってきた。パンチをもらいすぎた。

501: 名無しさん@おーぷん 2015/12/07(月)23:24:33 ID:40x(主)
「高岡先輩。私たちスポーツをする用意が整っておりませんので、今日は失礼させていただきます」
「そ、そう……。じゃあ私が学校まで……」
「結構です。みんなでショッピングをしたらタクシーを拾って帰りますので。
 スポーツの方はいずれジムでお手合わせください。それではごきげんよう」

ごきげんようってホントに言うんだ……

506: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)03:39:22 ID:uqU(主)
結局公園に残ったのはぼくと真由子さん、ケイとニコラの4人だけだった。ニコラにまで気まずい空気が伝わったのか、いつもの明るさがどこにもない。僕がなんとかこの空気を変えなくては!

「先輩、ほら、バドミントンやりましょうよ!ケイとニコラはそっちな」
「おう、オッケー」「カモーン!」
「……ごめんなさいね。私がふがいないばっかりに」

だめだ、すっかり落ち込んでる。

507: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)03:40:44 ID:uqU(主)
「ニコラはバドミントンやった事あるの?」
「あるよー!絶対負けないんだから!」
「でもネットもないし、スマッシュは禁止ね」
「えー、それじゃあ面白くないよぉ」
「だからさ、こんな特別ルールで……」

508: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)03:42:44 ID:uqU(主)
「アメリカに来て驚いた事!」スパン!

僕がお題を出すと同時にシャトルがケイの上に落ちていく。

「料理がうまい!」スパン

もっとまずい物を想像していたと前に言ってたっけ。
シャトルが僕の上に返ってくる。

509: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)03:46:09 ID:uqU(主)
「シャワーが動かない!」スパン!

アメリカのシャワーにホースなんてついていない。
壁からシャワーヘッドが生えている。
だからお尻を洗いたい時はお尻をシャワーに向けるしかない。

シャトルはニコラの方へと流れていく。

510: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)03:50:17 ID:uqU(主)
「日本人が優しい!」スパン

光栄です。これから先もいろんな国の人と仲良くなれたらいいな!
今度は真由子さんの方に行った!

「お金持ちがいっぱい!」ズバンッ!

これはお金持ち留学生の事だろうか。うーん、すごい滞空時間。
シャトルは2人の間に落ちそうだが、ケイが「任せろ!」と一歩踏み出す。

511: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)03:54:01 ID:uqU(主)
「教室の机!」スパン

たしかに椅子と一体になっているプラスチックの机には僕も驚いた。

「その裏のガム!」スパン!

ニコラが僕の答えを聞いて笑っている。それでちゃんと答えられるのか?

「たくさんのリス!」カコン

おっと、フレームに当たった。
ここでゲームセットか?

512: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)04:00:48 ID:uqU(主)
「ごきげんようってホントに言うんだね!」ズバシッ!!

最後は真由子さんがおもいっきり場外ホームランして終了。
彼女の発言にケイが思わず吹き出す。
釣られて僕も、そして真由子さん自身も笑い出す。

日本語だったせいでニコラは何が面白いのかわかってなかったけど、
ケイが英語で「ごきげんよう」を説明するうちに彼女もまた笑い出した。

513: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)04:08:11 ID:uqU(主)
「ありがとう。おかげで元気出たよ」

そう言う真由子さんの顔は、どこかさみしげなんだけど、エネルギーに満ちあふれている。
お役に立てたなら幸いです。

この日を境に僕たちは4人でボストンに繰り出すようになった。

514: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)04:15:16 ID:uqU(主)
それでは今日はこの辺で。
皆さんもこたつでの睡眠は十分にお気をつけ下さい。

See you soon, have a nice dream.

515: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)06:17:55 ID:tEt
またこたつで寝落ちかww風邪ひくぞー

523: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)18:43:15 ID:uqU(主)
みなさん感想・校正ありがとうございます
今日もまったり始めていきます

524: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)18:52:21 ID:uqU(主)
~留学生の大学受験~


僕たち留学生が受けるテストは主に2つある。トーフルとSATだ。

トーフルは「外国語としての英語のテスト」で留学生全員が受ける物だ。

一方SATは「大学進学適性試験」のことで、これは留学生のみならず、
アメリカの大学進学希望者全員が受ける物のようだ。
その内容は「筆記」「小論文」「数学」の3つから構成されている。

525: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)19:01:04 ID:uqU(主)
SATは6月におこなわれるということだが、いつ対策を練るのだろう……。
そんなことを思っていたら、あっという間にSAT本番当日がやってきた。

「高岡先輩、これどういうことですか?」「私たちなんの勉強もしてないんですけど」

案の定留学生一同から質問を浴びせられる真由子さん。
今日はテスト会場までのバスガイドをしてくれている、かわいい。

526: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)19:15:57 ID:uqU(主)
「みんな、そんなにぴりぴりしなくていいのよ。
 このテストは留学生にとってはほとんど形だけのものなんだから。
 よっぽどひどい点を取らない限り大丈夫!」

うーん、もしそのよっぽどを取ったらどうすればいいでしょう?
英語は何とかなるとしても、実は僕、数学がちょっとやばいんです。
なんせ高校の数学の成績は下から数えた方が断然はやかったんですから。

「みんなはトーフルの事だけ考えてればいいからね。今日は気楽にやりましょう」

真由子さーーーーーんっ!!

527: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)19:23:46 ID:uqU(主)
SATの筆記試験が始まった。
数学で取れない分をここで挽回しなければ行けない!いざ、勝負!!

……あれ?なんだこれ?けっこう……いや、かなり難しいぞ。
トーフルとかぶるような問題はまだ何とかなるが、
何を聞いているのかすらわからない問題まである。

結局筆記と小論文では思うような結果が出せなかった。
これはひょっとしてトーフルの結果が出る前に浪人決定!?

528: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)19:26:39 ID:uqU(主)
さて、最後の数学は……っと。ああ、当然だけど問題文まで英語なのか。
ちょっと新鮮。……あれ?数学の問題を英語で考えるのってなんか面白いなぁ。
ん?よく見るとこの問題ずいぶん簡単じゃないか!

これなら数学で挽回できるかも!!

529: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)19:33:16 ID:uqU(主)
テストが終わり、帰りのバスに乗せられた留学生一同の雰囲気は暗い。
どうやら上手くいかなかったのは僕だけじゃないようだ。
「どうだった?」と確認しあう風景は、庶民の学校と少しも変わらない。

「シュウ、お前はどうだった?」

ケイが女子の群れを離れて僕の所へやってきた。
人気者はこんな時でも人が集まるんですね。

530: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)19:38:50 ID:uqU(主)
「僕は……筆記の方は最悪だったよ。小論文はやや最悪」
「やや最悪ってなんだよ。俺はけっこう手応えあったぜ」
「マジで?そういえば最近、無駄に模擬トーフルの結果よくなってるもんな」
「無駄って言うなよ。実際こうして役立ってるんだから。
 でも数学は全然だめだった。日本語でなら何とかなるのに!」

あれ?僕と真逆の感想?同じテストを受けたんだよね……?

531: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)19:43:05 ID:uqU(主)
後日、SATの結果が学校で発表された。
なんと今回のテストで合格基準を下回ったやつはだれもいなかったらしい。
真由子さんが『よっぽどひどい点を取らなければ大丈夫』と言ってたのは本当の事だった。

534: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)19:54:10 ID:uqU(主)
「さて、この中で筆記のスコアが1番高かったのはケイ、君だ」

ホワイト教授が嬉しそうにケイを褒める。

「ケイはすでにトーフルに合格してるのに、ここに来てさらにスコアを伸ばしている。
 彼ならやってくれると思ってたよ!」

僕ならこんなに手放しで褒められたら恐縮して赤くなるに違いない。
しかしケイは胸を張り、そんなの当然ですよと言わんばかりの態度で教授と握手を交わしていた。

535: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)19:59:45 ID:uqU(主)
「小論文のトップは、ニコラ、あなたよ」

文化風習のクラスで教鞭をとる先生がニコラを撫でながら褒めている。

「あなたはイタリア人であることを自分のアイデンティティとして、
自分自身のオリジナリティ溢れる意見をいうことができるわよね。
そう言う所が今回のスコアにつながったんでしょう」

先生は感極まったのかニコラとハグをかわしていた。
こういうシーンでもそういうことするんだね。女性とだったらやってみたいかな。

537: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)20:18:59 ID:uqU(主)
「そして、数学の成績が一番よかったのは、シュウ!アンタだよ!」

え、僕!?何かの聞き間違いかと思ったが、たしかにパメラが「こっちおいで」と手招きしている。

「シュウはアメリカの高校生と比べても、非常に良い成績をはじき出した!
 こんな能力を今まで隠してるなんて!アンタはほんとにシャイボーイだねぇ!」

そういってパメラは僕を引き寄せ、驚くような強さで抱きしめた!
たしかに女性とハグしてみたかったけどなんか違う!

……でも、抱きしめられている箇所からエネルギーが伝わってくるようなこの感触、悪くない。

「さあみんな!明日はトーフルが待ってるよ!残り3回あるうちの貴重な1回だ!心してかかるように!」

539: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)20:32:25 ID:uqU(主)
「すごいじゃない!おめでとう!!」

お昼にカフェテリアで真由子さんに数学のスコアの話をしたら我が事のように喜んでくれた。
さすがに日本人同士でハグはなかったけど。

「それじゃあお祝いをしないとね……。そうだ!今夜空いてる?」
「もちろんです!」

540: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)20:46:16 ID:uqU(主)
もちろん、今夜はトーフルの勉強をする予定だったが、
真由子さんからのお誘いを僕が断るわけがない。

「それじゃあ詳しいことはまた後で」

そういうと真由子さんはコーンに乗せたアイスクリームを
人に見られないようにしながら仕事へと戻っていった。

541: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)20:57:07 ID:uqU(主)
夕方、寮の一室でトランクスとTシャツの男2人が、もんもんと語り合っている。

「どうしようケイ、真由子さんが『今夜空いてる?』……って」
「そりゃおまえ……デ、デートに誘ってるんじゃないの?」
「やっぱりそういう事なのか!?」

僕が真由子さんに気がある事はケイにいつのまにかバレていた。
まあこれでお互い公平に恋バナができる。

542: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)21:04:11 ID:uqU(主)
「デート以外に何があるんだよ……。よかったな」

あれ、なんだか悔しそうなのは気のせいかな?
ケイだってニコラといい感じなんじゃないの?

「そういうケイはニコラと最近どうなの?」
「俺は……また一緒に遊ぼうねって言われたけど……」
「へえ、いつの間に」
「いつって、この前ボストンコモン行ったとき」
「え!?それってけっこう前じゃん。今まで何してたんだよ」
「だってSATがあっただろ、それで……」

コンコン。男同士の暑苦しい会話はノックで遮られた。

543: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)21:07:15 ID:uqU(主)
部屋の鍵は基本的にオートロックだが、男子の出入りがあるこの部屋は
鍵がかからないように、ドアの下にストッパーがかませてある。

「開いてるよー」

ケイが英語で言い放つと「失礼しまーす」と真由子さんが入ってきた!

544: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)21:12:57 ID:uqU(主)
入ってきたのが女性だとわかるや否や、シーツで体を隠すケイ。
おまえ中身は乙女かよ。顔を真っ赤にしながらクローゼットの
影に隠れようとするケイの姿に、いつものカリスマ性は皆無だった。

一方僕は姉ちゃんの前ではいつもこんな格好だったし、
高校の頃入っていた演劇部ではもっと恥ずかしい格好をする事もあったので
とくに慌てる事も無く対応できた。

545: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)21:18:28 ID:uqU(主)
「いらっしゃい真由子さん。どうやって男子エリアに入ったんです?」
「アハハ、これはメンターの特権だよ。ケイの貴重な姿を見れちゃった」

僕としては薄着男子を見て恥じらう真由子さんも見てみたかったが、
もしそうなったらセクハラとして問題になったかもしれない。痛し痒しだ。

546: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)21:22:34 ID:uqU(主)
「ところでもう晩ご飯食べちゃった?」
「いえ、いつも通り夜は飯抜きです」
「こいつ寝ながら腹鳴らしてるんですよ」

ケイうるさい!っていうかそれマジ?なんかごめんね。

547: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)21:26:34 ID:uqU(主)
「じゃあ外で晩ご飯食べない?」
「喜んで!」
「よかったらケイも一緒にどう?」

え?ひょっとしてこれデートじゃなかったの?

548: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)21:33:54 ID:uqU(主)
「ケイもSATで高得点取ったんだよね。そのお祝いに……」
「残念ながら俺はもう食べちゃったんで、2人で行ってきてください」

おお、ケイ!晩ご飯まだなのに僕に気を使ってくれたんだね!ナイス紳士!

「そう?じゃあ7時前にバス乗り場に来てね」
「わかりました」
「あと、女の子が部屋に来た時は……ううん、なんでもない」

そういうと真由子さんはそのまま男子フロアを後にした。
恥ずかしがる先輩、やっぱりかわいいね!

550: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)21:44:29 ID:uqU(主)
「はあ、お前は順調に行っててうらやましいな」

このモテ男は何を言ってるんだか。
まあ、好きでもない子から言いよられても迷惑なだけなのかもね。
経験がないからわからないけど!

555: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)22:01:22 ID:uqU(主)
「そうだ、今週末にでもデートに誘ってみれば?
 トーフルお疲れさまってことで」
「ああ、それいいな!でもニコラだけを誘うって変に思われない?大丈夫?」
「あいては愛の国イタリアの出身者だぞ?何も問題ないって」
「そうは言ってもなぁ……。なあ、今回も前みたいに4人で出かけるわけにはいかない?」
「ダブルデートか……。それなら僕も参加できるけど……うーん、どうしようかな」

556: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)22:04:20 ID:uqU(主)
「もし一緒に来てくれるならディナーをおごってあげよう!」
「行きます!!」

ケイに良いように操られてるかもしれないけど、
僕だって真由子さんとデートできるにこしたことはない。
さっそく今日のディナーで誘ってみるか!

557: 名無しさん@おーぷん 2015/12/08(火)22:07:49 ID:uqU(主)
続きはまた明日

See you soon, have a nice dream!

574: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)13:46:17 ID:1AE
>>548
まゆこさんは何を言いたかったんだろう?
ちょっと分からなかった

578: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)19:11:01 ID:Sjh(主)
>>574
女の子が来たらパンツ姿はまずいよ
ってことですww

579: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)19:12:04 ID:Sjh(主)
それでは>>556の続きをまったり書いていきます
今日もよろしくお願いします

580: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)19:17:35 ID:Sjh(主)
学校のシャトルバスは何も駅との間だけを往復するわけではないようだ。
近所のショッピングモールや郵便局にも寄ってくれる。
そして夜にはレストラン街などにも行くとのことだった。

うーん……手持ちが心許ないけど大丈夫だろうか。
いざとなれば日本で作ってきたカードがあるけど、できる限り節約したい。
そんな事を考えながらバスを出て歩くこと数分、僕たちは小さな中華料理屋にたどり着いた。

582: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)19:27:43 ID:Sjh(主)
「あ、シュウスケは中華平気?」
「はい。大好物です」
「よかったー。ここの中華はね、台湾出身のおばちゃんが作ってくれるチャーハンがおいしいんだ」

お店の中にはいると様々な香辛料と揚げ油の香りが押し寄せてきた。
ああ、久しぶりだなこの感覚。高校生の時下校途中に寄った餃子のお店がこんな匂いだったっけ。
そう思ったら一気にお腹がすいてきた!

583: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)19:30:22 ID:Sjh(主)
「チャーハンはコンボについてくるから、メインとサイドメニューを選ぶんだけど、食べたいものある?」

そういって渡されたメニューには英語で品名が書いてあるだけで、いまいち料理がイメージできない。
日本の写真つきメニューって親切だったんだなぁ。

「うーん、何たのんだらいいかわかりません」

584: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)19:40:39 ID:Sjh(主)
「シュウスケの好きな中華料理は?」
「えーっと、酢豚とか春巻き……あ、このスプリングロールってひょっとして春巻きの事ですか?」
「そうよ。よく見つけたわね」

なるほど、英語を漢字に直せばある程度メニューがわかるかもしれない!
じゃあ酢豚ならビネガーポーク?

585: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)19:45:10 ID:Sjh(主)
「でもここで春巻きが食べたいならスプリングロールよりエッグロールがおすすめね」
「エッグロールですか。どう違うんです?」
「うーん、お店によっても違うんだけど、
 ここではスプリングロールは中身がキャベツなんかの野菜がメインで、
 エッグロールはお肉が入ってるね。私はエッグロールの方が好き」
「じゃあエッグロールで!酢豚はビネガーポークとでもいうんですか?」

586: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)19:50:45 ID:Sjh(主)
「ビネガーポーク?ああ、たしか酢豚って日本でできた言葉じゃなかったっけ」
「え、そうなんですか?」
「ここで酢豚と似たような物が食べたいなら……
 ベイジン スタイル フライド ポークがオススメだよ」
「米人スタイル?アメリカ人向けってことですか?」
「違う違う」

何か変なことでも言っただろうか?真由子さんが必至で笑いをこらえている。

587: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)19:58:42 ID:Sjh(主)
「ベイジンはペキンの英語読み。つまり北京風ってことだよ」

なるほど。北京ダックならぬ北京豚か。そいつは楽しみだ。

「ただ、見た目は日本の酢豚とかなり違うんだけどね」

ん?どういうことだろう。酢豚の見た目なんて変えようがない気がするけど。

588: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)20:05:47 ID:Sjh(主)
「おばちゃーん!チャーハンコンボ二つ!私はいつもので、もうひとつはエッグロールとベイジン スタイル フライド ポークで」

おお、なんて注文慣れしてるんだろう。この店にはよく来てるんだろうか?

「あら、真由子。そっちは初めて見る子じゃない?ボーイフレンド?」
「まさか~。チェスナットマナーに語学研修に来てる子だよ。休みが明けたら私と同じ大学にくるんだ」

まさか~って言われちゃったよ、とほほ。

589: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)20:08:34 ID:Sjh(主)
でも僕の事を楽しそうに説明する姿を見るのはなんだか嬉しい。

「うちの娘もチェスナットマナーに行かせてるんだよ!
 もっとも正規の学生だから今は夏休みで遊びにいってるけどね!
 すぐにつくるからお茶でも飲んでまっててね!」

590: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)20:14:48 ID:Sjh(主)
でかいポットに入っている無料のウーロン茶を紙コップに入れて席に着く。

「ひょっとしてポットの隣りの白いのは砂糖ですか?」
「そうだよ。アメリカ人にとって緑茶やウーロン茶は苦味が強いんだって。
 だから砂糖を入れて飲むらしいよ」

へぇ、国によって味覚に違いがあるのか。他にはどんな違いがあるんだろう。
こういう文化や風習の違いを肌で体感できるのは留学の良い所だなぁ。

591: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)20:20:17 ID:Sjh(主)
「とりあえず、SAT高得点おめでとう!カンパイ!」
「カンパイ」

そういってウーロン茶の入った紙コップをぶつけあう姿は滑稽だけど、
じんわりと幸せを感じる。

「明日はいよいよトーフルだね。自身のほどは?」
「模擬テストでは確実に合格点が取れるようになりました。
 でもまだまだ奨学金ゲットにはほど遠いですね」

僕が現状を話すと真由子さんも当時を振り返っていろいろ教えてくれた。
真由子さんの場合は2度目で合格点を取り、3度目の正直で奨学金をもぎ取ったらしい。

592: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)20:33:16 ID:Sjh(主)
「まだ実感が無いかもしれないけど、今シュウスケの頭の中では
 英語の歯車がどんどん作られてるのね。でもそれはまだかみ合っていない。
 失敗を怖がらずに何度も何度も英語を使ううちにどんどん歯車が噛み合っていくの」

「そうなんですか……。僕にはまだ噛み合ったって瞬間がないんですけど、
 どうなったら歯車が噛み合ったってわかるんです?」

593: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)20:36:22 ID:Sjh(主)
「そうねぇ。私の場合は夢だったかな」
「夢?」
「そう。夢の中でも英語を喋ってたの。それ以来英語で物事を考えるのがだいぶ自然にできるようになったかな」

うーん……僕にはまだまだ縁のなさそうな話だ。
そんなことを話してたらおばちゃんが料理を持ってきてくれた。

594: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)20:41:37 ID:Sjh(主)
「はいどうぞ!フライドライスコンボ二つね!」

どんと机に置いた瞬間、チャーハンがほろっとほどける。
立ち上る香りに思わずよだれがわき上がる。

「はい、ベイジンスタイルフライドポーク」

といって出された物は、トンカツと変わらぬサイズの揚げた豚肉に
野菜とソースが絡めてある物だった!

595: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)20:44:50 ID:Sjh(主)
「これどうやって箸で食べるんですか?」

肉をつまみ上げながら尋ねると、

「ああ、切ってあった方が良かった?ごめんね」

といっておばちゃんが箸置き場にあるフォークとナイフを持ってきてくれた。

「アメリカの人たちにはこうやって出した方が人気が出るんだよ」

なるほど、肉の存在感が物を言う世界なのか。

596: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)20:52:05 ID:Sjh(主)
「それじゃあいただきましょう」
「いただきます!」

久々のディナーだ!幸い手頃な家格だし安心して食べられる。
まずは酢豚からいってみるか。

さくっとした衣に絡まる甘くて酸っぱいタレが僕の好みにダイレクトに来た。
噛み応えもちょうど良く、肉を食べる満足感を与えてくれる。

そして襲ってくる米への欲求。
しまった、ここはチャーハンじゃなく白米を頼むべきだったか?

そう思いながらチャーハンを口にした瞬間、うまさが口の中で爆発した!

598: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)20:56:04 ID:Sjh(主)
「なんですかこのチャーハン!超うまい!!」
「でしょ~?」

真由子さんが自分の手柄のようにチャーハンを自慢している。
その嬉しげな声をBGMにチャーハンをどんどん口へと運ぶ。

シンプルな味付けなのに、いや、シンプルな味付けだからこそ止まらないんだろうか!?

599: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)20:59:01 ID:Sjh(主)
お次ぎは春巻きならぬエッグロールだ。

でかい。
日本の春巻きを想像してたら、その大きさにまず面食らった。

「これ、ずいぶんでかいですよね?」
「そう?私はそのサイズに慣れちゃったから、小さいのだと満足できないかも」

まあ、うだうだ言ってても始まらない。とにかく一口食べて

「あっつ!!」

603: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)22:21:48 ID:Sjh(主)
や、やばい、水がない!ウーロン茶では熱すぎる!

「ごめん、私がいつも水ことわってるから、おばちゃん持ってこなかったのかも!
 おばちゃん、水、水をください!」

なんとか水で舌を冷やしているとおばちゃんに笑われた。

605: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)22:29:47 ID:Sjh(主)
「日本人てのはみんなせっかちなのかい?
 真由子もいつもあっという間に食べ終わっちゃうんだよ」
「ちょっとおばちゃん!」

ああ、いいなぁこういうの。先輩と2人っきりの食事も素敵だけど、
一家団欒のような空気はここしばらく味わっていなかった。

このおばちゃんにはどことなくうちの母さんと同じような空気を感じる。
なんでだろう。

あれ?僕ってこんなにマザコンだったっけ?

608: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)22:34:20 ID:Sjh(主)
「どうだい?うちの味は?」
「最高です。このチャーハンなんて僕の求めている味そのものです」
「あら、この子はずいぶん英語が上手じゃないか!
 アメリカ来たばかりの真由子なんてね」
「おばちゃん、その話はしないでー!」

……ああやばい、この空気は幸せすぎる!

613: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)22:43:21 ID:Sjh(主)
アメリカに来てこれまでホームシックにかかった事はなかった。
しかしそれは家族を思い出すきっかけがなかっただけのようだ。
僕はおばちゃんたちの暖かい空気に家族を思い出し、目からは涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。

「そ、そんなに熱かったかい?ごめんね」
「いえ、おばちゃんたちを見てたら……日本の家族を思い出して……」
「おやまぁ……そうかい」

そう言うとおばちゃんは僕を暖かく抱きしめてくれた。
本日2度目のハグである。そんな事されたらますます涙が止まらないじゃないか!

615: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)22:49:15 ID:Sjh(主)
「外国で暮らす辛さなら私たちもよく知ってるからね。
 辛くなったらいつでもこの店に来ていいんだよ」
「はい。ありがどうございまず」
「そんなに泣いてるとチャーハンがしょっぱくなるよ。ほら、しっかりおし」

僕は涙を拭ってもう1度チャーハンを食べてみた。
そうだ、これは母さんが作ってくれるチャーハンの味に似ているんだ。
だからこんなにもおいしくて、家族を思い出すのだろう。

僕はあっという間に全てを食べきってしまった。

616: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)22:52:04 ID:Sjh(主)
「みっともない所をお見せしました」
「いいのよ。私もその気持ちわかるし。ここのおばちゃんってなんだかお母さんみたいなんだよね」

真由子さんも同じ事を思っていたのか。
この人とはつくづくフィーリングが合うなぁ。

617: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)22:58:28 ID:Sjh(主)
「さあ、デザートのフォーチュンクッキーを食べよっか」
「フォーチュンクッキー?」
「日本人がアメリカに広めた文化なんだって。
 まあ今ではなぜか中華料理店で出されるようになってるんだけど。
 とりあえず食べてみなよ」

僕は言われるがままに、二つ折りになったせんべいのような物を食べてみた。
味はさほどおいしい物ではない。ん?中に異物が……

『Sometimes a stranger can bring great meaning to your life.』

618: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)23:06:40 ID:Sjh(主)
「何ですかこの紙?」
「おみくじだよ。運勢だったり、ふざけたことだったり、いろんな事が書いてあるの」
「じゃあ、僕の運勢は……
 『見知らぬ人が人生に大いなる意義をもたらすかも』
 ってところですか。僕にとってこの国は知らない人ばかりなんですけどね」

「じゃあこれから出会う全ての人がシュウスケにとって意味のある人なんだよ」

なるほど。この人はなんて素敵な事を考えるんだろう。
ひょっとしたらこの占いはあなたとの出会いを言っているのではないでしょうか。

620: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)23:12:04 ID:Sjh(主)
「さて、お腹もいっぱいになったし」
「帰りますか?」
「ううん、ここでトーフルの勉強しよう!」

そういうと真由子さんは分厚い問題集を取り出した。えぇっ?

621: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)23:14:39 ID:Sjh(主)
「学校だとメンターって言う身分上、なかなか2人きりでは勉強できないからね」
「先輩……」
「ここなら絶対だれもこないし、なんでも訊いて良いんだよ」

ほんとに何でも訊いていいんですか?訊きますよ?
あなたが僕をどう思ってるのかを!

622: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)23:16:25 ID:Sjh(主)
「ありがとうございます。それじゃあ解らない所があったら教えてください」

訊けるわけねぇ!

こうして僕たちは営業時間が終わるまでトーフルの勉強にいそしんだのでした。

623: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)23:18:22 ID:Sjh(主)
それでは今日はここまでです。
いつも読んでくれてありがとうございます。

See you soon, have a nice dream in English!

624: 名無しさん@おーぷん 2015/12/09(水)23:21:29 ID:1B2
お疲れさまです!シュウも良い夢を~

634: 見え県民 2015/12/10(木)15:12:49 ID:MXi
http://kohada.open2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1448796946/

1000: 名無し@HOME